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同人誌即売会
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「うわあ……やっぱり人が沢山いるね……」
私が目の前の光景に圧倒されて呟くと、雛乃が答える。
「そりゃあ、ゴールデンウイークだしねー。人はいるよねー」
私と雛乃は今日、同人誌即売会の会場に来ている。吾妻さん――祐樹さんが出店する事になり、売り子として手伝いをする為だ。
大きなイベントホールの中は、既に出店者や客で溢れ返っていた。私は、スマホで配置図を見ながら、雛乃と一緒に祐樹さんの出店ブースを探す。
「おーい、こっちこっち!」
聞き慣れた声が聞こえる。見ると、少し離れたブースで、祐樹さんとその親友の高瀬剛志さんが手を振っていた。祐樹さんは、白いシャツに紺色のジャケットを羽織っていて、カッコいい。
私は速足で二人の方に近付くと、笑顔で挨拶をした。
「おはようございます、祐樹さん、高瀬さん」
「おはよう、紗季さん」
祐樹さんが私に挨拶をすると、高瀬さんがニヤニヤしながら祐樹さんに言った。
「へえ……お前、紗季さんに下の名前で呼ばれてるのか」
「ああ、羨ましいだろ?」
祐樹さんは冗談めかしてそう言うけれど、私は恥ずかしさに俯いてしまった。
雛乃も交えて改めて四人で挨拶した後、祐樹さんは微笑んで言った。
「三人共、今日は手伝いに来てくれてありがとう。今日一日、楽しんでいこう!」
◆ ◆ ◆
会場の設営が終わると、同人誌の販売が開始される時刻となり、私と祐樹さんがブースの受付に腰掛けた。ブースが狭い為、二人ずつ交代で売り子をする事になったのだ。ちなみに、男二人が受付にいると華が無いという事で、男女一組で売り子をするという作戦が取られている。
「……あがつ、じゃなくて、祐樹さんって、全年齢対象の漫画も描いてるんですね」
私は、同人誌の一冊を手に取り、パラパラと捲りながら言った。今回、私達が販売するのは、少年向け同人誌、少女向け同人誌、キーホルダーの三種類。同人誌は、どれも全年齢対象。その他にも、無料配布の名刺を用意してある。
「ああ、今回は特別。色んな年齢層に俺の作品を手に取ってほしいから、全年齢で描いたんだよ」
「そうなんですね……」
私は売れない小説家だけど、吾妻さんは売れない漫画家だ。雑誌に数回しか作品が掲載されていない。それでも、雑誌に掲載してもらえるというのは、凄い事だと思う。
「あ、そう言えば、俺、紗季さんの作品も読んだよ」
「え!?……ど、どうでした?」
私が勢いよく尋ねると、祐樹さんはニコリと笑って言った。
「うん、文章が綺麗で、純粋な恋愛方面のドキドキ感もあって、面白かったよ。今度、あの作品中に出て来るプレイをしてみようか」
「プッ、プレッ……!!」
私は、顔を赤くした。作品中のプレイは想像だけで書いたもので、実際するとなると覚悟がいる。
祐樹さんは、フッと笑って言った。
「冗談だよ。紗季さんに嫌われたくないからね。無理なプレイを要求したりしないよ」
私は、不機嫌な表情を作りながら言った。
「……そういう風に揶揄うの、やめて下さい……」
祐樹さんは、そんな私を見て笑った後、私の持っている同人誌に目を向けて、不安そうに言った。
「……その漫画、紗季さん、どう思った?」
私は、本を眺めながら答える。
「……キャラの心情がひしひしと伝わって来て、ストーリーの続きを読みたくなります。絵もロマンチックで、すごく素敵です」
祐樹さんは、目を細めて呟いた。
「……ありがとう、紗季さん」
「……同人誌、売れると良いですね」
「うん。……楽しんでもらえると良いなあ。ずっと、夢だったんだよ。俺の描いた漫画を、沢山の人に手に取ってもらうのが」
そう言って宙に視線を向ける祐樹さんの横顔が、輝いて見えた。
しばらくすると、男性客が二人ブースの前にやってきた。二人は、少年向けの同人誌をパラパラと捲ると、頷いて言った。
「これ、面白そうだな。買おうか」
「あ、ありがとうございます!」
私は、祐樹さんの声に負けないくらいの大きさで礼を言った。
二人の男性が立ち去ると、私は満面の笑みで祐樹さんに言った。
「早速売れましたね! 祐樹さんの作品が売れて嬉しいです!」
