かわいいは無敵だ

中田カナ

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第1話 一目惚れ

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「いきなりで申し訳ないのだが、一目惚れしてしまったのだ!どうかこの手を取ってもらえないだろうか?」

 魔法学院の入学式を終え、寮に帰ろうとしていた私を呼び止めたのは、在校生代表として挨拶していたこの国の第三王子殿下だった。
 私の方に駆け寄ってきて、しばらくこちらを見つめていたと思ったら、いきなり目の前でひざまずき、手を差し出されたものだから、そりゃもう驚いた。

 だけど、差し出されたその手は私にではなく、私の隣にいる存在へと向けられている。
「…と、おっしゃってますけど、どうします?」

『断る!』
 私のパートナーである聖獣様が一刀両断してしまい、目の前の殿下はとてもなさけない表情になってしまっていた。

「何か希望があるなら可能な限り叶えよう。ただほんの少しだけ、ちょっとだけさわらせてくれるだけでよいのだ」
 きっぱり断られたにもかかわらず食い下がる第三王子殿下。
「…だそうですよ?」

『だが断る!』
 聖獣様は身体を少しだけ小さく変化させて小型犬サイズになり、私の胸元に飛びついてくる。そして私もいつもの調子で抱きかかえる。

『話にならぬな。我はそなたのそばがよいのだ』
 そう言いながら私に顔をすり寄せてくるので、もふもふの毛並みが頬にあたる。
「ちょっと!くすぐったいですよぉ」

 その様子を見ていた殿下は、なさけない表情のままぼそっとつぶやいた。
「う、うらやましすぎる…」

 しばらくしてようやく我に返った第三王子殿下。
「と、とにかく日を改めてまた話したいので、よろしく頼む!」
 そう言い残して走り去る後ろ姿を聖獣様とともに見送る。

『ずいぶんとおかしな奴であったな』
「ホント、そうですねぇ」
 あ、もう見えなくなった。殿下は足が速いなぁ。


 寮の部屋に帰ると聖獣様が私に話しかけてきた。
『改めて考えてみると、王子の申し出はそなたのために応じた方がよかったのかもしれぬな。確か入学式の時に奴のことを素敵だとかつぶやいておったであろう?まぁ、整った顔立ちの男ではあったがな』
 聖獣様の言葉に私は思わず首をかしげる。

「顔、ですか?私、入学式では一番後ろの席だったので、顔はよく見えてなかったんですよね」
『ん?ということは顔ではない、と?』
 小首をかしげる聖獣様。
「声がすっごく好みだったんですよ!高すぎず低すぎず、少し甘さがありつつも透明感があって、もう最高じゃないですか!『この手を取ってもらえないだろうか?』なんて、もうしびれちゃいましたねぇ」
 思い出しながらうっとりする私に聖獣様はため息をつく。

『言われたのは、そなたではなく我だがな』
「いいじゃないですか。殿下なんて雲の上の人ですもの。あんな台詞をタダで聞けただけでも儲けものと思っておきますよ」

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