【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~ 【累計13万PT & 123大賞4一次通過】

近衛 愛

文字の大きさ
129 / 188
第8章 変わってしまう日常編

【雇用№128】魔族襲撃 後始末編1

しおりを挟む
「そうですか。そんなことがあったんですね。あの元気な小さな妖精さんにお会い出来ないのは寂しいですわ。」

「もう、ティタニアちゃんと会えないの。モニカ悲しい。もっともっとティタニアちゃんと薬草のお世話や花の蜜を吸ったり、もっともっと一緒に遊びたかったのに………。」

 こうなるとは思ってたけど、ウェルザさんは涙ぐみ、モニカちゃんに至っては、もう完全に泣いてしまっている。ウリは、まともにお話できるのがティタニアのみであったため、寂しさがかなりある様で地面にうつ伏せになっている。

「リュウ様。皆さん。ティタニアさんのことで悲しみたいのは私も同じです。ですが、その前に我々はやらなければならないことがあります。」

「セバリンさん。やらなきゃいけないこととはなんでしょうか?デーモンは駆逐したので、一通りすべき緊急は無くなったと思いますが、あっ、デーモンの焼却の件でしょうか?」

「違いますぞ。リュウ様。皆様は、魔族襲撃後、このファームから出ておられないので、現状が分かってないご様子です。前回とは比べものにならないくらいに街も人も損傷しております。怪我人や死者が数えられないくらいに街に溢れております。ですから、死者はどうにもならないにしても、助かる命があるのであれば、我々、ポーションを作るものとしては、街の人々を救いに行かなければなりません。」

「そうか。僕はデーモンを片付けたことで終わった気になっていたけど、街はそんなに酷いことになっているんですね。セバリンさんの言う通りです。僕たちのポーションで助かる命があるなら、助けに行きましょう。ウェルザさん。」

「はい、リュウさん。皆さん。倉庫にストックしてある液体ポーション、タブレット状のポーションを惜しみなく負傷者に使って下さい。料金は不要です。いち早くみんなを助けに行きましょう。人の命は有限です。さぁ急いで。」

「「「はいっ」」」

 チル、ウェルザさん、モニカちゃんとウリが早速倉庫に向かって走って行った。

「リュウさん。少しお話が……。」

「はい、セバリンさんなんでしょうか?」

「リュウさん。デーモンイーターを倒した件は内密にして下さい…役所は、報告するとリュウさんが異常な力を持つことが露見してしまいます。今回、残念ながら多数の住民が農園の方に複数のデーモンが固まって飛んで行くのを確認しております。何かしらの追求を街の人、特に役所から受けるでしょう。」

「その点に関しては僕も同じ考えです。上手いいい訳は見つからないです……。」

「リュウさん。まだ少しご理解が足りてない様で申し上げますと、多数のデーモンが来たのにも関わらず、うちの損害は、農園の畑のみです。人的損害が全くと言っていい程ありません。」

「セバリンさん。それは違う、先程も話しましたが、チルは死ぬかもしれない状態になりましたし、ティタニアは犠牲になってこの時代から消えましたし、僕自身も一つ間違えばこの場に生きてはいませんでした。」

 僕は平坦な声で冷静に事実を、告げるセバリンさんに声を荒げて言ってしまった。

「リュウ様。落ち着いて下さい。その件に関しては、私も先程聞きましたし、スーツの破れも確認したので理解しております。しかしですね。他の、ドラゴンファーム以外の住民から見たらそれらしい損害が出ていないのが、今のドラゴンズファームの現状なのですよ。」

「そっそんな……。」

「いいですかリュウ様。スーツ事態は口外出来ない製法素材を使ってます。その為、チルさんが死ぬほどの重傷にあった形跡の提示は出来ません。無論…どうやって治したかの説明もしようがありません。デーモンイーターの存在を口外しない為、リュウさんの証言も当てにできません。リュウさん一人で、上に死骸のある複数を討伐したという事実だけです。それにリュウさんは、街の外に出ています。門を通っていない以上どうしても情報に齟齬が出てしまいます。いつ帰ってきたのか?なぜ間に合ったのか?どうして知ったのか?」

「確かに説明出来ない部分が多すぎますね。ティタニアから通信があって、状況をいち早く知ることが出来た。僕のスキルがあったから、空を飛んで一直線で向かうことができた...。」

「そうです。ティタニアさんが妖精の為、公開出来ない。リュウさんも勇者であることを秘匿する為、説明ができない状態なんです。それに加えて………。」

「セバリンさん。まだあるんですか?」

 ごくっと唾を飲み込む。

「リュウさんは、高位の冒険者であるにも関わらず、今回の襲撃では自分の農園だけを防衛しており、街の皆さんのお役に立っていません。」

「だから、それは……。」

「ええ、デーモンが複数押し寄せてきた上にデーモンイーターが現れたからですね。それは理解してますが被害にあった住民がその結果をみてどう思うかという方が問題なんですよ。」

「そっそんな……。」

「リュウ様には今回の襲撃での味方が我々しかおりません。我々は、リュウ様の会社の従業員、つまり身内です。証言による効力は限りなく低いですぞ。」

「ではどうすれば?」

「先程皆さまがポーションを携えて街に走って行った様に、これからでも多くの人の命を救い味方に変えるのです。多少不利なことがあれど、民主の力が有れば覆すことも可能にぬります。リュウさんここからが本当の正念場です。さーいって下さい。しばらくはファームの復興は後回しです。まずは街の復興が最優先課題です。」

「はい、ありがとうございます。セバリンさん」

 僕は、ポーションをたくさん持って、被害のある街に走っていった。

「これでリュウ様の方は大丈夫でしょう。役所や門の警備の人への根回しが必要ですね。これは私の方で進めておきましょう。ホッホッホッ。」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

処理中です...