祐樹さんは、そんな私を見て一瞬目を見開いた後、ふわりと笑った。
「うん……ありがとう、紗季さん」
私が目の前の光景に圧倒されて呟くと、雛乃が答える。
「そりゃあ、ゴールデンウイークだしねー。人はいるよねー」
私と雛乃は今日、同人誌即売会の会場に来ている。吾妻さん――祐樹さんが出店する事になり、売り子として手伝いをする為だ。
大きなイベントホールの中は、既に出店者や客で溢れ返っていた。私は、スマホで配置図を見ながら、雛乃と一緒に祐樹さんの出店ブースを探す。
「おーい、こっちこっち!」
聞き慣れた声が聞こえる。見ると、少し離れたブースで、祐樹さんとその親友の高瀬剛志さんが手を振っていた。祐樹さんは、白いシャツに紺色のジャケットを羽織っていて、カッコいい。
私は速足で二人の方に近付くと、笑顔で挨拶をした。
「おはようございます、祐樹さん、高瀬さん」
「おはよう、紗季さん」
祐樹さんが私に挨拶をすると、高瀬さんがニヤニヤしながら祐樹さんに言った。
「へえ……お前、紗季さんに下の名前で呼ばれてるのか」
「ああ、羨ましいだろ?」
祐樹さんは冗談めかしてそう言うけれど、私は恥ずかしさに俯いてしまった。
雛乃も交えて改めて四人で挨拶した後、祐樹さんは微笑んで言った。
「三人共、今日は手伝いに来てくれてありがとう。今日一日、楽しんでいこう!」
◆ ◆ ◆
会場の設営が終わると、同人誌の販売が開始される時刻となり、私と祐樹さんがブースの受付に腰掛けた。ブースが狭い為、二人ずつ交代で売り子をする事になったのだ。ちなみに、男二人が受付にいると華が無いという事で、男女一組で売り子をするという作戦が取られている。
「……あがつ、じゃなくて、祐樹さんって、全年齢対象の漫画も描いてるんですね」
私は、同人誌の一冊を手に取り、パラパラと捲りながら言った。今回、私達が販売するのは、少年向け同人誌、少女向け同人誌、キーホルダーの三種類。同人誌は、どれも全年齢対象。その他にも、無料配布の名刺を用意してある。
「ああ、今回は特別。色んな年齢層に俺の作品を手に取ってほしいから、全年齢で描いたんだよ」
「そうなんですね……」
私は売れない小説家だけど、吾妻さんは売れない漫画家だ。雑誌に数回しか作品が掲載されていない。それでも、雑誌に掲載してもらえるというのは、凄い事だと思う。
「あ、そう言えば、俺、紗季さんの作品も読んだよ」
「え!?……ど、どうでした?」
私が勢いよく尋ねると、祐樹さんはニコリと笑って言った。
「うん、文章が綺麗で、純粋な恋愛方面のドキドキ感もあって、面白かったよ。今度、あの作品中に出て来るプレイをしてみようか」
「プッ、プレッ……!!」
私は、顔を赤くした。作品中のプレイは想像だけで書いたもので、実際するとなると覚悟がいる。
祐樹さんは、フッと笑って言った。
「冗談だよ。紗季さんに嫌われたくないからね。無理なプレイを要求したりしないよ」
私は、不機嫌な表情を作りながら言った。
「……そういう風に揶揄うの、やめて下さい……」
祐樹さんは、そんな私を見て笑った後、私の持っている同人誌に目を向けて、不安そうに言った。
「……その漫画、紗季さん、どう思った?」
私は、本を眺めながら答える。
「……キャラの心情がひしひしと伝わって来て、ストーリーの続きを読みたくなります。絵もロマンチックで、すごく素敵です」
祐樹さんは、目を細めて呟いた。
「……ありがとう、紗季さん」
「……同人誌、売れると良いですね」
「うん。……楽しんでもらえると良いなあ。ずっと、夢だったんだよ。俺の描いた漫画を、沢山の人に手に取ってもらうのが」
そう言って宙に視線を向ける祐樹さんの横顔が、輝いて見えた。
しばらくすると、男性客が二人ブースの前にやってきた。二人は、少年向けの同人誌をパラパラと捲ると、頷いて言った。
「これ、面白そうだな。買おうか」
「あ、ありがとうございます!」
私は、祐樹さんの声に負けないくらいの大きさで礼を言った。
二人の男性が立ち去ると、私は満面の笑みで祐樹さんに言った。
「早速売れましたね! 祐樹さんの作品が売れて嬉しいです!」
祐樹さんは、そんな私を見て一瞬目を見開いた後、ふわりと笑った。
「うん……ありがとう、紗季さん」
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