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第10話「最初のカード大会」
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王都リュミエールの春は、花の香りと活気に満ちていた。
大通りには色とりどりの旗が飾られ、広場の中心に建てられた巨大なアリーナの前では、早朝から長蛇の列ができている。
今日――ついに、リオは王都初の公式カードバトル大会に出場するのだ。
「ついに来たな……」
リオはアリーナ前の広場で深呼吸をした。胸元のカードケースには、精製したての自作カードと、グラン=ヴァルドのカードがしっかりと収まっている。
大会パンフレットには、名だたるギルドのエースや、新星クリエイターの名前がずらりと並び、実力派からクセ者までさまざまだ。
(どんな相手が来ても、俺は俺らしく戦うだけだ)
受付を終えると、控室にはすでに多くの参加者たちが集まっていた。
ざわめきの中、リオの姿を見つけたのは、銀髪の少女ユリエルだった。
「やっぱり来たのね、リオ」
彼女は余裕の笑みでリオに手を振る。その隣には、シュトラも静かに頷いている。
「お前が出ないわけないと思っていたよ」
「二人とも……今日は負けないから!」
リオは自然と笑顔になる。ギルドのしがらみもなく、互いに自分の力で挑む者同士。
そこにあるのは、純粋な勝負への敬意と、友情の予感だった。
開会式が始まると、アリーナは観客の歓声に包まれる。
参加者たちは順に名乗りを上げ、各自のカードを披露。
伝説級の幻獣カードを手にした強者や、独自の戦術を誇るクリエイターが次々と現れる。
リオの最初の対戦相手は、体格の大きな青年クリエイターだった。
彼は「火山獅子(ボルケーノ・レオン)」のカードを誇らしげに掲げ、観客の注目を集めている。
「よろしくな、小僧。王都の本当の“実力”を見せてやるよ」
リオはまっすぐにグラン=ヴァルドのカードを構えた。
(どんな相手でも――自分を信じるだけだ)
公式ルールに則り、デッキをシャッフル。
互いにマナカウンターをセットし、審判の合図でバトルが始まる。
【バトル第1戦】
先攻はリオ。初期手札を引き、マナ5でスタート。
初手は「森の守り手」を召喚し、堅実に守りを固める。
相手は2マナで「火山獅子」をフィールドへ。
序盤から攻撃力の高い幻獣で圧力をかけてくる。
「火山の咆哮! 全体攻撃!」
火山獅子の特殊スキルが発動、リオの守り手は炎に包まれて倒れる。
観客席からは「さすがボルケーノのケイ!」「一撃で落としたぞ!」と歓声が上がる。
(やるな……!)
リオはすぐにマナを溜め、「小鳥の精霊」で動きをかく乱しながら、ターンを稼ぐ。
そして3ターン目、ついにグラン=ヴァルドを召喚。
会場にどよめきが走る。
「出たぞ……あの伝説の竜!」
グラン=ヴァルドが黒曜の鱗を輝かせてフィールドに現れると、火山獅子すらひるむ。
だが相手も負けていない。追加の魔法カード「灼熱の障壁」で防御を強化、グラン=ヴァルドの咆哮を正面から受け止めてきた。
激しい攻防の末、リオは冷静に状況を見極め、最後は「封印炎」で火山獅子を一掃することに成功した。
(グラン=ヴァルド……ありがとう!)
