地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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7章 鏡鬼

京都

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「明日、京都駅まで来ていただけますか?」
「分かりました、11時に」
礼司は電話を切るとみんな向かって言った
「明日11時に京都へ行く、昨日鬼を
封印していた鏡神社が燃えたそうだ」
「夜野さん明日休みでしょ」
魔美がうれしそうに言った

「ああ、自家用車でいく」
「我々は行けませんが何かありましたら呼んで下さい」
浜田が言った
「ああ、今日はご苦労だったな」
「はい」
「ひょっとしたら、白尾に会えるかも知れませんよ」
由美が言うと礼司がうなずいた。

「なるほど、由美が言うならそうかも知れないな」
礼司は由美の動物的勘を信じていた
「じゃあ、お土産に黒八橋買ってくるからな」
礼司はまじめな顔をして言うと由美と浜田は
礼司がまじめに言ったのか冗談だったのか
わからずなんと答えていいか悩んだ

「時々隊長がわからなくなる」
浜田が由美の耳元で囁いた
「私も」
「あれが本当の二重人格だからな」
「私達もああなるのかしら、怖い!」
「うん、僕達もああなる前に、向こうの世界に戻らなくては」
「そうですね、早く白尾さんと山野さんを見つけなくちゃ」
「隊長がんばってください」
浜田が礼司に呼びかけた

「おお、抹茶八橋も買ってくるぞ」
「ああ、やっぱりおかしい」
「じゃあ、みんな送っていくぞ、
中野、目黒、世田谷5000円コースだ」
礼司は嬉そうに言った
「はい」
浜田と由美は仕方なさそうに答えた

礼司は魔美を中野の全然寺に送ると
「魔美、明日9時に行くからな」
「はい」
「じゃあ」
由美が手を振って車が走り出すと礼司に聞いた

「魔美ちゃん、こんなに遅くなって大丈夫なのかしら?」
「そう言えば知り合ったときから遅くなっていたなあ」
「隊長は魔美ちゃんの事あまり知らないの?」
「そうだな、あまり詮索するのが好きじゃないから」
「警察官だったのに?」
由美が体を乗り出して聞いた。

「TVマンだったのに?」
浜田も真似をして前の席で
夜野に聞いた
「それの反発だろう、それに今は
何も聞かなくても分かるし」
なるほど、由美は何も言わずにそう思った
 「そういえば、川島さん誕生日はいつ?」
 「あら、何かくれるの?うれしいわ。11月11日よ」
 「そうか、さそり座かやっぱりな」
 「なによ、何か言いたいの?」

翌朝、礼司は8時50分に全然寺の前に着いた
魔美はピンク色のリュックを背負って
長い黒髪を風になびかせて車のところへ走ってきた
「かわいいな」
礼司は一瞬思った

「おはよう、どうしたのにやけて」
「いいや、なんでもない。さあ行こう」
「うん」
魔美は助手席に乗ると鬼のノブを渡した。
礼司がそれを車に取り付けると
車は金色の光を残し消えてなくなった

礼司は途中浜名湖のPAに車を止めて
ボーっと湖の方を眺めた
「どうしたの?」
「ああ、おしっこ」
「あはは、変なの」
礼司はトイレを出ると
「魔美、ほら誕生日プレゼントだ」
赤いリボンの付いたピンクの箱を渡した

「えええ?私の誕生日どうして知っているの?」
「今日は僕の愛した女性がここで死んだ日だから、
いや殺された日・・・・・」
「ああ、そうか由美さんの」
「うん、ちょっと複雑だけどな魔美のお母さんが
由美でさんでこっちの由美そして、
死んだ由美、魔美お前だ」

「夜野さんに言わせると死んだ由美さんの生まれ
変わりが私だって言いたいんでしょ」
「ああ」
礼司は優しい顔で笑った

「うん、じゃあその前に」
魔美は浜名湖に向かって手を合わせた
「魔美ありがとう」
「自分で自分に手を合わせるのも変だけどね」
魔美は浜名湖に手を合わせながらクスッと笑っていた

礼司と魔美の乗った車は10時に京都駅前に着くと
魔美が笑った
「1時間早かったね」
「いや、今からケーキを食べる」
「本当?」

「うん、オ・グルニエ・ドールへ行こう」
「えっ、何?。うふふ」
礼司は車を錦市場に走らせ
ケーキ店に着いた

「悪いな、わざわざ付き合ってもらって」
礼司はモンブランを食べながら魔美を見ると
「良いよ、それよりこれ美味しいピラミッド型のケーキ」
「うん」

「相変わらず夜野さんはモンブランね。あはは」
魔美は礼司からもらったページュのマフラーを首に巻いて
美味しそうに食べていた

11時に戸田真由美の家に着くと
礼司はベルを鳴らした
「おお、玄関が直っている」
先日、武鬼壊した玄関を礼司はしみじみ見て言った
「当たり前でしょう」
「あはは、そうか」
真由美が玄関の戸を開けるとお辞儀をした。

「夜野さん、魔美さん。遠路はるばるありがとうございます」
真由美は懐かしそうに言った
「お久しぶりです」
魔美が小さく頭を下げた

応接室には佐々が待っており礼司と強く握手をした
「早速ですが、鏡神社の件ですが」
「はい」
佐々は神妙な顔をして聞いた

「おととい、比叡山の近くにある鏡神社が焼けて
ご神体の銅鏡が焼けたんです」
「銅鏡が溶けたんですか?」
礼司は佐々に聞いた
「いいえ、昔弓の名手大島光義が織田信長の命を受けて
鬼が隠れていた銅鏡に矢を放ってそこに封じ込めたとされた
と言う伝説があったんです。」

「では、その矢が焼けて封印が解けてその銅鏡の中から
 鬼が逃げ出したという事ですね」
「はい」
「それが原因で東京で事件が起きたんですね」
礼司はうなずいた
「やはり・・・」
礼司は佐々に東京の事件を説明した

「東京の事件は、井上と言う女性が土田と言う男に
鏡に頭を打ち付けられて殺され
その犯人が昨日鏡に頭を食われて死んだんです」
「残りの3人は?」
「それが、3人ともあまり関係が無くて一人はメイク中に見ていた鏡に
 一人は運転中にバックミラーにもう一人は電車の中の窓に」
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