【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~ 【累計13万PT & 123大賞4一次通過】

近衛 愛

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第8章 変わってしまう日常編

【雇用№129】魔族襲撃 後始末編2

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 僕は急いで、倉庫に向かっていった。今朝までは、棚に綺麗に整然と並べられていたポーションの入った瓶が殆どなくなっている。入口の方に置いてあったリヤカー2台もなくなっている。

 どうやら、チルとウェルザさん、モニカちゃんは即効性の高い液体のポーションを積めるだけ積んで持って行った様だ。こうなると僕は、袋に入れて持ち運ぶしかないのだが、それだとここと街を往復する必要があるし、なにより、割れるのを心配して注意しながら歩がなくてはいけない。

「はー、こういう時は地球がありがたいかな。瓶じゃなくて、プラスチックのペットボトルだから、嵩張らないし、重くないし、割れもしないんだから。錠剤タイプのものは袋に入れて問題ないとして、瓶の方は異空間に入れて持ち運ぶ方がいいか。」

 精霊術を用いて、異空間を出そうとする。

『時空の精霊たちよ。精霊ティタニアの名の元に、異次元の空間をつなげん。異次元ホール』

「あれ?なんでだ?異空間が繋がらないぞ。」

「パパ、ティタニアママは、この時代にいないのですから、精霊に呼びかけても、お願いを聞いてもらえませんよ。」

 肩の上にちょこんと座っていたノエルが耳元に向かって話しかけてくる。

「ノエル。そういうもんなのか?精霊術って?形式状の言葉だとばかり思ってだけど。」

「そうですわ。魔法のことはわかりませんが、精霊術では少なくともそういうことになってます。ですから」

『時空の精霊たちよ。精霊ノエルの名の元に、異次元の空間をつなげん。異次元ホール』

 ノエルが異空間を開く精霊術を発動した。

ノエルの前にちょっとした小さな異空間が開かれる。

「てことですよ。パパ。この場にいない精霊の名前を出しても、効果はありません。逆に私は今この場にいますので、私の名前を使えば精霊術が発動する訳です。」

「なるほど。ノエル助かったよ。異空間には色々と重要なものを入れていたから、取り出せなかったら大変なことになるとこだった。」

「パパのお役に立ててノエルは嬉しいですね。」

「じゃー僕ももう一度精霊術で異空間を繋げてみるか。ノエル、名前を借りるよ。」

「パパなんですから、遠慮なく使って下さい。」

『時空の精霊たちよ。精霊ノエルの名の元に、異次元の空間をつなげん。異次元ホール』

 中くらいの異次元ホールが僕の目の前に現れた。

「あーやった。問題なく異空間にものが収容されて出来るよ。ありがとう。ノエル」

「うふふっ、どういたしまして。パパ様」

「でも、ちょっと違和感があるな。異次元空間の大きさが前に使っていた時よりも大分小さくなった気がする。異空間の中の大きさも、なんだか前より小さい気が。。。」

「パパ、異空間の入口や中の広さは、使った方の気の大きさに依存しますわ。でも、そんなに違うはずはないのですが……。」

「もしかして、『ティタニアが時の巻き戻しの術』を、使う際に僕の気をもらうって言ってたからかな。」

「うむむむむ。。。私には分かりませんわ。ごめんなさい。パパ」

「いやいやいいよ。チルも精霊術を使えるから、チルに試してもらったら色々と分かるだろう。」

「チルお姉ちゃんも使えるんですね。」

「そこも詳しくノエルに話しときたいけど、今は住民の人達を、助けに行かないとだから。また後でね。」

「はい。パパ」

 僕とノエルは異空間の中に瓶に入っているポーションをなるべく入れていく。倉庫にあったポーションは全部入れた。街の人に不審に思われない様に袋に2~3本は入れておく。なくなったら、人影のない場所で補充すれば良いのである。
 
「さて、準備は出来たけどどっちに行けば良いのだろう?」

「うーん、なるべく被らないように皆さんとは別の方向に行きたいとこですよね。」

「そうなんだよね。ひとまずは、街の方に行ってみよう。ノエルは、一応姿を隠せる様にしておいて。念のため、ポケットに入っててね。」

「はい、パパ」

 僕とノエルは二人とも街に向かって動き出した。

『疾走』

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 街に入ると、あたりは酷い有様だった。朝までは、綺麗な住宅街だったのに、家は壊れ、火は燃え上がり、人々は泣き叫ぶ、そんな光景があった。

 これは本当に前回とは比較にならないほどの被害だな。ウェルザさんとモニカちゃんがポーションを配って…傷の手当てをしていた。

「ウェルザさん。どんな様子ですか?」

「見ての通り酷い状態です。ポーションで治りそうな人には、分けてますけど。間に合わなかった人もいるので……。」

 ウェルザさんは、視線を別の所に移した。そこには、女性の人が倒れていて、血が地面に広がっている。泣き叫んでいる子供がいる。

 子供の親がなくなったのだろうか?精霊術を使えば持ち直せるかもしれない。そう思って、その子の元は行こうとした時、ウェルザさんに手を掴まれた。

 ウェルザさんが首を振った。

「リュウさん。私達に出来ることは、そんなに多くありません。火を消さないと燃え広がるのも分かってます。家財がないとこれから大変なことも………。」
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