【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~ 【累計13万PT & 123大賞4一次通過】

近衛 愛

文字の大きさ
17 / 188
第2章 魔族襲撃編

【雇用№016】雇われ勇者 魔族襲来再び 終盤戦

しおりを挟む
 本当にどうすればよい?

 さっきの衝突で、こっちは倒れ、疲労の蓄積もあいまった結果、身体がほとんど動かなくなっている。デーモンの攻撃を避けることも防ぐことも出来ない。まな板の上の鯉状態である。

 無詠唱魔法を発動しようにも対象の指定を指で行っていることがほとんどのため、攻撃呪文は使えない。土壁も現状空を見上げている状態で、地面が見えないので、範囲指定が出来ない。
 回避もダメ、攻撃呪文も、防御呪文もダメなにもできることがない!?

「キーッツ」
 デーモンが奇声を上げながら飛んでくるのが見える。
 冷や汗が出てくる、身体が震える。僕ここで死んじゃうのかな?
 その時、リュウの頭に走馬燈が駆け巡った。

 初めて出来た彼女のこと。
 神界に連れてこられ、女神にあったこと。
 幻想世界の城に転移させられ、王と話したこと。
 そして、王と大臣に魔女の一撃を喰らわせて、ぎっくり腰にして、転がしてやったこと。

 そっそうだ。魔女の一撃なら、視認してれば発動できる。間に合ってくれよ『スキル:魔女の一撃』

 デーモンが飛んでくる最中ぎっくり腰によって、痛みで羽根の位置を一定に保つことが出来なくなった。
 空中からの滑走での攻撃は大気の影響をもろに受け、目標地点である、リュウの場所を少しずれ、ぎりぎりの所で地面に激突していった。

 地面には砂埃が立上げ、墜落のあとが5m程続いている。デーモンは「うっぎゅ、うっぎゅ」いいながら痙攣している。

 よっ、よかった~。魔族にも『魔女の一撃』ぎっくり腰が効いた。ほんと、死ぬかと思ったわ。
 とはいえ、動けないし、次の敵、上空の統制役のデーモンにこられるとどうしようもない。

 まだ、魔女の一撃は4回使用しただけなので、使えるとはいえ、次も同じように上手くいくとは限らない。墜落する場所が僕の上なら、その衝撃だけで、死んでしまうと思っている。

 そこへガンツが走ってやってきた。

「リュウ無事か?他はなんとかなった。後は宿屋だけだ。もうひと頑張りだ。おっと、こりゃまずい。。ほとんど筋肉が痙攣して、打ち身もあって動かせないようだな。

 口に入れて飲ませるのが一番良いのだが、やっこさんが待ってくれそうにないな。ガンツ特性ポーションを体にかけるぞ。しみるけど、我慢しろ」

 ガンツの手から緑色のポーションが体に掛けられた。一口分のポーションは口の中に瓶ごと突っ込まされた。

「ぐっ、ぐぐぐぐぐ・・・・」
 身体が癒え、口が動き、ポーションを飲み干す。

「は~~っ、ホント助かりましたわ。ガンツさん。このままだと死ぬかと思いました。身体が動くようになって、ガンツさんまで来てくれたら、残った魔物に負ける道理はありませんね」

「やっこさんこっちに気付いたようだな。最後の仕事だ。いくぞ」

 身体が動くようならこっちのもんだ。敵も残すは指令塔のデーモン一匹。
『ヒートショック』の熱線が空を駆け巡りデーモンへ突き進む。
 しかし、相手は、他のデーモンとは違うのか、その熱線を空中を飛行し、器用に回避していく。

 ガンツが詠唱を始める。
『万物の澱みを清めし風よ。女神フェリシアの名の元に我難敵を切り刻む不可視の刃を放たん。ウィンドカッター』

 目にみえない、大気の刃がデーモンの羽を切り刻む。風を受ける羽がボロボロになり、空を飛ぶことが出来なくなった。地面へとゆっくりと落ちて行った。

「空中戦の相手にはな。まずは羽を攻撃し、機動力を奪うんだ。3次元の空中移動が2次元の平面での移動となれば、こっちの戦力で後は仕留めるだけだ。ま~、敵側の向こうに警備員がいるから、魔法を打つのは厳しいがな」

 ガンツさんは槍を構えて、敵に向かっていった。僕は、『疾走』を唱え、弾き飛ばされた長刀を取りにいく。そのままデーモンの側面へと向かっていった。

 デーモンの正面からはガンツさん。側面からは僕という2面攻撃。長刀を縦に構えての疾走では、空気抵抗を受けてしまう。なので槍と同様に前方に突き出す形で突進する。

 デーモンは迎撃するために、空手のような構えをとり、左腕を身体の中心を守るようにだし、右腕は、攻撃するために、後ろに引いて構えている。

 ガンツさんの槍での刺突はデーモンの左腕に当たったが、貫通することもなく、筋肉の隆起で止められた。二人の衝撃はすさまじく、互いのエネルギーが衝突し、お互いの体を弾き飛ばす。

 しかし、その最中、デーモンは当たった槍を振り払いながら、右腕の爪でガンツさんのむき出しの腹を攻撃する。

 爪が、革の鎧を切り裂き、身体にあたるかと思いきや。「ガジャン、チャリーーン」という音と共に、中に仕込んていた鎖帷子を破壊して、止まる。衝撃はそのままガンツさんを弾きとばした。
 武器を取りに走っていたため。攻撃のタイミングが遅れたリュウ。

 攻撃後で隙が出来ているデーモンの腹を目がけて刺突した。
 今度は、スピードと体重の乗っかった刺突は、デーモンの脇腹に突き刺さる。
 衝撃で吹っ飛んだデーモンから、長刀を抜き、体勢を崩している所へ、上段からの打ちおろしを放った。

 黒い血がとび、腕が切飛ばされる。迎撃されないうちに『疾走』のスピードをもって連続でデーモンに打ち込む。無限の輪を描くように流れるように長刀での打ち込みが入っていく。
 首や心臓をガードしていた残りの腕も切り刻まれ、徐々に下に垂れ下がっていく。

 首元が見えた。斜めに切り裂いていた剣筋を最後は真横に一閃する。
 切飛ばすには至らないものの、半ばまで切れ、黒い血を噴き上げ最後の一匹のデーモンは地面に倒れ落ちた。

「やった~敵将うちとったり~~~」
「おおぉ~~~っ、やったぞ~~~」
 前回にはなかった勝鬨(かちどき)が、立ち上がっている人々から大きくあがった。

 こうして、リュウの2回目の魔族襲撃は幕を閉じたのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...