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第8章 変わってしまう日常編
【雇用№133】魔族襲撃 後始末編6
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「こんにちは~。誰かいますか?」
雑貨屋さんに顔を出す。
「はいはい、今出ますよ」
のんびりとした奥さんの声が聞こえる。襲撃も終わって時間も大分経ったので、通常モードに戻った様だ。
「あら、リュウさんじゃありませんか?魔族の襲撃ありましたけど、大丈夫でしたか?うちは旦那がまた防衛に行ってまして、私の方は怪我したお客様に備えて、在庫の補充と店番をしてたんですよ。」
「奥さん。こんにちは。僕の方は大丈夫でしたけど……。」
「あら、リュウさん。大丈夫ならよかったですわね。でもどうしたんだすか?いつもより歯切れが悪いですけど。」
「あのですね。慌てずに落ち着いて聞いて欲しいのですが、実はですね。ガンツさんが重傷を負いました。」
「きゃーっ、それで、主人は、主人は大丈夫なんですか?」
奥さんがちょっとふらっとしたものの直ぐに気を取り直して現状を確認してきた。襲撃がある度に旦那が毎回街の防衛に出るんだ。奥さんとしては、気が気でないだろう。さっきまでの冷静さが跡形もなく吹き飛んでいる。今回の襲撃も心配でたまらなかったのだろう。
しかも、外を出れば、被害の深刻さの一旦は伺えるし、雑貨屋でポーションや包帯を販売していれば、負傷者がどれだけいて、いつもと比べると多いのが実感も出来ていただろう。前の襲撃も、前々回の襲撃もガンツさんは、これと言った外傷もなく家に戻っているが、紙一重で生きて帰っているに過ぎないんだ。
もしかしたら、前の戦いで命を失っていた可能性もある。そんな中で生活しているんだ。魔族との戦争ではあるけど、僕らの住んでいた日本が戦争が無くて、そんな危険に不安に陥ることもなく生活出来たのは、今思えば幸せなことだったかもしれないな。
昨日までは、仲間がそんな命に関わることもなく、重傷で腕がなくなることもなかったから、街の中では何とかなると安心してたのかもしれないな。今なら、ガンツさんの奥さんの気持ちが痛いほどよく分かる。
「ええ、命はかなり危ない所でしたが一命を取り止めることが出来ました。ただ左腕が魔族との戦いで亡くなってしまいました。すみません。僕がもう少し早く、ガンツさんの所に行ってサポート出来ていれば………。」
「ほっ、そうですか。主人は主人は生きているんですね。よかった。リュウさん、主人の命を救ってくれてありがとうございます。片腕が無くなってしまうのは、悲しいことですが、命があるだけでも今は十分です。感謝することこそあれ、非難する様なそんな恥知らずなことをするつもりはさらさらありませんわ。それで、今主人はどこにいるんですか?」
「こちらです。リヤカーに乗せて来ました、体力が無くなって歩けないので、寝台までお運びします。」
リヤカーに奥さんが急いで駆け寄って行く。
「あなた、あなた大丈夫?」
「あーすまんな。ちょっとへまこいちまった。この通りの有様だ。リュウのおかげで何とか一命は取り留めたが、もうお前に会えないかと思ったよ。減らず口はなんとか叩けるが、血を流し過ぎて身体がこの通り全く動かねえわ。お前にはこれから迷惑をかける。すまん。」
「あなたまで何を言ってるんですか。私はあなたが生きて戻ってくれただけで十分ですわ。それ以上ここで望んだらバチが当たりますよ。魔族の襲撃で今回、命を落とした方も沢山いるんですから、命が助かったことを女神様に感謝しましょう。生活や商売のことなんかは、その後の話ですよ。」
さすが出来た奥様である。主人が生きて帰っていることを一番に喜んでいるや。僕はそこまで純粋に喜べるだろうか?後先のことを考えてしまって、出来ないかもしれないな。こう言う時はその場のありがたみを感謝した方がいいのかもな。
「リュウさん。ここまで連れてきてもらって申し訳ないですが、寝台まで主人を運んでもらえますか?」
「ええ、もちろんですよ。」
奥さんには、寝室までの場所の案内と、扉の開閉をしてもらう形で僕とチルで寝室まで運んで行った。
はー、今はこれでいいとして、奥さんだけになると、ガンツさんを動かさないし、トイレや食事が大変そうだな。松葉杖や歩行器はあるのだろうか?流石に車椅子はないわな。あんな精密なものは作れないよね。でも、リヤカーを改造してなら何とか出来るか?いやでも片腕だけだし、逆に危ないか。セバリンさんに案だけだしてみる事にしよう。
僕たちは、帰るまで延々と奥さんに頭を下げられ、お土産に雑貨品を沢山もらって行くことになった。ちなみにポーション類はガンツ雑貨店も品切れ状態となっている。
「では、奥さん。僕たちはこれで帰りますので何か有ればご連絡下さいね。ガンツさんと奥さんには大変お世話になってますから。」
「ええ、その時は遠慮なく連絡するわね。リュウさん、チルさん、あなた達も困ったことがあったら、遠慮なく私に相談して下さいね。」
「ええ、その時はご連絡させてもらいますね。ではまた。」
