1 / 7
第1話 一目惚れ
しおりを挟む
「いきなりで申し訳ないのだが、一目惚れしてしまったのだ!どうかこの手を取ってもらえないだろうか?」
魔法学院の入学式を終え、寮に帰ろうとしていた私を呼び止めたのは、在校生代表として挨拶していたこの国の第三王子殿下だった。
私の方に駆け寄ってきて、しばらくこちらを見つめていたと思ったら、いきなり目の前でひざまずき、手を差し出されたものだから、そりゃもう驚いた。
だけど、差し出されたその手は私にではなく、私の隣にいる存在へと向けられている。
「…と、おっしゃってますけど、どうします?」
『断る!』
私のパートナーである聖獣様が一刀両断してしまい、目の前の殿下はとてもなさけない表情になってしまっていた。
「何か希望があるなら可能な限り叶えよう。ただほんの少しだけ、ちょっとだけさわらせてくれるだけでよいのだ」
きっぱり断られたにもかかわらず食い下がる第三王子殿下。
「…だそうですよ?」
『だが断る!』
聖獣様は身体を少しだけ小さく変化させて小型犬サイズになり、私の胸元に飛びついてくる。そして私もいつもの調子で抱きかかえる。
『話にならぬな。我はそなたのそばがよいのだ』
そう言いながら私に顔をすり寄せてくるので、もふもふの毛並みが頬にあたる。
「ちょっと!くすぐったいですよぉ」
その様子を見ていた殿下は、なさけない表情のままぼそっとつぶやいた。
「う、うらやましすぎる…」
しばらくしてようやく我に返った第三王子殿下。
「と、とにかく日を改めてまた話したいので、よろしく頼む!」
そう言い残して走り去る後ろ姿を聖獣様とともに見送る。
『ずいぶんとおかしな奴であったな』
「ホント、そうですねぇ」
あ、もう見えなくなった。殿下は足が速いなぁ。
寮の部屋に帰ると聖獣様が私に話しかけてきた。
『改めて考えてみると、王子の申し出はそなたのために応じた方がよかったのかもしれぬな。確か入学式の時に奴のことを素敵だとかつぶやいておったであろう?まぁ、整った顔立ちの男ではあったがな』
聖獣様の言葉に私は思わず首をかしげる。
「顔、ですか?私、入学式では一番後ろの席だったので、顔はよく見えてなかったんですよね」
『ん?ということは顔ではない、と?』
小首をかしげる聖獣様。
「声がすっごく好みだったんですよ!高すぎず低すぎず、少し甘さがありつつも透明感があって、もう最高じゃないですか!『この手を取ってもらえないだろうか?』なんて、もうしびれちゃいましたねぇ」
思い出しながらうっとりする私に聖獣様はため息をつく。
『言われたのは、そなたではなく我だがな』
「いいじゃないですか。殿下なんて雲の上の人ですもの。あんな台詞をタダで聞けただけでも儲けものと思っておきますよ」
魔法学院の入学式を終え、寮に帰ろうとしていた私を呼び止めたのは、在校生代表として挨拶していたこの国の第三王子殿下だった。
私の方に駆け寄ってきて、しばらくこちらを見つめていたと思ったら、いきなり目の前でひざまずき、手を差し出されたものだから、そりゃもう驚いた。
だけど、差し出されたその手は私にではなく、私の隣にいる存在へと向けられている。
「…と、おっしゃってますけど、どうします?」
『断る!』
私のパートナーである聖獣様が一刀両断してしまい、目の前の殿下はとてもなさけない表情になってしまっていた。
「何か希望があるなら可能な限り叶えよう。ただほんの少しだけ、ちょっとだけさわらせてくれるだけでよいのだ」
きっぱり断られたにもかかわらず食い下がる第三王子殿下。
「…だそうですよ?」
『だが断る!』
聖獣様は身体を少しだけ小さく変化させて小型犬サイズになり、私の胸元に飛びついてくる。そして私もいつもの調子で抱きかかえる。
『話にならぬな。我はそなたのそばがよいのだ』
そう言いながら私に顔をすり寄せてくるので、もふもふの毛並みが頬にあたる。
「ちょっと!くすぐったいですよぉ」
その様子を見ていた殿下は、なさけない表情のままぼそっとつぶやいた。
「う、うらやましすぎる…」
しばらくしてようやく我に返った第三王子殿下。
「と、とにかく日を改めてまた話したいので、よろしく頼む!」
そう言い残して走り去る後ろ姿を聖獣様とともに見送る。
『ずいぶんとおかしな奴であったな』
「ホント、そうですねぇ」
あ、もう見えなくなった。殿下は足が速いなぁ。
寮の部屋に帰ると聖獣様が私に話しかけてきた。
『改めて考えてみると、王子の申し出はそなたのために応じた方がよかったのかもしれぬな。確か入学式の時に奴のことを素敵だとかつぶやいておったであろう?まぁ、整った顔立ちの男ではあったがな』
聖獣様の言葉に私は思わず首をかしげる。
「顔、ですか?私、入学式では一番後ろの席だったので、顔はよく見えてなかったんですよね」
『ん?ということは顔ではない、と?』
小首をかしげる聖獣様。
「声がすっごく好みだったんですよ!高すぎず低すぎず、少し甘さがありつつも透明感があって、もう最高じゃないですか!『この手を取ってもらえないだろうか?』なんて、もうしびれちゃいましたねぇ」
思い出しながらうっとりする私に聖獣様はため息をつく。
『言われたのは、そなたではなく我だがな』
「いいじゃないですか。殿下なんて雲の上の人ですもの。あんな台詞をタダで聞けただけでも儲けものと思っておきますよ」
21
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
前世の推しに似てる不仲の婚約者に「お顔が好きです」と伝えましたところ
咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
公爵令嬢のエリーサベトは、ポンコツ王子と呼ばれる婚約者のベルナルドに嫌気がさし、婚約者破棄を目論んでた。
そんなある日、前世を思い出したエリーサベトは気付く。ベルナルドが前世の推しに似ていることに――
ポンコツ王子と勝気な令嬢が両思いになるまでのお話。
※小説家になろうさまでも掲載しています。
結婚して5年、初めて口を利きました
宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。
ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。
その二人が5年の月日を経て邂逅するとき
疑惑のタッセル
翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。
目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。
それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。
でもそれは──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる