地獄タクシー Ⅱ

コノミナ

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7章 鏡鬼

弓道

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「窓?」
「ええ、夜だったので窓ガラスが鏡になってしまったんですよ」
「そして、最後の被害者は土田。留置所の覗き窓が鏡になって
 ギロチンになってしまった」
「わかりました、やはり鏡神社の影響もあると思います」
「そうなると、こちらでも誰かの首がなくなる可能性がある」
「ええ、急ぎましょう」

四人は礼司の運転する車で鏡神社に向かった
「佐々さん、銅鏡はどこにあるんですか?」
「隣の神主さんの自宅にあります」
「そうですか」
「それが神主の藤間さんが行方不明なんです」
「え?食われてしまったんでしょうか?」
「それなら、首無し死体があるはずですよね」
「ええ」
佐々が不安げに答えた。

礼司たちが鏡神社に着き
神殿の焼け跡を丹念に調べても
何も感じなかった
「何も無いな。魔美」
「ええ、何も感じないわ」
「ここのご利益は?」
礼司は入り口にある看板を覗きこんだ

「なるほど」
「どうしたの?」
「ここは的を当てるという意味で
ギャンブルの神様なんだ」
「なに?」

「佐々さん」
礼司は佐々に声を掛けた
「はい」
「銅鏡を見せてもらっていいですか?」
「そうですね」
礼司は鏡が置いてある部屋に入って銅鏡を眺めた
それは真ん中に矢の痕がついているものだった
「本当に銅鏡に穴が開いてる」
魔美が覗きこんで言った

「ええ、これに矢が刺さっていたんです」
神主の妻の藤間玲子が言った
「すごいですね、ところでご主人は?」
昨夜の9時ごろに物音がして
人が逃げていった後に神殿に火がついた
という事だった

「最近、仏像が盗まれていますからね」
礼司が藤間に言うと
「ええ、神社には仏像が無いので
油断をしていたんです。
まさか火をつけられるとは」

風間玲子は肩を落としていた

「ご主人は?」
「それがこのご神体の銅鏡を持ち出した後に
火を消しているうちにいなくなってしまったんです」
礼司が部屋の壁を見ると礼司は
「この写真は?」
「この銅鏡に矢を放った大島光義の弓道の
流れを組んだ真当流の家元です」

「なるほど」
礼司はしばらく写真を見ていると
「そうか」
礼司は手をたたいて
「佐々さんそこへ行きましょう」
「はい」

4人は西加茂の真当流の道場へ向かう途中
礼司は藤間の行動が頭に浮かんだ
「佐々さんひょっとしたら藤間さん封印の為の
矢を探しに行ったのかもしれませんね」
「なるほど」
「真当流へ家元なら封印の方法を
知っているかもしれませんね」
「ええ」
佐々は礼司の的確な推理に
緊張で手のひらに汗をかいていた

礼司が真当流の道場に着いて
佐々が家元に話を聞くと
「昨日、藤間さんが神社が燃えたのに息せき切って来ましてね、
真当流の古文書を見せてくれって言われまして」

「ええ」
「大島光義の矢の事を調べに来たんですよ」
「やっぱり」
それは礼司の推測通りだった
「それでどうしたんですか?」
「それがそうも解読不明の部分がありまして
困っていたんですよ」
「それで?」
礼司も聞いた

「鏃は水晶、箆(の)つまり棒の部分ですな、
矢羽が白鳥はわかったのですが
先に塗る薬がわからなくて」
「それでどこへ行ったかわかりますか?」
「薬学者を探しに東京へ行きました」
「そうですか、ありがとうございます」

「佐々さんすぐに調べましょう」
「はい」
礼司たちが道場の出口へ向かうと
そこに弓を持って姿勢良く立っている女性がいた
「白尾屡奈?」
礼司がおどろいて声を出して呼んだ
「はい?」
「うちの娘です」
家元が後ろから言った。

「なるほど、弓道家がスナイパーか」
礼司は魔美に聞こえるように言った
「そうだね。うふふ」
「屡奈さんちょっとお話があるんですが」
「な、なんでしょうか」
屡奈はあっけに取られていた

「家元、屡奈さんとお話がしたいのですが」
「はい、では奥の部屋で」
礼司たち奥の部屋に通されると
礼司は浜田に電話をして藤間を探すように言った
「探すって言っても、どうやって?」
「川島に言って薬学博士を教えてもらえ」

「あっ、そうかなるほど」
「たぶん、漢方に詳しい先生だ」
「はい、でも家族は連絡が取れないんでしょうかね」
「たぶん落ち着いたら連絡が来るだろう」
「わかりました」
「頼む」

礼司が電話を終えると
礼司たちが今まで体験していた事を話し始めた
「わかります」
屡奈がすぐに返事をした
「何でわかる?」
父親の大島光照が聞くと屡奈は答えた。

「今矢を放つと100発100中なんです」
「知らなかった」
「ええ、恐ろしくてわざとはずしていたんです」
「鬼の件は私も信じます」
光照は納得して協力をしてくれる事になり
矢の製作に入る事になった

「ねえ、屡奈さん職業は?」
魔美が尋ねると
「警察官です」
屡奈はあっさりと答えた
「ああ、やっぱり」
「大島さんだったから見つからなかったのね」
「うん」
「でもどうして白尾さんなんですか?」
礼司が恐る恐る質問をした
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