外に出ると完全に陽は暮れていた。僕とチルはリヤカーを引きながら、ファームに帰っていった。
雑貨屋さんに顔を出す。
「はいはい、今出ますよ」
のんびりとした奥さんの声が聞こえる。襲撃も終わって時間も大分経ったので、通常モードに戻った様だ。
「あら、リュウさんじゃありませんか?魔族の襲撃ありましたけど、大丈夫でしたか?うちは旦那がまた防衛に行ってまして、私の方は怪我したお客様に備えて、在庫の補充と店番をしてたんですよ。」
「奥さん。こんにちは。僕の方は大丈夫でしたけど……。」
「あら、リュウさん。大丈夫ならよかったですわね。でもどうしたんだすか?いつもより歯切れが悪いですけど。」
「あのですね。慌てずに落ち着いて聞いて欲しいのですが、実はですね。ガンツさんが重傷を負いました。」
「きゃーっ、それで、主人は、主人は大丈夫なんですか?」
奥さんがちょっとふらっとしたものの直ぐに気を取り直して現状を確認してきた。襲撃がある度に旦那が毎回街の防衛に出るんだ。奥さんとしては、気が気でないだろう。さっきまでの冷静さが跡形もなく吹き飛んでいる。今回の襲撃も心配でたまらなかったのだろう。
しかも、外を出れば、被害の深刻さの一旦は伺えるし、雑貨屋でポーションや包帯を販売していれば、負傷者がどれだけいて、いつもと比べると多いのが実感も出来ていただろう。前の襲撃も、前々回の襲撃もガンツさんは、これと言った外傷もなく家に戻っているが、紙一重で生きて帰っているに過ぎないんだ。
もしかしたら、前の戦いで命を失っていた可能性もある。そんな中で生活しているんだ。魔族との戦争ではあるけど、僕らの住んでいた日本が戦争が無くて、そんな危険に不安に陥ることもなく生活出来たのは、今思えば幸せなことだったかもしれないな。
昨日までは、仲間がそんな命に関わることもなく、重傷で腕がなくなることもなかったから、街の中では何とかなると安心してたのかもしれないな。今なら、ガンツさんの奥さんの気持ちが痛いほどよく分かる。
「ええ、命はかなり危ない所でしたが一命を取り止めることが出来ました。ただ左腕が魔族との戦いで亡くなってしまいました。すみません。僕がもう少し早く、ガンツさんの所に行ってサポート出来ていれば………。」
「ほっ、そうですか。主人は主人は生きているんですね。よかった。リュウさん、主人の命を救ってくれてありがとうございます。片腕が無くなってしまうのは、悲しいことですが、命があるだけでも今は十分です。感謝することこそあれ、非難する様なそんな恥知らずなことをするつもりはさらさらありませんわ。それで、今主人はどこにいるんですか?」
「こちらです。リヤカーに乗せて来ました、体力が無くなって歩けないので、寝台までお運びします。」
リヤカーに奥さんが急いで駆け寄って行く。
「あなた、あなた大丈夫?」
「あーすまんな。ちょっとへまこいちまった。この通りの有様だ。リュウのおかげで何とか一命は取り留めたが、もうお前に会えないかと思ったよ。減らず口はなんとか叩けるが、血を流し過ぎて身体がこの通り全く動かねえわ。お前にはこれから迷惑をかける。すまん。」
「あなたまで何を言ってるんですか。私はあなたが生きて戻ってくれただけで十分ですわ。それ以上ここで望んだらバチが当たりますよ。魔族の襲撃で今回、命を落とした方も沢山いるんですから、命が助かったことを女神様に感謝しましょう。生活や商売のことなんかは、その後の話ですよ。」
さすが出来た奥様である。主人が生きて帰っていることを一番に喜んでいるや。僕はそこまで純粋に喜べるだろうか?後先のことを考えてしまって、出来ないかもしれないな。こう言う時はその場のありがたみを感謝した方がいいのかもな。
「リュウさん。ここまで連れてきてもらって申し訳ないですが、寝台まで主人を運んでもらえますか?」
「ええ、もちろんですよ。」
奥さんには、寝室までの場所の案内と、扉の開閉をしてもらう形で僕とチルで寝室まで運んで行った。
はー、今はこれでいいとして、奥さんだけになると、ガンツさんを動かさないし、トイレや食事が大変そうだな。松葉杖や歩行器はあるのだろうか?流石に車椅子はないわな。あんな精密なものは作れないよね。でも、リヤカーを改造してなら何とか出来るか?いやでも片腕だけだし、逆に危ないか。セバリンさんに案だけだしてみる事にしよう。
僕たちは、帰るまで延々と奥さんに頭を下げられ、お土産に雑貨品を沢山もらって行くことになった。ちなみにポーション類はガンツ雑貨店も品切れ状態となっている。
「では、奥さん。僕たちはこれで帰りますので何か有ればご連絡下さいね。ガンツさんと奥さんには大変お世話になってますから。」
「ええ、その時は遠慮なく連絡するわね。リュウさん、チルさん、あなた達も困ったことがあったら、遠慮なく私に相談して下さいね。」
「ええ、その時はご連絡させてもらいますね。ではまた。」
外に出ると完全に陽は暮れていた。僕とチルはリヤカーを引きながら、ファームに帰っていった。
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