『お前の判断が勝利を呼び込んだ。だが、油断するな――この会場にはまだ“未知”が潜んでいる』
1戦目を突破したリオだったが、トーナメントはまだ始まったばかりだった。
【バトル第2戦】
次の相手は、見た目は穏やかな青年。だが「水霧の幻蝶(ミストバタフライ)」を操るテクニシャンだった。
細やかな連続スペルでリオの動きを封じ、「幻惑」のフィールド効果でグラン=ヴァルドの攻撃力を大きく削いでくる。
「バトルは力だけじゃない。制御と工夫、そして冷静な判断力だよ」
リオは必死で流れを変えようとするが、巧妙な罠に引っかかり、ついにグラン=ヴァルドがバトルフィールドから消されてしまう。
敗北の瞬間、リオは唇をかみしめた。
(負けた……)
観客席からはため息やねぎらいの声が上がる。
だが、リオは自分の敗北を受け止めていた。悔しさよりも、不思議な清々しさがあった。
(俺には、まだ足りないものがある。――もっと強くならなくちゃ)
控室へ戻ると、ユリエルが「負けた顔してるわね」と声をかけてきた。
「でも、いいバトルだったよ。あの状況から、あそこまで粘れたのはすごい。……リオ、次はもっと上手くやれるはず」
シュトラも「敗北は恥じゃない。今日の経験が、明日の勝利を作る」と励ましてくれた。
リオはうなずき、二人と固い握手を交わした。
(ユリエルも、シュトラも、ライバルであり仲間なんだな)
その時、観客席の通路から懐かしい声が響いた。
「リオ――!」
振り向くと、そこにはミナがいた。村を出て以来の再会。
リオは驚き、思わず駆け寄る。
「ミナ! なんでここに?」
「大会の噂を聞いて……ずっと、あんたのこと見てたんだから。勝ったり負けたりして、ちょっとだけ成長した顔してる」
ミナはにこりと笑い、リオの肩をポンと叩く。
「村の頃のままだけど、少しだけ“大人の顔”になった気がするよ」
リオは照れくさそうにうつむいたが、ミナの声に背中を押された。
(俺はまだまだだけど、これからだ。負けて悔しくても、立ち上がってみせる――!)
グラン=ヴァルドのカードを胸元で握る。
竜の声が静かに響いた。
『人は敗北を知り、初めて本当の強さに気付くものだ。お前の歩みを、私は誇りに思う』
リオはまっすぐ前を見据えた。
「ありがとう、みんな……! 俺、もっと強くなって、必ずこの場所に帰ってくる!」
アリーナの外では夕暮れが王都を照らし、少年たちの冒険は、まだ始まったばかりだった。
大通りには色とりどりの旗が飾られ、広場の中心に建てられた巨大なアリーナの前では、早朝から長蛇の列ができている。
今日――ついに、リオは王都初の公式カードバトル大会に出場するのだ。
「ついに来たな……」
リオはアリーナ前の広場で深呼吸をした。胸元のカードケースには、精製したての自作カードと、グラン=ヴァルドのカードがしっかりと収まっている。
大会パンフレットには、名だたるギルドのエースや、新星クリエイターの名前がずらりと並び、実力派からクセ者までさまざまだ。
(どんな相手が来ても、俺は俺らしく戦うだけだ)
受付を終えると、控室にはすでに多くの参加者たちが集まっていた。
ざわめきの中、リオの姿を見つけたのは、銀髪の少女ユリエルだった。
「やっぱり来たのね、リオ」
彼女は余裕の笑みでリオに手を振る。その隣には、シュトラも静かに頷いている。
「お前が出ないわけないと思っていたよ」
「二人とも……今日は負けないから!」
リオは自然と笑顔になる。ギルドのしがらみもなく、互いに自分の力で挑む者同士。
そこにあるのは、純粋な勝負への敬意と、友情の予感だった。
開会式が始まると、アリーナは観客の歓声に包まれる。
参加者たちは順に名乗りを上げ、各自のカードを披露。
伝説級の幻獣カードを手にした強者や、独自の戦術を誇るクリエイターが次々と現れる。
リオの最初の対戦相手は、体格の大きな青年クリエイターだった。
彼は「火山獅子(ボルケーノ・レオン)」のカードを誇らしげに掲げ、観客の注目を集めている。
「よろしくな、小僧。王都の本当の“実力”を見せてやるよ」
リオはまっすぐにグラン=ヴァルドのカードを構えた。
(どんな相手でも――自分を信じるだけだ)
公式ルールに則り、デッキをシャッフル。
互いにマナカウンターをセットし、審判の合図でバトルが始まる。
【バトル第1戦】
先攻はリオ。初期手札を引き、マナ5でスタート。
初手は「森の守り手」を召喚し、堅実に守りを固める。
相手は2マナで「火山獅子」をフィールドへ。
序盤から攻撃力の高い幻獣で圧力をかけてくる。
「火山の咆哮! 全体攻撃!」
火山獅子の特殊スキルが発動、リオの守り手は炎に包まれて倒れる。
観客席からは「さすがボルケーノのケイ!」「一撃で落としたぞ!」と歓声が上がる。
(やるな……!)
