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覚悟しておけよ
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紗季に相談した翌朝、雛乃は『riposo』へと足を運んだ。今日雛乃は休日だったが、早く高瀬に直接謝りたくて来てしまったのだ。
裏口から店内に入る雛乃。廊下を歩いて行くと、バックヤードから声がする。高瀬と吾妻祐樹の声だ。雛乃は、こっそりとバックヤードの中を覗いた。
「……それにしても、そんな事になってるとは思わなかったな」
高瀬が、溜息を吐いて言う。祐樹は、ペットボトルのお茶を飲みながら答えた。
「ああ、どう転ぶかまだ分からないけどな。事態を甘く見ない方が良さそうだ」
バックヤードに沈黙が流れる。何? 二人して何の話をしてるの? 雛乃は、ドアの隙間から二人を覗いたまま、困惑していた。
しばらくの沈黙の後、高瀬が言う。
「ここを辞めるとしたら、いつ頃になるのかな……」
雛乃は、頭が真っ白になった。『riposo』を辞める? 高瀬が? もう、気軽に高瀬と会う事が出来なくなるの?
雛乃は、二人に声を掛ける事無く、フラフラと店を出て行った。
どうやって帰ったのか覚えてない。気が付いたら、雛乃は自宅アパートに帰っていた。ベッドに横になり、雛乃は考える。
どうして自分は、こんなに高瀬と離れる事が嫌なんだろう。親友だから? でも、吾妻だって自分の親友だ。吾妻と離れる事になっても、自分はこれ程動揺しないと思う。
……いや、そんな事は、後から考えればいい。今は、自分がどうするべきかを考えよう。高瀬が『riposo』を辞めると聞いたショックで忘れてたけど、自分が今日レストランに行ったのは高瀬に謝る為だ。
そうだ、そうだよ。高瀬に謝る事も出来ないまま高瀬と離れるなんて嫌だ。
雛乃はガバリとベッドから起き上がると、ギュッと拳を握った。
◆ ◆ ◆
その日の午後三時。高瀬が休憩をしにバックヤードに入ると、そこにはいるはずの無い雛乃がいた。
「うおっ、びっくりした! どうした、雛乃。お前、今日休みだろ?」
雛乃は、パイプ椅子から立ち上がると、深々と頭を下げて謝った。
「ごめん、高瀬! 昨日、あんなの事をチャラいなんて言って。……私、本当は高瀬が真面目で優しい奴だって、分かってるから!」
高瀬は、一瞬きょとんとした顔をした後、フッと笑って言った。
「何だ、そんな事か。……気にしてないよ。俺の方こそごめんな。お前の気持ちを無視するような事を言って」
その言葉を聞いて、雛乃はボロボロと泣き始めた。高瀬は、慌てて雛乃に近付く。
「ど、どうした、雛乃! そんなに俺の言葉に傷付いたのか!?」
雛乃は、首を横に振って答えた。
「違うの。高瀬は優しいなって……ホントに、高瀬と友達になれて良かった。……嫌だよ。高瀬と離れるなんて、嫌だよ……!」
「は? 離れるって何だよ。絶交したわけでも無いのに」
高瀬が、わけが分からないという顔をする。雛乃は、涙を拭いながら言う。
「……だって、今朝、店を辞めるみたいな話、バックヤードでしてたじゃん……!」
「あ、あれを聞いてたのか!?」
高瀬は、困ったような顔で髪を掻いた後、真っ直ぐと雛乃の方を見て言った。
「雛乃。俺は、『riposo』を辞めないから。あの時の話については詳しく言えないけど、俺はお前がいる限り、『riposo』で働くから」
「え……」
雛乃は、きょとんとした顔で高瀬を見つめた。高瀬は、不敵な笑みを浮かべると、雛乃に問いかける。
「雛乃、俺がどうして店長の事を諦めろって言ったか分かるか?」
「え? それは、親友の私が苦しい恋をするのを見ていられなかったからじゃ……」
「違うな」
高瀬は、雛乃にずいっと顔を近付けて言った。
「お前には、店長じゃなくて俺を好きになってほしかったからだよ」
「へ?」
「俺は、お前の事が好きなんだ」
バックヤードに沈黙が流れる。高瀬の言葉の意味を理解した雛乃の顔が、ぶわっと熱くなった。
「す、すすす、好き!? 好きって、恋愛って意味の好き!?」
口をパクパクさせる雛乃を、高瀬は意地悪そうな笑顔で見つめる。そして、雛乃から顔を離すと、はっきりと言った。
「ああ、もう待つのはやめた。これからは、お前に好きになってもらえるよう思いっきりアプローチするから、覚悟しておけよ」
「え、え、えええええ!!」
雛乃の頭を、高瀬の言葉がグルグルと回る。高瀬が私の事を好き? そんなの、考えた事も無かった。私は一体、どうすればいいの?
