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一章
1ー6 一期一会の中国茶屋 白瑞香(はくずいこう)の巻
しおりを挟むトラブルは重ねて来るものだ。
猫は本当にすばしっこく、ヒールで追いつくには一苦労だ。
中華街は近いがしばらくして雨も降って来た。
全くもって散々だ。
「コホッ、ゴホッ」
(薬早く飲まなきゃ)
桃花は傘を取り出そうとバッグの中の折りたたみ傘を探そうとすると
猫は雨が降って来たせいかその場からピョンと移動し、また素早く駆けていく。
「は、早い」
しかし、思いのほか確かここは桃花源が近い。
案の定猫は店の中に入って行ったので桃花は傘を開くのを諦め店に入る。
「いらっしゃいませ」
そう挨拶した店員は桃花の姿に驚く。
「迎様、大丈夫ですか?タオルお持ちいたします」
店員は慌てて奥からタオルやブランケットを持ってきて渡す。
「ありがとうございます。また猫ちゃんに買い物袋持っていかれたのですが。ゴホッ」
と事情を話しながら咳が出る。
「またですか?すみません。
お待ちください。探してきますのでこちらにお掛けになってください」
「ありがとうございます」
タオルで髪や服を拭くと奥から店員は猫の首根っこを掴んでビニール袋を桃花に返した。
「本当にうちの子がすみませんでした」
「いえ。猫ちゃんスカーフ付けてたから可愛いくて見ていたら袋気になったみたいで」
可愛かったから気にしないで下さいと言うと
「行儀が悪いのでせめて家猫と周りに分かるようにしなければと着せたんですけど嫌がる次第で全くどうしたものか、困ったものです」
だからやっぱり不機嫌だったのか。
「首輪やお洋服嫌がる子いるみたいですね」
桃花も小さい頃猫を飼った経験があるので大変さは分かる。
やはり慣れるのに数日はかかったみたいだ。
毛が長い子だからスカーフが窮屈なのだろうか。
嫌がる子は金属部分が重かったり、鈴を嫌がる子もいるらしい。
「こういったシュシュタイプはどうでしょう」
長毛には隠れそうだが軽いタイプの首輪を提案する。
「成る程。ありがとうございます。買い直しが必要みたいですね」
「はい。ゴホッゴホッ」
咳が止まない桃花を店員は心配そうに見て声を掛ける。
「迎様、病院には」
「行こうと思ってはいるんですけど、なかなか。
ニュースの件ご存知ですか?」
「はい・・・」
店員の肩は落ちている。
「ですよね。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
桃花はもう営業ではないが頭を下げる。
「頭を上げてください」
店員はあなたは悪くないと言ってくれているようだ。
「でも」
商品回収の時、売り場担当者に言われた言葉を思い出す。
ダンボールに商品を詰めて車で回収している時、彼らが話している事を聞いたのだ。
「大丈夫とね丸山中華さんは。餃子美味しかったとに」
「まあ残念かけどさあ、うちだってどげんかせんと。クレーム入っとるとこっちも頭下げんといけんけんなあ。それよりも次何かあの空いたスペース埋めなん。味元(あじげん)餃子でよかよね」
「うん。それがよかな」
「こげんか事なら最初から全国展開してるやつ入れとけば間違いなかったなあ」
「悔しい」
ポタっと目からポタポタ涙が落ちる。
短い時間だけど必死にしがみついていたつもりだったが結局何もかも無駄だった。
「ゴホッ」
痰が絡みまたヒューっと気管が狭くなる。
すると背中をさっきの猫が身体を寄せて触れて来た感じがした。
イタズラっぽい表情はどこへやら「大丈夫」と言わんばかりにポスッと桃花の太ももに来て桃花の肩にポンッと手を置いて母猫みたいにペロッと桃花の頬を舐める。
慰めてくれたのだろうか。
目を開けるとそこには小さな女の子が桃花の頭を撫でていた。
「え!?」
突然見知らぬ女の子の登場に桃花は驚いた。
「明明(ミンミン)、何をしてるんですか!」
店員は前に猫を叱った時よりもさらに厳しく女の子を叱ったのでそれにも桃花は驚いたが女の子にはそんな事では動じない。
「いいじゃないの緑仙。桃花が傷ついているのよ。
慰めてやる事も出来きないなんてそんなんだから
レディーにモテないのよ」
黒く長い髪にかわいい鮮やかなピンクの漢服を着た子は女児とは似つかない憎まれ口を店員に向ける。
「やはり、あなたはイタズラが過ぎます。
丸焼きにすべきでしょうか」
(え、え?)
何やら店員が物騒な事を言いだした。
「桃花、連れ回してごめんなさいなの。
今日も桃プリン作っているのよ。だから」
何やらかわいい女の子が膝の上で気を遣ってくれているらしい。
でも桃花の頭は彼女の頭とお尻に注意が向かってた。
猫みたいな耳に尻尾が目の前でぴょこぴょこしてる。
「うん大丈夫。ちょっとタンマ・・・」
と桃花言うのが精一杯だ。
それだけ言うとその場にもたれ意識を手放した。
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