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第六章『主なき聖剣』
第五百二十八話『豪快さの意味』
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出来るだけ正確にスピリオの居場所を把握しつつ、近くに手ごろな窓はないかと少しばかり首を動かす。ほどなくしておあつらえ向きの窓を視界の中心に唱えると、リリスは虚空を蹴り飛ばすかのように足を動かした。
瞬間、風に乗ってふわりと浮かんでいた体が窓に向かって急加速し始める。その勢いに身を任せるまま、リリスは右足に氷の鎧を纏わせて。
「――少しだけ揺れるけど、我慢して頂戴ね!」
手を繋いだ相棒に向かって声を張り上げながら、窓へ向かって足から突っ込む。氷の弾丸と同等かそれ以上の威力を持つそれに宿屋の窓が耐えきれるはずもなく、窓ガラスは儚い音を立てながら砕け散った。
その破片とともに、リリスたちの身体は宿の一室に勢いよく放り出される。そのまま着地すればガラス片の餌食になるのは避けられないが、事前に風の幕を作っておけばそれも問題なしだ。柔らかな風に受け止められ、二人は無傷のまま揃って宿へ入る事へと成功していた。
「いやー、風魔術もここまで進化するとはね。力任せに吹っ飛ばしたり渦巻かせたりするのが精一杯だった時期がもう懐かしいや」
「力加減が出来ないせいで迷惑をかけたこともあったわよね。……でも大丈夫、今はもうこんなに細かく操れてるから」
その証拠と言わんばかりに手を叩き、地面に散らばっていたガラス片を小さな風の渦で部屋の隅へとまとめて追いやる。本当ならば窓の修理も出来たらいいのだが、そこまで行くと流石のリリスでも専門外だ。――カイルが『戦場の破損は気にしないでいい』って明言してたし、後から面倒なことになることはないと思うが。
「おお、ここまで小規模でも上手く扱えるんだね。もう力任せの魔術で押し切るだけの君はいないんだなあ……」
「何ちょっとしみじみとしてるのよ、力押しだって必要ならいくらでもしてやるわ。やれることが増えたからと言って、今までで来てたことが型落ちになるわけじゃないもの」
それこそ下っ端の一掃には力押しが一番合っているし、それだけでは通じない相手に対する策が増えたというのが恩恵の一番大きな部分なのだろう。力押しだけでは超えられない壁がある事を、今のリリスはひしひしと実感している。
超えられないからこそ、知恵を絞らなければならないのだ。力がダメなら搦め手で、搦め手もダメなら環境を変えて、それでもダメなら戦いの構図自体を変える。それはきっと、今までにマルクやツバキが実践してきたことにも共通している考え方で――
「おおおお二人とも、一体何をしてるんですかっ⁉」
そんなリリスの思考を遮るかのように、勢いよくドアを開けたスピリオが目を丸くしながらこちらに向かって問いかけてくる。少し慌てたような足音が近づいてきているのは認識していたが、想像している以上の慌てっぷりだ。普段が少し背伸びしすぎなように思えるから、これでも年相応な気はしているのだが。
「何をって、制圧が終わったから合流しようと思ったのよ。私が魔力の気配を探れるの、あなたには説明してあるでしょう?」
「いや、それは確かにそうですけど……。いやいやいや、別に扉に鍵がかかってるわけでもないのにこんな派手な入り方をする必要がありましたか!?」
淡々とした調子の答えに一瞬流されかけながらも、スピリオはぶんぶんと首を横に振ってなおもリリスたちの手段のおかしさを主張し続ける。もちろん何の考えもなしに窓ガラスに飛び込んだわけではないのだが、それをすぐに開示するのも何か違うような気がしてならなかった。
カイルがリリスたちにスピリオを付けたのは、それが成長の糧になるという確信があったからだ。何を見てそう思ったのかはカイルしか知らないことだが、ある程度自由にやらせてもらっている恩義もある。……分からないなりに、スピリオを伸ばす手助けをしようと試みるのは悪いことではないはずだ。
