23 / 40
不安
しおりを挟む
翌朝、私は祐樹さんにスマホでメッセージを送ってみた。文面は『昨日はごめんなさい、話したいので、時間が出来たら電話をくれると嬉しいです』。
私は今日休みなので、祐樹さんから電話が掛かって来ても取る事が出来る。祐樹さんも、今日はレストランのシフトが休みのはずだ。すぐにでも電話をくれるかもしれない。
そう思っていたけれど、昼頃になっても、祐樹さんからの連絡は無かった。どうしたんだろう。何か用事があってスマホを見られないのかな。
……もしかして、私、避けられてる?
私は、急に不安になった。祐樹さんは、せっかく雑誌掲載の事を喜んで私に報告してくれたのに、私がそれに水を差すような事を言ったから……。
そんな考えが頭を過った時、スマホがJポップのメロディを奏でた。祐樹さんから電話が来た時のメロディだ。
私が慌ててスワイプすると、祐樹さんの声が聞こえる。
「ごめん、紗季さん。気付くのが遅くなって。実は今、病院から帰った所で……ってごめん! 充電が切れそうなの忘れてた! また後で電話する!」
そう言うと、祐樹さんは通話を終えた。
スマホを握り締めながら、私は心臓がバクバクするのを感じる。今、祐樹さん、病院って言った? もしかして、祐樹さん、怪我か病気で病院に行ったの? 今体調は大丈夫なの?
私は、居ても立っても居られなくなった。そして、私は大急ぎで着替えてバッグを手にすると、自宅を飛び出した。
ペーパードライバーの私は、電車で祐樹さんのマンションの最寄り駅まで向かう。そして、電車を降りると、全速力で祐樹さんのマンションまで走った。病院から帰った所って言っていたから、今祐樹さんは自宅にいるはず。
祐樹さんに会いたい。祐樹さんの無事を確認したい。ただそれだけを思って、私は約五分間走り続けた。
祐樹さんの部屋の前に立つと、私は息を切らしながらインターフォンを押す。すると、すぐに祐樹さんが出てくれた。
「え、紗季さん!? ちょっと待ってて!」
インターフォン越しにそう言うと、すぐに祐樹さんはドアを開けてくれた。パーカーにジーンズ姿の祐樹さんは、目を丸くして言う。
「どうしたの、紗季さん。そんなに急いで。……そう言えば、ついさっき電話したけど、紗季さん、出てくれなくて……」
私は、息を整えながら言った。
「ご、ごめんなさい……。祐樹さんが、病院に行ったって言うから、私、心配になって……。電車に乗ってたから、電話は、気付かなかったです……」
祐樹さんは、一瞬ポカンとした後、ふわりと笑って言った。
「ごめんね、心配かけて。……中で話をしようか」
◆ ◆ ◆
リビングに入ると、祐樹さんはアイスコーヒーを作ってくれた。そして、二人共席に着くと、祐樹さんは話し出す。
「今日俺が病院に行ったのはね、睦月さんの付き添いだったんだ」
「付き添い?」
話を聞くところによると、祐樹さんのお兄さん――智一さんの恋人である睦月さんには、持病があるらしい。いつもは智一さんが病院まで付き添うのだけど、今日は智一さんにどうしても外せない用事があり、代わりに祐樹さんが付き添ったとの事。
話を聞いた私は、ホッと息を吐く。
「……良かったです。祐樹さんに何事も無くて」
そんな私を見た祐樹さんは、微笑んで言った。
「心配させてごめんね。……でも、ありがとう。駆けつけてくれて、嬉しかった。昨日は、俺、浮かれて紗季さんの気持ちを考えてなかったなーって思ってたから」
「違うんです!!」
私は、大きな声を出していた。
「私が……私が勝手に、焦って、嫉妬していたんです。祐樹さんは着実に実績を積み上げているのに、私は一度しか成果をあげていなくて……。祐樹さんに追いつきたいと思っても、ぐすっ……残業ばっかりで小説を書く気力も無くて……。ひっく、祐樹さんに離されていくのが怖くて、悔しくて、そんな自分が嫌になって……」
もう、何を言っているのか自分でも分からなかった。私は、涙をボロボロ零しながら、ただただ言葉を絞り出していた。
祐樹さんは、席を立つと私に近付き、そっと後ろから私を抱き締めた。
「そっか……紗季さん、仕事を頑張ってるんだね。話してくれて、ありがとう」
私は、胸が張り裂けそうになった。どうしてそんな優しい言葉を掛けてくれるの? 私は、あなたに八つ当たりしたのに……。
「う……うああああ……!!」
私は、大声を上げて泣き続けた。
しばらくして泣き止んだ私は、私を後ろから抱き締めたままの祐樹さんの腕に触れて言った。
「……ありがとうございます、祐樹さん。もう大丈夫です」
祐樹さんは、私から手を離すと、笑顔で言った。
「紗季さんが泣き止んでくれて良かった。俺はどんな紗季さんでも好きだけど、やっぱり紗季さんには笑っていてほしいから」
本当にこの人は……。私は、笑って言った。
「祐樹さんは、本当に優しいですね。……でも、私が八つ当たりした事には変わりありません。お詫びと言ってはなんですけど、何か祐樹さんの為に出来る事はありませんか?」
私が聞くと、祐樹さんは少し考えてから、ニンマリと笑って言った。
「じゃあ、例の『勉強』に付き合ってもらおうかな」
私は今日休みなので、祐樹さんから電話が掛かって来ても取る事が出来る。祐樹さんも、今日はレストランのシフトが休みのはずだ。すぐにでも電話をくれるかもしれない。
そう思っていたけれど、昼頃になっても、祐樹さんからの連絡は無かった。どうしたんだろう。何か用事があってスマホを見られないのかな。
……もしかして、私、避けられてる?
