【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~ 【累計13万PT & 123大賞4一次通過】

近衛 愛

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第8章 変わってしまう日常編

【雇用№132】魔族襲撃 後始末編5

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「リュウ兄ちゃん。包帯お店の人からもらってきたよ。」

「よかった。腕の血が止まらないから止血する。布切れを外すから、キック縛ってくれ。」

「はい」

 チルと僕で血が流れている腕を縛っていく。こんなことなら現代で緊急医療の体験受けとけばよかった。血の止め方がさっぱり分からないし、切断された腕の場合は、包帯の巻き方はどうすればいいんだ。

 漫画とかだと、腕に平行に巻いて、切断面の所は丸くなってるんだけど、どうすればあんな風に出来るんだ?というか漫画だからあの処置であっているのか?うーんよく分からん。でも今は早く処置して失血を止めないと。人体の1/3の血液がなくなるとダメだった気がするし、今ってどれだけ?出血したんだ?はぁー、こんなことなら、ウェルザさんにも一緒に来て貰えばよかったなー。

 流石に今から呼びにいくってアウトだろうし、僕とチルの二人でやるしかないよな。包帯をある程度巻いて、きつく両端を引っ張っら。腕の断面は何も出来てないやり方がわからないから、ひとまず動脈と静脈を圧迫し、血の通りを少なくすることにする。解けない様に何度も引っ張っりながら、きつく縛る。血はさっきの様には出ていない。滲むように少しずつ出て、地面に滴り落ちている。白かった包帯は真っ赤に染まっているし、応急処置をしている僕とチルも血で所々服が赤く染まっている。

「出血がおさまりそうだね。リュウ兄ちゃん。これでガンツさん大丈夫かな?」

 ガンツのおっさんはさっき一言喋った後から黙りである。目を塞がっているので気を失っているんだろう。それでもはたから見ると死んでるように見えなくもない。心臓に悪い。クビに人差し指と中指を当てると、僅かだが脈が鼓動を定期的に打っているから、大丈夫だとは思うが………。自分の脈と比べると力強さが全く感じられない。

「正直まだわからん。ガンツさん、大丈夫ですか~」

 声をかけてみる。ピクリとも反応がない。どうやら完全に気を失っている様だ。辺りを見回す。幸い見える範囲には僕とチルとノエルしかいない。

 なら行けるか。
「チル。精霊術で、ガンツさんを回復してみるから、周囲への警戒をお願い。」

「うん。」

「森に佇(たたず)む精霊たちよ。精霊ティタニアの元に力をかして。素は命の力なり、かのものを癒す力となれ、回復(ヒール)」

  発動?発動?しなかった?なんで?

「パパまた、呪文がママの名前になってますよ。」

「おっとそうだったノエルの名前でやらないとな。ノエルありがとう」

 注意してくれたノエルの頭をちゃんと人差し指で撫でてあげる。力加減が凄く難しい。

「森に佇(たたず)む精霊たちよ。精霊ノエルの元に力をかして。素は命の力なり、かのものを癒す力となれ、回復(ヒール)」

 回復の光が腕の患部を中心に小さく光る。こんな場面他の人には見られるわけには行かない。使いべりのしない、都合の良い回復魔法なんて使えることを知られるわけにはいかないんだ。

 しばらく経つと、切断部の皮膚から血が滲むことも無くなったし、顔色もさっきと比べると若干良くなった気がする。

「こんなものだな。回復し過ぎると後で追求が大変だから、ガンツさんには悪いけど、この辺で勘弁してもらおう。」

「パパお疲れ様です。色んな精霊術が使えるんですね。」

「まー色々と言っても、回復と異空間ポケットの2つだけだけどな。テレパシーっぽく通信するのも知りたいけど、聞く前にティタニアが行っちゃたからな。ノエル分かる精霊術で便利なものがあったら、パパに教えてね。」

「任せて下さい。」

 とノエルが小さな胸をポンっと叩く。

「リュウ兄ちゃん。治療終わったんなら、ガンツさんを移動させない?いつまでもこのままって言うのは身体に悪いよ。」

「それもそうだな。頑張って戦った英雄さん位は、お家まで運んであげないとな。でも、流石にガンツさんは持って運べないぞ。体調も悪いし、引きずるわかにもいかないからな。リヤカーをとってこなきゃな。」

「リヤカーなら、私が持ってきたやつが近くにあるから、持ってくるね。」

 そう言うとチルは一目散に駆け出して、あっという間にリヤカーを引っ張って来た。

『浮遊』

 魔法を使って、重たいガンツさんの体重を軽減して、チルと二人がかりで、身体に負担がかからない様にリヤカーに乗せる。リヤカーに乗せてあったポーションの空き瓶の数々は事前に異空間に収納済みである。ポーションが割れない様に緩衝材として置いてあった毛布でガンツさんを覆い、擦れない様にする。

 準備が終わるとチルを念のためガンツさんの隣に乗せる。僕は、ガンツさんとチルの乗ったリヤカーを一人で引っ張ることになった。

『浮遊』

 リヤカーをさらに魔法で軽くして、引っ張る。道の上には所々に瓦礫があり、後ろに重傷者を乗せた状態で走る訳にもいかず歩いて雑貨屋まで行くことになる。

 雑貨屋までは、みんなが負傷者の手当てに駆り出されていたため、もう負傷者が見つかることはなかった。

 ほんっとよかったよ。
 ポーションはないので、負傷者がいてもどうすることも出来ない。少し気休め程度の手当てが出来る程度だ。
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