戦いの後の事を考えるならば、カイルとの関係は少なくとも悪化していない方が色々と有利に働くだろう。少なくとも今はまだ、その損得勘定にまで思考を巡らせられるだけの余裕があった。
「『いざとなればこういう事も出来る』って、私はあなたに手札の一部を示したまでよ。そうじゃないと、助けてほしい時に上手く私を頼ることも難しくなってしまうでしょう?」
そんな思考を一瞬のうちに済ませ、リリスは澄ました表情のままスピリオに真っ向から意見をぶつけ返す。……今度こそはっきりと返事に窮したのが、表情を見るだけではっきりと分かった。
「それは……そうかも、しれませんけど」
「仲間が出来ることを把握しておくことも大事だからね。ボクはリリスの得意なことも苦手なことも知ってるし、逆にボクの得意や苦手もリリスは知ってる。そこまで分かって初めて、相棒として安心して背中を預けあえるってわけさ」
さらに追い打ちをかけるようなツバキの言葉が続き、スピリオの唸り声が大きくなる。明らかにリリスの意図を分かった上での加勢なのだが、それに気づかれる気配は微塵もなさそうだ。
スピリオの返答を待ってリリスとツバキは口をつぐむが、十秒ほど経っても唸り声が上がり続ける現状は変わらない。やがて観念したようにがっくりとうなだれると、さっきまでの威勢のいい主張が嘘のように萎れた声を上げた。
「はい……お二方の言う通り、僕が浅慮だったかもしれません……」
「……あらら」
白旗を振っている姿が減資できるほどの降参っぷりに、ツバキが思わず声を漏らしながら視線をこちらへ向けてくる。『どう収拾を付けるんだい?』と、そう言いたげな表情だった。
だが、リリスからしてもここまで早くうなだれてしまうのは想定外だ。スピリオの言っていることにはある程度の正当性があったし、寧ろ窓から飛び込まれて驚かない方がおかしな話ではある。……『自称偵察騎士筆頭』を名乗りながらも、自分に対する自信をスピリオはそう持ち合わせていないのかもしれなかった。
しばらく悩み、今のスピリオにかけるべき言葉を必死に頭の中で探索する。思考をフル回転させた末に出てきた結論は、一度スピリオへと話の主導権を明け渡すことだった。
「ねえ、あなたはどうして私たちの行動が普通じゃないと思ったの?」
リリスたちの主張は一旦隅に置き、スピリオの意見へと話の主軸をシフトさせる。あれだけ慌てた様子でこっちに来たという事は、そうさせるだけの根拠があったというわけだ。何か明確な考えがあってスピリオはリリスたちのやり方に異を唱えようとしていたことは、間違いないと見ていいだろう。
「……だって、ここは既に戦場ですよ? 『落日の天』の戦略は見えませんけど、あまり不用意に音を立てることが得策だとも思えない。事実、この近くを一人で歩き回る不自然な足音も聞こえてますし」
それを裏付けるかのように、スピリオはぽつぽつと理由を説明し始める。その中に混じった『聞こえる』と言う表現に、リリスの瞼がピクリと動いた。
スピリオが操る魔術は、リリスの感覚を以てしても今一つ全貌の掴み切れないものだ。やっていることが五感の延長なことは本人から説明を受けたが、それをどう実現しているかの原理が全くと言っていいほどに分からない。今の状態のままで模倣してみろと言われても、リリスはそれらしい現象すら起こせずに失敗することだろう。
だが、その状態でも魔術によって延長された五感が信用に足る物であることは確かだ。聴覚や嗅覚、時には触覚を用いるスピリオの索敵は、魔力の気配が錯綜している今のような状況ならばリリスのそれを範囲精度共に上回る可能性を持ちえていた。
「結構注意深くやってたから、突然隣から聞こえてきた大きな音で耳が少しびっくりしちゃって……。でもいいんです、今はもうしっかり聞こえてますから」
「……聞こえてるって言うのは、私たちが来る前から聞いてた不自然な足音のこと?」