私は、急に不安になった。祐樹さんは、せっかく雑誌掲載の事を喜んで私に報告してくれたのに、私がそれに水を差すような事を言ったから……。
そんな考えが頭を過った時、スマホがJポップのメロディを奏でた。祐樹さんから電話が来た時のメロディだ。
私が慌ててスワイプすると、祐樹さんの声が聞こえる。
「ごめん、紗季さん。気付くのが遅くなって。実は今、病院から帰った所で……ってごめん! 充電が切れそうなの忘れてた! また後で電話する!」
そう言うと、祐樹さんは通話を終えた。
スマホを握り締めながら、私は心臓がバクバクするのを感じる。今、祐樹さん、病院って言った? もしかして、祐樹さん、怪我か病気で病院に行ったの? 今体調は大丈夫なの?
私は、居ても立っても居られなくなった。そして、私は大急ぎで着替えてバッグを手にすると、自宅を飛び出した。
ペーパードライバーの私は、電車で祐樹さんのマンションの最寄り駅まで向かう。そして、電車を降りると、全速力で祐樹さんのマンションまで走った。病院から帰った所って言っていたから、今祐樹さんは自宅にいるはず。
祐樹さんに会いたい。祐樹さんの無事を確認したい。ただそれだけを思って、私は約五分間走り続けた。
祐樹さんの部屋の前に立つと、私は息を切らしながらインターフォンを押す。すると、すぐに祐樹さんが出てくれた。
「え、紗季さん!? ちょっと待ってて!」
インターフォン越しにそう言うと、すぐに祐樹さんはドアを開けてくれた。パーカーにジーンズ姿の祐樹さんは、目を丸くして言う。
「どうしたの、紗季さん。そんなに急いで。……そう言えば、ついさっき電話したけど、紗季さん、出てくれなくて……」
私は、息を整えながら言った。
「ご、ごめんなさい……。祐樹さんが、病院に行ったって言うから、私、心配になって……。電車に乗ってたから、電話は、気付かなかったです……」
祐樹さんは、一瞬ポカンとした後、ふわりと笑って言った。
「ごめんね、心配かけて。……中で話をしようか」
◆ ◆ ◆
リビングに入ると、祐樹さんはアイスコーヒーを作ってくれた。そして、二人共席に着くと、祐樹さんは話し出す。
「今日俺が病院に行ったのはね、睦月さんの付き添いだったんだ」
「付き添い?」
話を聞くところによると、祐樹さんのお兄さん――智一さんの恋人である睦月さんには、持病があるらしい。いつもは智一さんが病院まで付き添うのだけど、今日は智一さんにどうしても外せない用事があり、代わりに祐樹さんが付き添ったとの事。
話を聞いた私は、ホッと息を吐く。
「……良かったです。祐樹さんに何事も無くて」
そんな私を見た祐樹さんは、微笑んで言った。
「心配させてごめんね。……でも、ありがとう。駆けつけてくれて、嬉しかった。昨日は、俺、浮かれて紗季さんの気持ちを考えてなかったなーって思ってたから」
「違うんです!!」
私は、大きな声を出していた。
「私が……私が勝手に、焦って、嫉妬していたんです。祐樹さんは着実に実績を積み上げているのに、私は一度しか成果をあげていなくて……。祐樹さんに追いつきたいと思っても、ぐすっ……残業ばっかりで小説を書く気力も無くて……。ひっく、祐樹さんに離されていくのが怖くて、悔しくて、そんな自分が嫌になって……」
もう、何を言っているのか自分でも分からなかった。私は、涙をボロボロ零しながら、ただただ言葉を絞り出していた。
祐樹さんは、席を立つと私に近付き、そっと後ろから私を抱き締めた。
「そっか……紗季さん、仕事を頑張ってるんだね。話してくれて、ありがとう」
私は、胸が張り裂けそうになった。どうしてそんな優しい言葉を掛けてくれるの? 私は、あなたに八つ当たりしたのに……。
「う……うああああ……!!」
私は、大声を上げて泣き続けた。
しばらくして泣き止んだ私は、私を後ろから抱き締めたままの祐樹さんの腕に触れて言った。
「……ありがとうございます、祐樹さん。もう大丈夫です」
祐樹さんは、私から手を離すと、笑顔で言った。
「紗季さんが泣き止んでくれて良かった。俺はどんな紗季さんでも好きだけど、やっぱり紗季さんには笑っていてほしいから」
本当にこの人は……。私は、笑って言った。
「祐樹さんは、本当に優しいですね。……でも、私が八つ当たりした事には変わりありません。お詫びと言ってはなんですけど、何か祐樹さんの為に出来る事はありませんか?」
私が聞くと、祐樹さんは少し考えてから、ニンマリと笑って言った。
「じゃあ、例の『勉強』に付き合ってもらおうかな」
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる