長崎あやかし茶房 桃花源(とうかげん)へいらっしゃい 〜中国茶は人を救う〜 

麻麻(あさあさ)

文字の大きさ
6 / 43
一章

1ー6 一期一会の中国茶屋 白瑞香(はくずいこう)の巻

しおりを挟む

トラブルは重ねて来るものだ。

猫は本当にすばしっこく、ヒールで追いつくには一苦労だ。

中華街は近いがしばらくして雨も降って来た。

全くもって散々だ。

「コホッ、ゴホッ」
(薬早く飲まなきゃ)
桃花は傘を取り出そうとバッグの中の折りたたみ傘を探そうとすると

猫は雨が降って来たせいかその場からピョンと移動し、また素早く駆けていく。


「は、早い」

しかし、思いのほか確かここは桃花源が近い。

案の定猫は店の中に入って行ったので桃花は傘を開くのを諦め店に入る。

「いらっしゃいませ」
そう挨拶した店員は桃花の姿に驚く。

「迎様、大丈夫ですか?タオルお持ちいたします」
店員は慌てて奥からタオルやブランケットを持ってきて渡す。

「ありがとうございます。また猫ちゃんに買い物袋持っていかれたのですが。ゴホッ」
と事情を話しながら咳が出る。

「またですか?すみません。
お待ちください。探してきますのでこちらにお掛けになってください」

「ありがとうございます」
タオルで髪や服を拭くと奥から店員は猫の首根っこを掴んでビニール袋を桃花に返した。

「本当にうちの子がすみませんでした」
「いえ。猫ちゃんスカーフ付けてたから可愛いくて見ていたら袋気になったみたいで」

可愛かったから気にしないで下さいと言うと
「行儀が悪いのでせめて家猫と周りに分かるようにしなければと着せたんですけど嫌がる次第で全くどうしたものか、困ったものです」

だからやっぱり不機嫌だったのか。

「首輪やお洋服嫌がる子いるみたいですね」
桃花も小さい頃猫を飼った経験があるので大変さは分かる。
やはり慣れるのに数日はかかったみたいだ。

毛が長い子だからスカーフが窮屈なのだろうか。

嫌がる子は金属部分が重かったり、鈴を嫌がる子もいるらしい。

「こういったシュシュタイプはどうでしょう」
長毛には隠れそうだが軽いタイプの首輪を提案する。
「成る程。ありがとうございます。買い直しが必要みたいですね」

「はい。ゴホッゴホッ」
咳が止まない桃花を店員は心配そうに見て声を掛ける。

「迎様、病院には」
「行こうと思ってはいるんですけど、なかなか。
ニュースの件ご存知ですか?」

「はい・・・」
店員の肩は落ちている。
「ですよね。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

桃花はもう営業ではないが頭を下げる。

「頭を上げてください」
店員はあなたは悪くないと言ってくれているようだ。

「でも」
商品回収の時、売り場担当者に言われた言葉を思い出す。

ダンボールに商品を詰めて車で回収している時、彼らが話している事を聞いたのだ。

「大丈夫とね丸山中華さんは。餃子美味しかったとに」
「まあ残念かけどさあ、うちだってどげんかせんと。クレーム入っとるとこっちも頭下げんといけんけんなあ。それよりも次何かあの空いたスペース埋めなん。味元(あじげん)餃子でよかよね」
「うん。それがよかな」
「こげんか事なら最初から全国展開してるやつ入れとけば間違いなかったなあ」


「悔しい」
ポタっと目からポタポタ涙が落ちる。

短い時間だけど必死にしがみついていたつもりだったが結局何もかも無駄だった。

「ゴホッ」
痰が絡みまたヒューっと気管が狭くなる。

すると背中をさっきの猫が身体を寄せて触れて来た感じがした。

イタズラっぽい表情はどこへやら「大丈夫」と言わんばかりにポスッと桃花の太ももに来て桃花の肩にポンッと手を置いて母猫みたいにペロッと桃花の頬を舐める。

慰めてくれたのだろうか。
目を開けるとそこには小さな女の子が桃花の頭を撫でていた。

「え!?」
突然見知らぬ女の子の登場に桃花は驚いた。

「明明(ミンミン)、何をしてるんですか!」
店員は前に猫を叱った時よりもさらに厳しく女の子を叱ったのでそれにも桃花は驚いたが女の子にはそんな事では動じない。

「いいじゃないの緑仙。桃花が傷ついているのよ。
慰めてやる事も出来きないなんてそんなんだから
レディーにモテないのよ」

黒く長い髪にかわいい鮮やかなピンクの漢服を着た子は女児とは似つかない憎まれ口を店員に向ける。

「やはり、あなたはイタズラが過ぎます。
丸焼きにすべきでしょうか」

(え、え?)
何やら店員が物騒な事を言いだした。

「桃花、連れ回してごめんなさいなの。
今日も桃プリン作っているのよ。だから」

何やらかわいい女の子が膝の上で気を遣ってくれているらしい。

でも桃花の頭は彼女の頭とお尻に注意が向かってた。

猫みたいな耳に尻尾が目の前でぴょこぴょこしてる。

「うん大丈夫。ちょっとタンマ・・・」
と桃花言うのが精一杯だ。

それだけ言うとその場にもたれ意識を手放した。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

毒小町、宮中にめぐり逢ふ

鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました🌸生まれつき体に毒を持つ、藤原氏の娘、菫子(すみこ)。毒に詳しいという理由で、宮中に出仕することとなり、帝の命を狙う毒の特定と、その首謀者を突き止めよ、と命じられる。 生まれつき毒が効かない体質の橘(たちばなの)俊元(としもと)と共に解決に挑む。 しかし、その調査の最中にも毒を巡る事件が次々と起こる。それは菫子自身の秘密にも関係していて、ある真実を知ることに……。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

秋月の鬼

凪子
キャラ文芸
時は昔。吉野の国の寒村に生まれ育った少女・常盤(ときわ)は、主都・白鴎(はくおう)を目指して旅立つ。領主秋月家では、当主である京次郎が正室を娶るため、国中の娘から身分を問わず花嫁候補を募っていた。 安曇城へたどりついた常盤は、美貌の花魁・夕霧や、高貴な姫君・容花、おきゃんな町娘・春日、おしとやかな令嬢・清子らと出会う。 境遇も立場もさまざまな彼女らは候補者として大部屋に集められ、その日から当主の嫁選びと称する試練が始まった。 ところが、その試練は死者が出るほど苛酷なものだった……。 常盤は試練を乗り越え、領主の正妻の座を掴みとれるのか?

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

雪嶺後宮と、狼王の花嫁

由香
キャラ文芸
後宮に降る雪は、呪いではなく嘆きだった。 巫女として献上された少女セツナは、 封じられた狼王の“花嫁”としての前世を思い出す。 人と妖、政と信仰の狭間で、 彼女が選ぶのは従属ではなく均衡。 雪嶺を舞台に描く、異種婚姻×後宮伝承譚。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...