リオはすぐにマナを溜め、「小鳥の精霊」で動きをかく乱しながら、ターンを稼ぐ。
そして3ターン目、ついにグラン=ヴァルドを召喚。
会場にどよめきが走る。
「出たぞ……あの伝説の竜!」
グラン=ヴァルドが黒曜の鱗を輝かせてフィールドに現れると、火山獅子すらひるむ。
だが相手も負けていない。追加の魔法カード「灼熱の障壁」で防御を強化、グラン=ヴァルドの咆哮を正面から受け止めてきた。
激しい攻防の末、リオは冷静に状況を見極め、最後は「封印炎」で火山獅子を一掃することに成功した。
(グラン=ヴァルド……ありがとう!)
『お前の判断が勝利を呼び込んだ。だが、油断するな――この会場にはまだ“未知”が潜んでいる』
1戦目を突破したリオだったが、トーナメントはまだ始まったばかりだった。
【バトル第2戦】
次の相手は、見た目は穏やかな青年。だが「水霧の幻蝶(ミストバタフライ)」を操るテクニシャンだった。
細やかな連続スペルでリオの動きを封じ、「幻惑」のフィールド効果でグラン=ヴァルドの攻撃力を大きく削いでくる。
「バトルは力だけじゃない。制御と工夫、そして冷静な判断力だよ」
リオは必死で流れを変えようとするが、巧妙な罠に引っかかり、ついにグラン=ヴァルドがバトルフィールドから消されてしまう。
敗北の瞬間、リオは唇をかみしめた。
(負けた……)
観客席からはため息やねぎらいの声が上がる。
だが、リオは自分の敗北を受け止めていた。悔しさよりも、不思議な清々しさがあった。
(俺には、まだ足りないものがある。――もっと強くならなくちゃ)
控室へ戻ると、ユリエルが「負けた顔してるわね」と声をかけてきた。
「でも、いいバトルだったよ。あの状況から、あそこまで粘れたのはすごい。……リオ、次はもっと上手くやれるはず」
シュトラも「敗北は恥じゃない。今日の経験が、明日の勝利を作る」と励ましてくれた。
リオはうなずき、二人と固い握手を交わした。
(ユリエルも、シュトラも、ライバルであり仲間なんだな)
その時、観客席の通路から懐かしい声が響いた。
「リオ――!」
振り向くと、そこにはミナがいた。村を出て以来の再会。
リオは驚き、思わず駆け寄る。
「ミナ! なんでここに?」
「大会の噂を聞いて……ずっと、あんたのこと見てたんだから。勝ったり負けたりして、ちょっとだけ成長した顔してる」
ミナはにこりと笑い、リオの肩をポンと叩く。
「村の頃のままだけど、少しだけ“大人の顔”になった気がするよ」
リオは照れくさそうにうつむいたが、ミナの声に背中を押された。
(俺はまだまだだけど、これからだ。負けて悔しくても、立ち上がってみせる――!)
グラン=ヴァルドのカードを胸元で握る。
竜の声が静かに響いた。
『人は敗北を知り、初めて本当の強さに気付くものだ。お前の歩みを、私は誇りに思う』
リオはまっすぐ前を見据えた。
「ありがとう、みんな……! 俺、もっと強くなって、必ずこの場所に帰ってくる!」
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