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晴臣、週一騎士をしてとお願いされる
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「──という事があったんだ」
「ふぅ~ん、お疲れ様」
軽い口調で俺をねぎらうのは、俺と正反対のイケメン、ヴィオルだ。中性的な彫の深い顔に、日本人にはあり得ない紫色のつややかな髪をなびかせ、白い西洋の騎士服を纏っている。
先に説明しておくが、ヴィオルはコスプレで騎士服を着ているわけではない。正真正銘の騎士だ。そして変わった色の髪は地毛である。つまり日本人でもなく外国人でもない。
異世界人である。
「人が重い話をしたというのに、軽く返しやがって」
「晴臣、外見なんて大したスペックじゃない。君は我が国最強の対魔王騎士だ。もっと自信をもちなよ」
パチンとウィンクをしながらヴィオルが言う。男にウィンクされても複雑な気分だ。
「イケメンのお前に言われても、嫌みにしか聞こえねぇ」
「ぇ~これでも僕は君を尊敬してるのに。まぁ、そんな事より今日の仕事なんだけど」
「そんな事よりって、お前な」
まぁいい。こいつに相談した俺がばかだった。とっとと仕事モードになろう。
そう、仕事といえばなのだが。
俺はパラリアという異世界で週1だが騎士をしている。騎士といっていいか微妙だと思うが。
話はつい1か月ほど前にさかのぼる。
俺は突然、異世界から来たヴィオルに、ジャンジャカジャーンという謎の効果音と共に部屋に侵入され、こう告げられた。
「おめでとう。君は今日からパラリア国の姫専属騎士に任命された。さ、僕と一緒にきたまえ!」
あまりのバカ発言に即、通報する予定だっだが、『姫』専属騎士という言葉がひっかかり判断が遅れてしまった。気が付いたら転送され異世界にいたのである。最初は某テーマパークかと思ったが、竜やら魔法やらを見せつけられ、疑う事は諦めた。
──異世界って本当にあったんだな。
俺はこの時、ちょっぴりだが期待をしていた。だってお姫様の騎士。完全にラノベうっはー世界だ。ここまできたら姫は美少女に違いない。いやそうじゃないと、やってけない。と、勝手に妄想広げていたのだ。その時である。
「ヴィオル、この方なの?」
突如、少女が俺の前に現れた。鈴のような高い綺麗な声だ。
「姫、また勝手に転移魔法をお使いになられましたね? あなたを護衛する方々の髪量を気にされた事がございますか? 禿げるとクレームを受けるのは僕なんですよ?」
「もぅ!! 私の話をきいてるの? この方が私の騎士なのかって聞いてるの!!」
「相変わらず人の話をききませんね。そうですよ」
「やっぱり!!」
キラキラと少女の目が輝いた。歳は俺とそう変わらないが、品があり、知的で優し気な碧眼は見るだけで心が癒される。彼女をみた瞬間、心が躍った。ああ、俺はこの為に生きてきたんだと。だが、その喜びはストンと地に落ちた。
お姫様から見た俺は、醜くないだろうか? いや醜い。彼女からすれば、俺は豚だ。しかもヴィオルが隣にいるせいで、俺の醜さがより際立っている。だんだんと俺は怖くなってきた。
「騎士様? どうして下を向いていらっしゃるの?」
どうしてって、俺を見る女子は、開口一番に目を合わせるなと言うからです……という俺の気持ちなどお構いなしに、青い瞳が俺の顔を覗き込んできた。あまりにも詰め寄ってくるため、無意識にのけぞると、さらに距離を詰められた。おかしい。この子は絶対におかしい。もしかしてすごい近眼なんだろうか?
「素敵……私の理想の騎士様だわ」
「え……ステキ? リソウ?」
頬を紅潮させて言う少女を見て、ドキリと心臓が飛び跳ねあがった。でもダメだ。これは詐欺に違いない。だって俺だ。話がうますぎる。異世界では素敵、理想は『不細工は死ね』という意味かもしれない。
「ヴィオル、よくやったわ。騎士王を探すのは手間だったでしょう」
「ええ、苦労しました。まさか異世界にいるとは思いませんでしたが」
キラっと白い歯を輝かせながらヴィオルが言う。ふふふと互いに微笑み合うヴィオルと姫はお伽話にでてくる姫と王子のようだ。いや、実際一人はお姫様だけど。
「いけない。私としたことが、騎士様に挨拶もせず」
お姫様はドレスの裾を持つと、俺の前に立ち、西洋風のお辞儀をする。
「初めまして、私はパラリア国、第一王女、リスティといいます。騎士様のお名前は?」
「晴臣だけど……」
「ハルオミ……ハルオミ様、ハルオミ……」
リスティが俺の名前をかみしめるように言う。
「ハルオミ様、あなたをずっとお待ちしておりました。どうか魔王からパラリア国を救ってください」
え? 魔王?
「無理です」
「なぜですか」「なぜだい?」
二人が同時に声をそろえて言う。その視線がつらい。でもダメなものはダメだ。俺は現実をよくわかっている。
「経験もないですし、体系的に戦闘は……」
「え? そうですの?」
「はははっ、大丈夫だよ、晴臣。君のその体系こそ勝機さ。僕にとってはチャームポイントにしか見えないよ」
はぁ? 何がチャームポイントだ! イケメンにはわからんだろうがな、俺はそのポイントで人生を苦労してんだ。しかも勝機とか正気か?
「おい、血迷いフォローはやめろ。俺は断ってんだよ」
「血迷いって……君、面白いね」
うるさい、ヴィオル。俺は間違っていないはずだ。誰だって自分の命が一番大事だろう?
「そんな……。ハルオミ様なら快諾してくださると思ったのに」
う……リスティの視線がいたい。だが命には代えられない。俺はそれはそれはやんわりとオブラートに包んで断った。そして俺を連れてきたヴィオルには、学業で忙しいと適当な理由をつけ、帰せと強く言ってやった。
「そこまで帰りたいかぁ~。わかった、いいよ~」
「え?」
ヴィオル……お前、過去ラノベ学における召喚史で帰還を許す異世界人はあまりいないぞ。大抵は帰還が無理とか、目的を果たしてからとかだろう?
「そのかわり週1ならこれるかい? 日曜は学校って所は休みなんだろう。僕はこれでもちゃんと君の国の情勢を調べてきたんだからね。違うとはいわさないよ」
「……話が旨いと思ったよ。」
というかお前さ、魔王討伐が週1でいいのかよ。
「ふぅ~ん、お疲れ様」
軽い口調で俺をねぎらうのは、俺と正反対のイケメン、ヴィオルだ。中性的な彫の深い顔に、日本人にはあり得ない紫色のつややかな髪をなびかせ、白い西洋の騎士服を纏っている。
先に説明しておくが、ヴィオルはコスプレで騎士服を着ているわけではない。正真正銘の騎士だ。そして変わった色の髪は地毛である。つまり日本人でもなく外国人でもない。
異世界人である。
「人が重い話をしたというのに、軽く返しやがって」
「晴臣、外見なんて大したスペックじゃない。君は我が国最強の対魔王騎士だ。もっと自信をもちなよ」
パチンとウィンクをしながらヴィオルが言う。男にウィンクされても複雑な気分だ。
「イケメンのお前に言われても、嫌みにしか聞こえねぇ」
「ぇ~これでも僕は君を尊敬してるのに。まぁ、そんな事より今日の仕事なんだけど」
「そんな事よりって、お前な」
まぁいい。こいつに相談した俺がばかだった。とっとと仕事モードになろう。
そう、仕事といえばなのだが。
俺はパラリアという異世界で週1だが騎士をしている。騎士といっていいか微妙だと思うが。
話はつい1か月ほど前にさかのぼる。
俺は突然、異世界から来たヴィオルに、ジャンジャカジャーンという謎の効果音と共に部屋に侵入され、こう告げられた。
「おめでとう。君は今日からパラリア国の姫専属騎士に任命された。さ、僕と一緒にきたまえ!」
あまりのバカ発言に即、通報する予定だっだが、『姫』専属騎士という言葉がひっかかり判断が遅れてしまった。気が付いたら転送され異世界にいたのである。最初は某テーマパークかと思ったが、竜やら魔法やらを見せつけられ、疑う事は諦めた。
──異世界って本当にあったんだな。
俺はこの時、ちょっぴりだが期待をしていた。だってお姫様の騎士。完全にラノベうっはー世界だ。ここまできたら姫は美少女に違いない。いやそうじゃないと、やってけない。と、勝手に妄想広げていたのだ。その時である。
「ヴィオル、この方なの?」
突如、少女が俺の前に現れた。鈴のような高い綺麗な声だ。
「姫、また勝手に転移魔法をお使いになられましたね? あなたを護衛する方々の髪量を気にされた事がございますか? 禿げるとクレームを受けるのは僕なんですよ?」
