4 / 6
晴臣、「自分の知ってる渾身の一撃と違う」と心から突っ込む
しおりを挟む「フッ、魔王。この『僕』がいる事をわすれてないか?」
軽やかにヴィオルが俺を庇うように立つと、腰の剣を抜きガーンと跳ね返した。
「ちっ、またしてもお前か」
跳ね返された気弾を、魔王がおもちゃでもはたくかのように、パシっとかき消す。
──やべぇ、なんかレベルが違いすぎる。というかヴィオル、お前一人でいいんじゃないの?
「晴臣、力をかしてくれないか?」
ヴィオルが背中を向けたまま俺に声を掛ける。
「はぁ? 共闘なら御免だぞ。お前、一人でなんとかできるだろ?」
むしろ俺、必要要素皆無だろう?
「ハルオミ様、私も助太刀いたします。引き続きその偉大なお力を!」
リスティが魔法の杖のようなものを取り出し構えている。いや、リスティ、俺は本当になんにもしてなかったでしょ? 状況みてました?
「私とヴィオルで奴に隙を作ります。その隙に貴方の拳を彼の心臓に!」
リスティはそういうと魔王めがけ飛び出した。あとからヴィオルも軽やかに跳躍し魔王へと剣を振りかざす。
──まって、俺、心臓に拳って言われても。人なんて殴ったこともないのにっ!!
俺はなにがなんだかわからず、リスティ達の後を追って走り出した。はっきりいってとろい。二人に全然ついてけない。俺が魔王の近くにたどりつく前に、二人はすでに激しい死闘を始めていた。
ヴィオルの剣が魔王の気弾を受け止め、剣光をあげて跳ね返している。合間を縫うかのように、リスティが炎の魔法を次々と魔王に投げつけていた。
─速い。
あまりの速さに俺の眼が追いついていない。 というか俺、本当にお呼びなの?
「今です!」「今だ!」
二人が同時に俺に叫んだ。魔王が「しまった……油断をした」といい跪いている。本当に今なのか俺には全くわからないが。できる事はたった一つ。
─拳を魔王の心臓に!!
俺は、めいいっぱい魔王の心臓めがけ、腕を振りあげた。コントローラ効果で熱くなった腕から大量の汗が同時に飛び散る。
「魔王ぉぉぉぉ! 俺のパンチをくらえぇぇぇぇぇぇ!!!!」
パス~ぅんぅぅぅぅ・・・・・。
二人の攻撃と違い俺のパンチはぬるかった。音からしてなんか違う。なんだよ、コントローラー使えば俺の筋力あがるんじゃなかったのか。パンチされた魔王の身体がへこむとか、穴が空くとか、そういう感じのやつを期待してたのに。俺の知ってる渾身の一撃じゃないぞ。
「あ……あ……」
魔王は俺のパンチがあまりにもそっけなくて唖然としたらしい。口を開けたまま固まっている。そして何故かおそるおそる胸元へと手を伸ばし……
「ぎやぁぁぁぁぁぁぁ、汗?? 臭っ、汚っ……いやぁぁぁぁん」
──え? いやぁん?
魔王がおかまのような声をあげたかと思うと、ボンと音がし魔王の周囲が煙のようなもので包まれた。
「魔王が弱体化しましたわ」
「やったな! 晴臣」
リスティとヴィオルが親指を立てて勝利のポーズを送ってくる。でも俺が何をしたというのだろうか。魔王に汗臭い、汚いと言われただけのような気がする。むしろ俺の精神にダメージがきてるんだが。
「いったい魔王はどうなったんだ」
「あぁ、魔王は凄いナルシストでね。汚いもの、不細工なものが体につくと拒絶反応を起こし弱体化するんだよ。いやぁ、戦闘においては彼と僕は互角だけど、魔族は体力がトップクラスだからね。結局はじりびんで負けてしまうんだ。しかも僕の汗は全く通じなくてね。困ってたんだよ」
爽やかな汗を光らせ、ヴィオルがいう。
だが、ヴィオルよ。それは遠回しに、俺って不細工で汚いって言ってないか? 言ってるよな?
「無礼ですよヴィオル! 魔王は確かにナルシストですが、汚いもの臭いものが苦手なのではありません。アグゥ~様のお体の汗という聖なる力に弱いのです。いわば聖水。はぁ、私もその汗に触れてみたい」
リスティが顔を赤くして言う。いや聖水とか……それはそれで怖いです。お姫様。
「おのれぇぇぇ! またしても辱めおったなぁ! 許さないっ。許さないんだから」
煙幕から魔王が怨嗟の声をあげる──にしてはなんだか声が高い。
「おやおやこれは。思った以上の効果がでたようだね」
ヴィオルが黒くほほ笑みながら言う。やがて魔王が煙幕からでてき──
「ええええええええええ。女の子?」
しかも銀髪貧乳美少女……めっちゃ好みです──っあ、元、男だった。
0
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜
ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」
「街の井戸も空っぽです!」
無能な王太子による身勝手な婚約破棄。
そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを!
ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。
追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!?
優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。
一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。
「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——!
今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける!
※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。
魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~
仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。 そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。
しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。
ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。
武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」 登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。
これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる