小説家と漫画家の淫らなレッスン

ミクラ レイコ

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不安

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 翌朝、私は祐樹さんにスマホでメッセージを送ってみた。文面は『昨日はごめんなさい、話したいので、時間が出来たら電話をくれると嬉しいです』。

 私は今日休みなので、祐樹さんから電話が掛かって来ても取る事が出来る。祐樹さんも、今日はレストランのシフトが休みのはずだ。すぐにでも電話をくれるかもしれない。



 そう思っていたけれど、昼頃になっても、祐樹さんからの連絡は無かった。どうしたんだろう。何か用事があってスマホを見られないのかな。



 ……もしかして、私、避けられてる? 



 私は、急に不安になった。祐樹さんは、せっかく雑誌掲載の事を喜んで私に報告してくれたのに、私がそれに水を差すような事を言ったから……。



 そんな考えが頭を過った時、スマホがJポップのメロディを奏でた。祐樹さんから電話が来た時のメロディだ。

 私が慌ててスワイプすると、祐樹さんの声が聞こえる。



「ごめん、紗季さん。気付くのが遅くなって。実は今、病院から帰った所で……ってごめん! 充電が切れそうなの忘れてた! また後で電話する!」



 そう言うと、祐樹さんは通話を終えた。



 スマホを握り締めながら、私は心臓がバクバクするのを感じる。今、祐樹さん、病院って言った? もしかして、祐樹さん、怪我か病気で病院に行ったの? 今体調は大丈夫なの?

 私は、居ても立っても居られなくなった。そして、私は大急ぎで着替えてバッグを手にすると、自宅を飛び出した。







 ペーパードライバーの私は、電車で祐樹さんのマンションの最寄り駅まで向かう。そして、電車を降りると、全速力で祐樹さんのマンションまで走った。病院から帰った所って言っていたから、今祐樹さんは自宅にいるはず。

 祐樹さんに会いたい。祐樹さんの無事を確認したい。ただそれだけを思って、私は約五分間走り続けた。







 祐樹さんの部屋の前に立つと、私は息を切らしながらインターフォンを押す。すると、すぐに祐樹さんが出てくれた。



「え、紗季さん!? ちょっと待ってて!」



 インターフォン越しにそう言うと、すぐに祐樹さんはドアを開けてくれた。パーカーにジーンズ姿の祐樹さんは、目を丸くして言う。



「どうしたの、紗季さん。そんなに急いで。……そう言えば、ついさっき電話したけど、紗季さん、出てくれなくて……」



 私は、息を整えながら言った。



「ご、ごめんなさい……。祐樹さんが、病院に行ったって言うから、私、心配になって……。電車に乗ってたから、電話は、気付かなかったです……」



 祐樹さんは、一瞬ポカンとした後、ふわりと笑って言った。



「ごめんね、心配かけて。……中で話をしようか」



       ◆ ◆ ◆



 リビングに入ると、祐樹さんはアイスコーヒーを作ってくれた。そして、二人共席に着くと、祐樹さんは話し出す。



「今日俺が病院に行ったのはね、睦月さんの付き添いだったんだ」

「付き添い?」



 話を聞くところによると、祐樹さんのお兄さん――智一さんの恋人である睦月さんには、持病があるらしい。いつもは智一さんが病院まで付き添うのだけど、今日は智一さんにどうしても外せない用事があり、代わりに祐樹さんが付き添ったとの事。



 話を聞いた私は、ホッと息を吐く。



「……良かったです。祐樹さんに何事も無くて」



 そんな私を見た祐樹さんは、微笑んで言った。



「心配させてごめんね。……でも、ありがとう。駆けつけてくれて、嬉しかった。昨日は、俺、浮かれて紗季さんの気持ちを考えてなかったなーって思ってたから」

「違うんです!!」



 私は、大きな声を出していた。



「私が……私が勝手に、焦って、嫉妬していたんです。祐樹さんは着実に実績を積み上げているのに、私は一度しか成果をあげていなくて……。祐樹さんに追いつきたいと思っても、ぐすっ……残業ばっかりで小説を書く気力も無くて……。ひっく、祐樹さんに離されていくのが怖くて、悔しくて、そんな自分が嫌になって……」



 もう、何を言っているのか自分でも分からなかった。私は、涙をボロボロ零しながら、ただただ言葉を絞り出していた。



 祐樹さんは、席を立つと私に近付き、そっと後ろから私を抱き締めた。



「そっか……紗季さん、仕事を頑張ってるんだね。話してくれて、ありがとう」



 私は、胸が張り裂けそうになった。どうしてそんな優しい言葉を掛けてくれるの? 私は、あなたに八つ当たりしたのに……。



「う……うああああ……!!」



 私は、大声を上げて泣き続けた。







 しばらくして泣き止んだ私は、私を後ろから抱き締めたままの祐樹さんの腕に触れて言った。



「……ありがとうございます、祐樹さん。もう大丈夫です」



 祐樹さんは、私から手を離すと、笑顔で言った。



「紗季さんが泣き止んでくれて良かった。俺はどんな紗季さんでも好きだけど、やっぱり紗季さんには笑っていてほしいから」



 本当にこの人は……。私は、笑って言った。



「祐樹さんは、本当に優しいですね。……でも、私が八つ当たりした事には変わりありません。お詫びと言ってはなんですけど、何か祐樹さんの為に出来る事はありませんか?」



 私が聞くと、祐樹さんは少し考えてから、ニンマリと笑って言った。



「じゃあ、例の『勉強』に付き合ってもらおうかな」
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