おずおずとしながらもはっきりと届けられた報告に、頬が吊り上がるのを抑えながら問いを返す。……数秒の後に小さく首が縦に振られたのを見て、リリスは作戦の成功を確信した。
「答えてくれてありがとう、スピリオ。……それじゃあツバキ、準備と行きましょうか」
「ああ。あっちからやってきてくれるって言うなら、出来る限りのもてなしをするのが相応の礼儀ってものだからね」
リリスの言葉に応えて立ち上がり、ツバキも意識を臨戦態勢へと整える。……一瞬にして変じた二人の様子を、スピリオの困惑に満ちた瞳が映し出していた。
とても大事な情報を提示してくれたわけだし、そろそろスピリオにも狙いを明かしていいだろう。……自信を奪ったままで居るのは、本人にもカイルにも悪い気がするし。
「あなたの言ってること、間違ってなんかないわよ。居場所を気取られたくない時に物音なんて立てるべきじゃないし、窓をぶち破って来るなんて論外。何せ居場所が見つかっちゃうもの」
「……へ……?」
「けどね、『最初からおびき寄せるつもりでやってた』なら話は変わるわ。……どれだけ下っ端を削ったところで、敵の核となるような戦力を削れなきゃ私たちの役割は果たせないんだからね」
有象無象がほぼ際限なく湧いてくるのは、ベルメウでの戦いですでに経験済みだ。ああなってしまう事が目に見えているならば、代わりの効かない幹部を削り取ってしまう以外クライヴ達に大打撃を与える方法はなかった。
先に居所を知られてしまうのは本来なら奇襲のリスクを高めるだけだが、リリスとスピリオの二重索敵態勢があれば話は変わってくる。……現に今、単身でこちらに向かう存在に対してリリスたちは迎撃態勢を敷こうとしているのだから。
「戦いの序盤から単独で動いて私たちの所に向かってくるんだもの、さぞ戦術的な価値は高いんでしょうね。――もしここで狩れたなら、戦況は一気に傾くわ」
――私たちに不意打ちなんてできないってこと、骨の髄まで教え込んでやろうじゃない。
未だ見えない敵に対して堂々と宣言し、リリスとツバキは揃って部屋を後にする。その後ろ姿を駆け足でスピリオが追いかけ始めたのは、それから十秒ほどの間が開いてからの事だった。
瞬間、風に乗ってふわりと浮かんでいた体が窓に向かって急加速し始める。その勢いに身を任せるまま、リリスは右足に氷の鎧を纏わせて。
「――少しだけ揺れるけど、我慢して頂戴ね!」
手を繋いだ相棒に向かって声を張り上げながら、窓へ向かって足から突っ込む。氷の弾丸と同等かそれ以上の威力を持つそれに宿屋の窓が耐えきれるはずもなく、窓ガラスは儚い音を立てながら砕け散った。
その破片とともに、リリスたちの身体は宿の一室に勢いよく放り出される。そのまま着地すればガラス片の餌食になるのは避けられないが、事前に風の幕を作っておけばそれも問題なしだ。柔らかな風に受け止められ、二人は無傷のまま揃って宿へ入る事へと成功していた。
「いやー、風魔術もここまで進化するとはね。力任せに吹っ飛ばしたり渦巻かせたりするのが精一杯だった時期がもう懐かしいや」
「力加減が出来ないせいで迷惑をかけたこともあったわよね。……でも大丈夫、今はもうこんなに細かく操れてるから」
その証拠と言わんばかりに手を叩き、地面に散らばっていたガラス片を小さな風の渦で部屋の隅へとまとめて追いやる。本当ならば窓の修理も出来たらいいのだが、そこまで行くと流石のリリスでも専門外だ。――カイルが『戦場の破損は気にしないでいい』って明言してたし、後から面倒なことになることはないと思うが。
「おお、ここまで小規模でも上手く扱えるんだね。もう力任せの魔術で押し切るだけの君はいないんだなあ……」
「何ちょっとしみじみとしてるのよ、力押しだって必要ならいくらでもしてやるわ。やれることが増えたからと言って、今までで来てたことが型落ちになるわけじゃないもの」
それこそ下っ端の一掃には力押しが一番合っているし、それだけでは通じない相手に対する策が増えたというのが恩恵の一番大きな部分なのだろう。力押しだけでは超えられない壁がある事を、今のリリスはひしひしと実感している。
超えられないからこそ、知恵を絞らなければならないのだ。力がダメなら搦め手で、搦め手もダメなら環境を変えて、それでもダメなら戦いの構図自体を変える。それはきっと、今までにマルクやツバキが実践してきたことにも共通している考え方で――
「おおおお二人とも、一体何をしてるんですかっ⁉」
そんなリリスの思考を遮るかのように、勢いよくドアを開けたスピリオが目を丸くしながらこちらに向かって問いかけてくる。少し慌てたような足音が近づいてきているのは認識していたが、想像している以上の慌てっぷりだ。普段が少し背伸びしすぎなように思えるから、これでも年相応な気はしているのだが。
「何をって、制圧が終わったから合流しようと思ったのよ。私が魔力の気配を探れるの、あなたには説明してあるでしょう?」
「いや、それは確かにそうですけど……。いやいやいや、別に扉に鍵がかかってるわけでもないのにこんな派手な入り方をする必要がありましたか!?」
淡々とした調子の答えに一瞬流されかけながらも、スピリオはぶんぶんと首を横に振ってなおもリリスたちの手段のおかしさを主張し続ける。もちろん何の考えもなしに窓ガラスに飛び込んだわけではないのだが、それをすぐに開示するのも何か違うような気がしてならなかった。
カイルがリリスたちにスピリオを付けたのは、それが成長の糧になるという確信があったからだ。何を見てそう思ったのかはカイルしか知らないことだが、ある程度自由にやらせてもらっている恩義もある。……分からないなりに、スピリオを伸ばす手助けをしようと試みるのは悪いことではないはずだ。
戦いの後の事を考えるならば、カイルとの関係は少なくとも悪化していない方が色々と有利に働くだろう。少なくとも今はまだ、その損得勘定にまで思考を巡らせられるだけの余裕があった。
「『いざとなればこういう事も出来る』って、私はあなたに手札の一部を示したまでよ。そうじゃないと、助けてほしい時に上手く私を頼ることも難しくなってしまうでしょう?」
そんな思考を一瞬のうちに済ませ、リリスは澄ました表情のままスピリオに真っ向から意見をぶつけ返す。……今度こそはっきりと返事に窮したのが、表情を見るだけではっきりと分かった。
「それは……そうかも、しれませんけど」
「仲間が出来ることを把握しておくことも大事だからね。ボクはリリスの得意なことも苦手なことも知ってるし、逆にボクの得意や苦手もリリスは知ってる。そこまで分かって初めて、相棒として安心して背中を預けあえるってわけさ」
さらに追い打ちをかけるようなツバキの言葉が続き、スピリオの唸り声が大きくなる。明らかにリリスの意図を分かった上での加勢なのだが、それに気づかれる気配は微塵もなさそうだ。
スピリオの返答を待ってリリスとツバキは口をつぐむが、十秒ほど経っても唸り声が上がり続ける現状は変わらない。やがて観念したようにがっくりとうなだれると、さっきまでの威勢のいい主張が嘘のように萎れた声を上げた。
「はい……お二方の言う通り、僕が浅慮だったかもしれません……」
「……あらら」
白旗を振っている姿が減資できるほどの降参っぷりに、ツバキが思わず声を漏らしながら視線をこちらへ向けてくる。『どう収拾を付けるんだい?』と、そう言いたげな表情だった。
だが、リリスからしてもここまで早くうなだれてしまうのは想定外だ。スピリオの言っていることにはある程度の正当性があったし、寧ろ窓から飛び込まれて驚かない方がおかしな話ではある。……『自称偵察騎士筆頭』を名乗りながらも、自分に対する自信をスピリオはそう持ち合わせていないのかもしれなかった。
しばらく悩み、今のスピリオにかけるべき言葉を必死に頭の中で探索する。思考をフル回転させた末に出てきた結論は、一度スピリオへと話の主導権を明け渡すことだった。
「ねえ、あなたはどうして私たちの行動が普通じゃないと思ったの?」
リリスたちの主張は一旦隅に置き、スピリオの意見へと話の主軸をシフトさせる。あれだけ慌てた様子でこっちに来たという事は、そうさせるだけの根拠があったというわけだ。何か明確な考えがあってスピリオはリリスたちのやり方に異を唱えようとしていたことは、間違いないと見ていいだろう。
「……だって、ここは既に戦場ですよ? 『落日の天』の戦略は見えませんけど、あまり不用意に音を立てることが得策だとも思えない。事実、この近くを一人で歩き回る不自然な足音も聞こえてますし」
それを裏付けるかのように、スピリオはぽつぽつと理由を説明し始める。その中に混じった『聞こえる』と言う表現に、リリスの瞼がピクリと動いた。
スピリオが操る魔術は、リリスの感覚を以てしても今一つ全貌の掴み切れないものだ。やっていることが五感の延長なことは本人から説明を受けたが、それをどう実現しているかの原理が全くと言っていいほどに分からない。今の状態のままで模倣してみろと言われても、リリスはそれらしい現象すら起こせずに失敗することだろう。
だが、その状態でも魔術によって延長された五感が信用に足る物であることは確かだ。聴覚や嗅覚、時には触覚を用いるスピリオの索敵は、魔力の気配が錯綜している今のような状況ならばリリスのそれを範囲精度共に上回る可能性を持ちえていた。
「結構注意深くやってたから、突然隣から聞こえてきた大きな音で耳が少しびっくりしちゃって……。でもいいんです、今はもうしっかり聞こえてますから」
「……聞こえてるって言うのは、私たちが来る前から聞いてた不自然な足音のこと?」
おずおずとしながらもはっきりと届けられた報告に、頬が吊り上がるのを抑えながら問いを返す。……数秒の後に小さく首が縦に振られたのを見て、リリスは作戦の成功を確信した。
「答えてくれてありがとう、スピリオ。……それじゃあツバキ、準備と行きましょうか」
「ああ。あっちからやってきてくれるって言うなら、出来る限りのもてなしをするのが相応の礼儀ってものだからね」
リリスの言葉に応えて立ち上がり、ツバキも意識を臨戦態勢へと整える。……一瞬にして変じた二人の様子を、スピリオの困惑に満ちた瞳が映し出していた。
とても大事な情報を提示してくれたわけだし、そろそろスピリオにも狙いを明かしていいだろう。……自信を奪ったままで居るのは、本人にもカイルにも悪い気がするし。
「あなたの言ってること、間違ってなんかないわよ。居場所を気取られたくない時に物音なんて立てるべきじゃないし、窓をぶち破って来るなんて論外。何せ居場所が見つかっちゃうもの」
「……へ……?」
「けどね、『最初からおびき寄せるつもりでやってた』なら話は変わるわ。……どれだけ下っ端を削ったところで、敵の核となるような戦力を削れなきゃ私たちの役割は果たせないんだからね」
有象無象がほぼ際限なく湧いてくるのは、ベルメウでの戦いですでに経験済みだ。ああなってしまう事が目に見えているならば、代わりの効かない幹部を削り取ってしまう以外クライヴ達に大打撃を与える方法はなかった。
先に居所を知られてしまうのは本来なら奇襲のリスクを高めるだけだが、リリスとスピリオの二重索敵態勢があれば話は変わってくる。……現に今、単身でこちらに向かう存在に対してリリスたちは迎撃態勢を敷こうとしているのだから。
「戦いの序盤から単独で動いて私たちの所に向かってくるんだもの、さぞ戦術的な価値は高いんでしょうね。――もしここで狩れたなら、戦況は一気に傾くわ」
――私たちに不意打ちなんてできないってこと、骨の髄まで教え込んでやろうじゃない。
未だ見えない敵に対して堂々と宣言し、リリスとツバキは揃って部屋を後にする。その後ろ姿を駆け足でスピリオが追いかけ始めたのは、それから十秒ほどの間が開いてからの事だった。
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