「もぅ!! 私の話をきいてるの? この方が私の騎士なのかって聞いてるの!!」
「相変わらず人の話をききませんね。そうですよ」
「やっぱり!!」
キラキラと少女の目が輝いた。歳は俺とそう変わらないが、品があり、知的で優し気な碧眼は見るだけで心が癒される。彼女をみた瞬間、心が躍った。ああ、俺はこの為に生きてきたんだと。だが、その喜びはストンと地に落ちた。
お姫様から見た俺は、醜くないだろうか? いや醜い。彼女からすれば、俺は豚だ。しかもヴィオルが隣にいるせいで、俺の醜さがより際立っている。だんだんと俺は怖くなってきた。
「騎士様? どうして下を向いていらっしゃるの?」
どうしてって、俺を見る女子は、開口一番に目を合わせるなと言うからです……という俺の気持ちなどお構いなしに、青い瞳が俺の顔を覗き込んできた。あまりにも詰め寄ってくるため、無意識にのけぞると、さらに距離を詰められた。おかしい。この子は絶対におかしい。もしかしてすごい近眼なんだろうか?
「素敵……私の理想の騎士様だわ」
「え……ステキ? リソウ?」
頬を紅潮させて言う少女を見て、ドキリと心臓が飛び跳ねあがった。でもダメだ。これは詐欺に違いない。だって俺だ。話がうますぎる。異世界では素敵、理想は『不細工は死ね』という意味かもしれない。
「ヴィオル、よくやったわ。騎士王を探すのは手間だったでしょう」
「ええ、苦労しました。まさか異世界にいるとは思いませんでしたが」
キラっと白い歯を輝かせながらヴィオルが言う。ふふふと互いに微笑み合うヴィオルと姫はお伽話にでてくる姫と王子のようだ。いや、実際一人はお姫様だけど。
「いけない。私としたことが、騎士様に挨拶もせず」
お姫様はドレスの裾を持つと、俺の前に立ち、西洋風のお辞儀をする。
「初めまして、私はパラリア国、第一王女、リスティといいます。騎士様のお名前は?」
「晴臣だけど……」
「ハルオミ……ハルオミ様、ハルオミ……」
リスティが俺の名前をかみしめるように言う。
「ハルオミ様、あなたをずっとお待ちしておりました。どうか魔王からパラリア国を救ってください」
え? 魔王?
「無理です」
「なぜですか」「なぜだい?」
二人が同時に声をそろえて言う。その視線がつらい。でもダメなものはダメだ。俺は現実をよくわかっている。
「経験もないですし、体系的に戦闘は……」
「え? そうですの?」
「はははっ、大丈夫だよ、晴臣。君のその体系こそ勝機さ。僕にとってはチャームポイントにしか見えないよ」
はぁ? 何がチャームポイントだ! イケメンにはわからんだろうがな、俺はそのポイントで人生を苦労してんだ。しかも勝機とか正気か?
「おい、血迷いフォローはやめろ。俺は断ってんだよ」
「血迷いって……君、面白いね」
うるさい、ヴィオル。俺は間違っていないはずだ。誰だって自分の命が一番大事だろう?
「そんな……。ハルオミ様なら快諾してくださると思ったのに」
う……リスティの視線がいたい。だが命には代えられない。俺はそれはそれはやんわりとオブラートに包んで断った。そして俺を連れてきたヴィオルには、学業で忙しいと適当な理由をつけ、帰せと強く言ってやった。
「そこまで帰りたいかぁ~。わかった、いいよ~」
「え?」
ヴィオル……お前、過去ラノベ学における召喚史で帰還を許す異世界人はあまりいないぞ。大抵は帰還が無理とか、目的を果たしてからとかだろう?
「そのかわり週1ならこれるかい? 日曜は学校って所は休みなんだろう。僕はこれでもちゃんと君の国の情勢を調べてきたんだからね。違うとはいわさないよ」
「……話が旨いと思ったよ。」
というかお前さ、魔王討伐が週1でいいのかよ。
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