そして雛乃は――バックヤードを飛び出した。
「雛乃!?」
「ご、ごめん、高瀬。今回の件については、ゆっくり考えさせてー!!」
店を飛び出し、駐車場への道を走りながら、雛乃は自身の胸が高鳴るのを感じた。高瀬の告白にはびっくりしたけど、嫌じゃ無かった。
雛乃が新しい恋に目覚めるのも、遠い話では無いかもしれない。
裏口から店内に入る雛乃。廊下を歩いて行くと、バックヤードから声がする。高瀬と吾妻祐樹の声だ。雛乃は、こっそりとバックヤードの中を覗いた。
「……それにしても、そんな事になってるとは思わなかったな」
高瀬が、溜息を吐いて言う。祐樹は、ペットボトルのお茶を飲みながら答えた。
「ああ、どう転ぶかまだ分からないけどな。事態を甘く見ない方が良さそうだ」
バックヤードに沈黙が流れる。何? 二人して何の話をしてるの? 雛乃は、ドアの隙間から二人を覗いたまま、困惑していた。
しばらくの沈黙の後、高瀬が言う。
「ここを辞めるとしたら、いつ頃になるのかな……」
雛乃は、頭が真っ白になった。『riposo』を辞める? 高瀬が? もう、気軽に高瀬と会う事が出来なくなるの?
雛乃は、二人に声を掛ける事無く、フラフラと店を出て行った。
どうやって帰ったのか覚えてない。気が付いたら、雛乃は自宅アパートに帰っていた。ベッドに横になり、雛乃は考える。
どうして自分は、こんなに高瀬と離れる事が嫌なんだろう。親友だから? でも、吾妻だって自分の親友だ。吾妻と離れる事になっても、自分はこれ程動揺しないと思う。
……いや、そんな事は、後から考えればいい。今は、自分がどうするべきかを考えよう。高瀬が『riposo』を辞めると聞いたショックで忘れてたけど、自分が今日レストランに行ったのは高瀬に謝る為だ。
そうだ、そうだよ。高瀬に謝る事も出来ないまま高瀬と離れるなんて嫌だ。
雛乃はガバリとベッドから起き上がると、ギュッと拳を握った。
◆ ◆ ◆
その日の午後三時。高瀬が休憩をしにバックヤードに入ると、そこにはいるはずの無い雛乃がいた。
「うおっ、びっくりした! どうした、雛乃。お前、今日休みだろ?」
雛乃は、パイプ椅子から立ち上がると、深々と頭を下げて謝った。
「ごめん、高瀬! 昨日、あんなの事をチャラいなんて言って。……私、本当は高瀬が真面目で優しい奴だって、分かってるから!」
高瀬は、一瞬きょとんとした顔をした後、フッと笑って言った。
「何だ、そんな事か。……気にしてないよ。俺の方こそごめんな。お前の気持ちを無視するような事を言って」
その言葉を聞いて、雛乃はボロボロと泣き始めた。高瀬は、慌てて雛乃に近付く。
「ど、どうした、雛乃! そんなに俺の言葉に傷付いたのか!?」
雛乃は、首を横に振って答えた。
「違うの。高瀬は優しいなって……ホントに、高瀬と友達になれて良かった。……嫌だよ。高瀬と離れるなんて、嫌だよ……!」
「は? 離れるって何だよ。絶交したわけでも無いのに」
高瀬が、わけが分からないという顔をする。雛乃は、涙を拭いながら言う。
「……だって、今朝、店を辞めるみたいな話、バックヤードでしてたじゃん……!」
「あ、あれを聞いてたのか!?」
高瀬は、困ったような顔で髪を掻いた後、真っ直ぐと雛乃の方を見て言った。
「雛乃。俺は、『riposo』を辞めないから。あの時の話については詳しく言えないけど、俺はお前がいる限り、『riposo』で働くから」
「え……」
雛乃は、きょとんとした顔で高瀬を見つめた。高瀬は、不敵な笑みを浮かべると、雛乃に問いかける。
「雛乃、俺がどうして店長の事を諦めろって言ったか分かるか?」
「え? それは、親友の私が苦しい恋をするのを見ていられなかったからじゃ……」
「違うな」
高瀬は、雛乃にずいっと顔を近付けて言った。
「お前には、店長じゃなくて俺を好きになってほしかったからだよ」
「へ?」
「俺は、お前の事が好きなんだ」
バックヤードに沈黙が流れる。高瀬の言葉の意味を理解した雛乃の顔が、ぶわっと熱くなった。
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「ああ、もう待つのはやめた。これからは、お前に好きになってもらえるよう思いっきりアプローチするから、覚悟しておけよ」
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「雛乃!?」
「ご、ごめん、高瀬。今回の件については、ゆっくり考えさせてー!!」
店を飛び出し、駐車場への道を走りながら、雛乃は自身の胸が高鳴るのを感じた。高瀬の告白にはびっくりしたけど、嫌じゃ無かった。
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