【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~ 【累計13万PT & 123大賞4一次通過】

近衛 愛

文字の大きさ
140 / 188
第8章 変わってしまう日常編

【雇用№139】魔霊樹討伐 準備編1

しおりを挟む
「それはね。相手がピンチの時ほど、私たちにとってピンチはチャンスに変わるのよ。困っている人を助けてあげたら、その人は恩を感じてくれるでしょう?」

「ええ、確かに。給料前に金欠で、食べ物がろくに食べられない時に、食事を恵んでくれる友人は神様に見えました。」

「その人が困ってたら、リュウさんはどうするのかしら?」

「勿論助けますよ。彼に感じた恩は沢山ありますし、その恩を返すチャンスなんですから。それに次も食事を施してもらいたいと言う下心もありますが……。」

「そう言うことなのよ。困っている人を助けると、その人が私が困っている時に助けてくれるのよ。今回は商売での困り事だから、それなりに報酬は頂きますがね。ふふっ」

「あれだけ報酬頂いたのに、恩を感じてくれるものなんですか?」

「ええ、勿論よ。無茶なお願いはしていないもの。彼女の出来る範囲での最大限の交渉をしただけだわ。私達が断るとあの人はもう縋る所がないでしょう?うん、と言ってもらえるまではどんな内容でも通っと思うわ。ただ、あまり無茶な要求をすると恨みを買うからそこはそこで注意が必要よね。」

 これはあれか。速達や特急列車なんかと同じ理屈なんだろうか?通常よりも無茶な納期でお願いしてくるから、少し割り増し料金を頂くという。これもある程度金額の上限がある訳だ。

 日帰りで予定時間までに何としても着きたかったら、鈍行電車ではなく、特急列車。それよりも早く着きたいなら新幹線に乗る。さらに早く着きたかったら、タクシーも併用して高速道路も走ってもらう。

 僕はそこまで急ぎの予定は入れたことはないので、特急電車がせいぜいである。そこまで金額を支払ってでもするのか?しないのかは、案件にもよるだろう。

 今回の落とし所を見事にウェルザさんが見極めたということだ。特急電車で良い人に新幹線を勧めても乗らないし、鈍行だとそもそも間に合わないから意味がない。特急電車を提示しないと、交渉が成立しないのだ。

 どれだけ客のニーズに応えら料金で設定出来ているかということだろう。中々僕には難しいお話だ。ポーションの料金でさえ、1本1万は高いと思うので、手軽に3000で良いとさえ思ってしまう。そうなると途端に作る人がいなくなり、ポーションがまた値上がりして、今の価格に落ち着くのだろう。

 市場経済の需要と供給の関係は難しいですね。僕にはまだまだ縁遠い話ですわ。経営者としてどうかと思うけど。一つだけ確かなことは、ウェルザさんが経営者としてとても適任であると言うことだけだね。

「僕に手伝えることがあれはなんでも指示して下さいね。」

「いえいえ、お気持ちだけで大丈夫ですわ。リュウさんは、勇者として、大魔道士様として、出来ることをして下さいね。チルさんは少しお借りしますので、予定を入れる時は予め私に言って下さい。私の方で出来ることがあれば、なんなりとお申し付け下さい。」

「ええ、分かりました。その際はお話しますね。」

 気を遣って手伝うといったつもりが逆に返されてしまった。僕として、僕が作ったファームで一人だけのんびりするよりかは、他の人と一緒に作業してた方が気が楽だし、それにこれから忙しくなる人にお願いなんてし辛いですよ。

 チルも予定に組み込まれてしまっているから、そうやすやすとは、明日魔霊樹伐採すると言って、連れて行く訳にはいかないな。向こうにも都合があるし。

 僕は僕で今後の段取りを大筋決めてしまおう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆  ◆  ◆ ◆

 そういえば、魔霊樹を伐採しに行くにしても場所も方角も分からないな。ティタニアを頼りにしてたから、そこら辺がさっぱり抜けている。どうする?魔素を感知して分かるんなら、ノエルが多分出来ると思うけど、いなかったら詰んでたぞ。多分魔霊樹の所在地なんて、この街の人は誰もきっと知らないし、もしかしたら存在自体知らない人の方が多いんじゃないだろうか?

「ノエル魔霊樹討伐についてなんだが、どこにあるか場所って分かるか?」

「魔霊樹ですか?でしたら、魔素の多い所ですから、正確な位置は分かりませんが方角ならわかりますよ。この街を起点にして、5方向ですね。」

「よくやったノエル。魔霊樹討伐行くにしても場所を覚えてないから、しらみつぶしで歩くところだったよ。いやはや、時間がない時にそんなことはしたくないから、助かったよ。」

「いえいえ、パパのお役に立てるなら喜んでしますので、なんでも言って下さいね。」

「とはいえ方角が分かってもどれくらいかかるのかがさっぱり分からないな。1日で行けるのか、1週間かかるのか。道があるのかないのか分からないことばかりだな。」

「パパ、私もそれは分かりません。でも、ここからの距離は5つとも大体同じくらいの距離ですよ。」

「なら1個行ってしまえば、大体の感覚は掴めそうだな。必要なものは対魔霊樹用の装備精霊樹の斧にウェルザさん達に作ってもらった精霊樹の加護が入った特殊なスーツ、あとは旅に必要なもの一式か。」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

処理中です...