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第8話「認可と陰謀」
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春の陽光が高い窓から差し込む聖印管理庁の一室で、リオは静かに通知を待っていた。
昨日の審査バトルの余韻がまだ体に残っている。強大なグラン=ヴァルドの力を制御し、会場を沸かせたあの高揚と、審査官たちの警戒や不安の入り混じったまなざし――。リオの心は、誇りと共に重い責任感で満ちていた。
グラン=ヴァルドのカードを掌に包むと、竜の落ち着いた声が心に響く。
『リオ、お前の力が、ついに認められたようだな』
(でも……グラン=ヴァルド。もし俺が力に呑まれたり、他の誰かがこのカードを奪おうとしたら……俺は、ちゃんと“守れる”のかな)
『その迷いこそが、お前を強くする。力を持つ者は、その重みと向き合い続けねばならぬ。私も、お前と同じように、過去の過ちに向き合ってきた』
扉が控えめにノックされる。
「リオ・バルド君。審査の結果が出ました。会議室へお越しください」
若い役人に案内され、リオは大きな机を囲む会議室に入る。
そこには管理庁の上層部や審査官たちがずらりと並んでいた。
審査長が静かに言葉を発する。
「リオ・バルド君。君の《封印竜グラン=ヴァルド》カードは、公認クリエイター規格のすべてを満たしていると認められた。
――本日をもって、君は正式な“公認カードクリエイター”となる」
その瞬間、リオの心は歓喜に弾んだ。だが同時に、審査長や他の上層部の面々がそれぞれに複雑な視線を向けていることも感じていた。
「しかし――」
別の審査官が、やや強い口調で続ける。
「伝説級カードが一個人の手に独占される前例は、王国史上でもほとんどない。万が一、制御が利かなくなれば、国全体が災厄に晒される恐れがある」
他の幹部も「監視体制を強化すべきだ」「場合によっては一時的にカードを管理庁で預かるべき」などと意見を述べる。
審査長がリオに視線を戻す。
「君の“責任”は大きい。今後、定期的な監査と報告義務が課せられる。
自覚をもって、力を使いなさい」
リオは真剣な眼差しでうなずく。
「はい。俺は――グラン=ヴァルドと一緒に、この力を正しく使うことを約束します」
会議室を出ると、廊下でレーベンがリオを迎えてくれた。
「合格だな。おめでとう。君の実力なら、どんな場所でも通用するさ。ただし、気を抜くな。王都は夢と危険が隣り合わせだからな」
レーベンの口調は優しかったが、どこか憂いも滲んでいた。
ロビーで一息ついていると、ユリエルやシュトラたちが駆け寄ってきた。
「やったわね、リオ! まさか本当に伝説カードが認可されるなんて、私も見たことないわ」
ユリエルは瞳を輝かせ、シュトラも静かに「認可されたからこそ、これからは本物のライバルだな」と言った。
(認められた……本当に、ここから俺の冒険が始まるんだ)
だが、胸の奥には新たな不安も生まれていた。
グラン=ヴァルドの声が心でささやく。
『リオ。伝説の力は、多くの者の欲望をも呼び寄せる。油断はするな』
リオはカードをポケットにしまい、深呼吸した。
その夜、リオは庁舎の宿泊室で静かにカードを見つめていた。
自分の力が、もしかしたら村やミナ、そして世界中の人々に影響を与えてしまうのかもしれない――そんな責任の重さを、これまで以上に強く感じていた。
(俺がもし弱い心を見せたら、この力は災いになるのかもしれない……)
「……そう思うのは正しい」
――突然、背後から声がした。
振り向くと、影のように黒いコートをまとった謎の人物が、部屋の隅に立っていた。
リオはとっさに警戒して距離を取る。
「誰だ……!?」
「心配はいらない。私は“敵”じゃない」
男の目は暗闇に沈んでいたが、声には不思議な重みがあった。
「王都にはさまざまな勢力がいる。“表”の管理庁やギルドだけじゃない。“裏”では伝説級カードや幻獣を密売し、力を金や権力に換える者たちもいる。
お前のようなカードクリエイターが、これから狙われない保証はない」
「……どういう意味だよ」
男は一歩近づき、リオの目をじっと見つめた。
「本当の敵は、管理庁の規則や審査官じゃない。外――この国の“裏”の世界にいる。“闇のカード密売組織”や、王都の地下で暗躍する者たちだ。
お前が本当にカードと仲間を守りたいなら、力の責任だけでなく、知恵と覚悟も持て」
その言葉を残し、男は闇の中に消えた。
リオはしばし呆然と立ち尽くした。
グラン=ヴァルドが優しく語りかける。
『リオ、選ばれし者は孤独だ。だが、お前は決して一人ではない。私も、お前を信じている』
窓の外では王都の夜景が輝いている。
だが、その煌めきの下に、数えきれない闇がひそんでいることも、リオははっきりと感じていた。
(俺は、どうやってこの力と責任を抱え、進めばいいんだろう……)
ユリエルやシュトラ、レーベン――
そして、遠い村の母やミナの顔が脳裏に浮かぶ。
(みんなのために、絶対に負けない。どんな“闇”があっても、俺は……)
リオは拳を握りしめ、静かに新たな決意を固めた。
――冒険の舞台は、ついに王都の光と闇、その両方に広がり始める。
昨日の審査バトルの余韻がまだ体に残っている。強大なグラン=ヴァルドの力を制御し、会場を沸かせたあの高揚と、審査官たちの警戒や不安の入り混じったまなざし――。リオの心は、誇りと共に重い責任感で満ちていた。
グラン=ヴァルドのカードを掌に包むと、竜の落ち着いた声が心に響く。
『リオ、お前の力が、ついに認められたようだな』
(でも……グラン=ヴァルド。もし俺が力に呑まれたり、他の誰かがこのカードを奪おうとしたら……俺は、ちゃんと“守れる”のかな)
『その迷いこそが、お前を強くする。力を持つ者は、その重みと向き合い続けねばならぬ。私も、お前と同じように、過去の過ちに向き合ってきた』
扉が控えめにノックされる。
「リオ・バルド君。審査の結果が出ました。会議室へお越しください」
若い役人に案内され、リオは大きな机を囲む会議室に入る。
そこには管理庁の上層部や審査官たちがずらりと並んでいた。
審査長が静かに言葉を発する。
「リオ・バルド君。君の《封印竜グラン=ヴァルド》カードは、公認クリエイター規格のすべてを満たしていると認められた。
――本日をもって、君は正式な“公認カードクリエイター”となる」
その瞬間、リオの心は歓喜に弾んだ。だが同時に、審査長や他の上層部の面々がそれぞれに複雑な視線を向けていることも感じていた。
「しかし――」
別の審査官が、やや強い口調で続ける。
「伝説級カードが一個人の手に独占される前例は、王国史上でもほとんどない。万が一、制御が利かなくなれば、国全体が災厄に晒される恐れがある」
他の幹部も「監視体制を強化すべきだ」「場合によっては一時的にカードを管理庁で預かるべき」などと意見を述べる。
審査長がリオに視線を戻す。
「君の“責任”は大きい。今後、定期的な監査と報告義務が課せられる。
自覚をもって、力を使いなさい」
リオは真剣な眼差しでうなずく。
「はい。俺は――グラン=ヴァルドと一緒に、この力を正しく使うことを約束します」
会議室を出ると、廊下でレーベンがリオを迎えてくれた。
「合格だな。おめでとう。君の実力なら、どんな場所でも通用するさ。ただし、気を抜くな。王都は夢と危険が隣り合わせだからな」
レーベンの口調は優しかったが、どこか憂いも滲んでいた。
ロビーで一息ついていると、ユリエルやシュトラたちが駆け寄ってきた。
「やったわね、リオ! まさか本当に伝説カードが認可されるなんて、私も見たことないわ」
ユリエルは瞳を輝かせ、シュトラも静かに「認可されたからこそ、これからは本物のライバルだな」と言った。
(認められた……本当に、ここから俺の冒険が始まるんだ)
だが、胸の奥には新たな不安も生まれていた。
グラン=ヴァルドの声が心でささやく。
『リオ。伝説の力は、多くの者の欲望をも呼び寄せる。油断はするな』
リオはカードをポケットにしまい、深呼吸した。
その夜、リオは庁舎の宿泊室で静かにカードを見つめていた。
自分の力が、もしかしたら村やミナ、そして世界中の人々に影響を与えてしまうのかもしれない――そんな責任の重さを、これまで以上に強く感じていた。
(俺がもし弱い心を見せたら、この力は災いになるのかもしれない……)
「……そう思うのは正しい」
――突然、背後から声がした。
振り向くと、影のように黒いコートをまとった謎の人物が、部屋の隅に立っていた。
リオはとっさに警戒して距離を取る。
「誰だ……!?」
「心配はいらない。私は“敵”じゃない」
男の目は暗闇に沈んでいたが、声には不思議な重みがあった。
「王都にはさまざまな勢力がいる。“表”の管理庁やギルドだけじゃない。“裏”では伝説級カードや幻獣を密売し、力を金や権力に換える者たちもいる。
お前のようなカードクリエイターが、これから狙われない保証はない」
「……どういう意味だよ」
男は一歩近づき、リオの目をじっと見つめた。
「本当の敵は、管理庁の規則や審査官じゃない。外――この国の“裏”の世界にいる。“闇のカード密売組織”や、王都の地下で暗躍する者たちだ。
お前が本当にカードと仲間を守りたいなら、力の責任だけでなく、知恵と覚悟も持て」
その言葉を残し、男は闇の中に消えた。
リオはしばし呆然と立ち尽くした。
グラン=ヴァルドが優しく語りかける。
『リオ、選ばれし者は孤独だ。だが、お前は決して一人ではない。私も、お前を信じている』
窓の外では王都の夜景が輝いている。
だが、その煌めきの下に、数えきれない闇がひそんでいることも、リオははっきりと感じていた。
(俺は、どうやってこの力と責任を抱え、進めばいいんだろう……)
ユリエルやシュトラ、レーベン――
そして、遠い村の母やミナの顔が脳裏に浮かぶ。
(みんなのために、絶対に負けない。どんな“闇”があっても、俺は……)
リオは拳を握りしめ、静かに新たな決意を固めた。
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