【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

文字の大きさ
14 / 101

第14話「伝説カード狩り事件」

しおりを挟む
 王都リュミエールの春は、活気と共に不穏な空気をまとっていた。
 近ごろ、街では「カード狩り」と呼ばれる集団による事件が相次いでいた。被害にあったのは、公認・未認可を問わず強力なカードを持つクリエイターたち。突然現れた複数の男たちに囲まれ、力ずくでカードを奪われる――そんな噂が日増しに広がっていた。

 

 ある朝、広場の掲示板には被害報告と警告が貼り出されていた。

 

 「未認可カード狩り、昨夜また発生!」「管理庁より通告:不審な集団に警戒を!」

 

 食堂で朝食をとるリオたち仲間の間にも、不安が広がっていた。

 

 「やっぱり……王都でも、こんなことが起きるんだな」

 

 カイがパンをちぎりながら苦い顔をする。
 ティアナはカップを両手で包み、「未認可カードって、精製に危険も多いけど……本当に誰も守ってくれないの?」とささやいた。

 

 「カードを狙うのは悪い奴だけじゃないわ。利用できるなら、誰だって手を出す」
 ユリエルが低く言う。「特に、伝説級が絡むと、みんな理性をなくすものよ」

 

 リオはグラン=ヴァルドのカードをふと見つめた。
 (俺のカードも……誰かの“欲望”を呼ぶものなのか?)

 

 仲間の沈黙を破るように、ミナがきっぱり言った。

 

 「でも、あんたのカードは絶対に誰にも渡さない! それに、こんな事件を見過ごしてちゃダメだよ。困ってる人がいるなら――」

 

 その言葉に背を押され、リオも強くうなずいた。

 

 「よし、俺たちで事件の正体を突き止めよう!」

 

 ◇

 

 リオたちは数日かけて、街中で聞き込みや見回りを重ねた。

 

 夜の裏路地、市場の喧騒、冒険者ギルドの酒場――
 どこでも「黒ずくめの集団」「顔を隠した男たち」「謎の札を使うリーダー」が目撃されていた。

 

 やがて、最新の被害者に話を聞くことができた。
 被害者は肩を落として語った。

 

 「突然、三人組が現れて……逃げても、妙な“拘束カード”を使われたんだ。俺の“雷獅子”も一発で封じられて、気が付いたらカードがなかった……。奴ら、普通の冒険者じゃない。あんな高位のカード、正規ルートじゃ手に入らないはずだ」

 

 リオは仲間たちと街角に集まり、状況を整理した。

 

 「事件の裏に、カードの流通に詳しい誰かがいる……?」

 

 「うーん。管理庁の正式な審査を経てないカードをピンポイントで狙ってるってことは……内部に情報を流してる奴がいるかも」
 ティアナが鋭く指摘する。

 

 「そうだな。俺たち、庁の記録室に忍び込んで調べてみよう」
 カイが提案する。

 

 夜、リオたちは人気の途絶えた管理庁の記録室に潜入した。
 ユリエルが警備の目を引き付け、シュトラが静かに錠前を解く。ティアナは資料の山を器用に整理し、カイは耳を澄ませて周囲の警戒を怠らない。

 

 リオは棚に並ぶ登録台帳をめくる。

 

 (……このリスト、妙だ。事件が起きた日付と、カード登録のデータが一致してる……。まるで“誰か”が、登録情報を外部に流してるみたいだ)

 

 その時、物音がした。

 

 「誰だ!」

 

 奥の暗がりから現れたのは、管理庁の制服を着た男だった。
 リオたちはとっさに身を隠すが、男はどこか焦った様子で記録台帳の一部を懐に隠し、素早く立ち去っていった。

 

 「怪しい……」
 ミナが小声でつぶやく。

 

 「あとを追おう!」
 リオの合図で、一同は夜の街へと駆け出す。

 

 男は人気のない路地へ入り、そこで黒ずくめの男たちと接触していた。
 彼らはまさに“カード狩り”の一味――管理庁の情報を使い、次々とターゲットを襲っていたのだ。

 

 「おい、あれを見ろ……!」

 

 ティアナがささやく。男たちは新たな獲物を待ち伏せている。

 

 リオは決意を固め、仲間たちと前へ進み出る。

 

 「待て!」

 

 男たちが振り向く。

 

 「チッ、ガキどもか……!」

 

 リオはカードケースからグラン=ヴァルドを構えた。
 仲間たちも次々とカードを取り出す。

 

 「カイ! 正面から突破だ!」

 

 「任せろ! 《雷牙狼ルガノス》――召喚!」

 

 カイのカードから雷を纏う狼が現れ、黒ずくめの男たちの前に立ちふさがる。
 ユリエルは冷静に「氷結魔法」で道を封じ、ティアナはサポートカードで仲間を強化する。

 

 リオはグラン=ヴァルドと心で語り合った。

 

 (俺たちのカードは、奪うためのものじゃない。守るためにあるんだ――!)

 

 『わかっている、リオ。お前の願いを、私が叶えよう』

 

 グラン=ヴァルドの咆哮が夜空に響く。
 黒衣の男たちは次々と幻獣を繰り出すが、仲間たちの連携の前に次第に劣勢となる。

 

 「もうやめろ! お前たちのやっていることは、絶対に許されない!」

 

 リオの叫びに、男たちは動揺する。
 一人がついに観念し、こう叫んだ。

 

 「俺たちは……管理庁の職員に命令されてやってただけだ! あいつが未認可カードのリストを回してきたんだ……!」

 

 騒ぎに気づいた近隣の衛士たちが駆け付け、男たちはそのまま捕えられた。
 逃げ出そうとした庁の男も現行犯で逮捕された。

 

 ◇

 

 事件はすぐさま王都の話題となり、管理庁の一部職員が「裏取引」に関与していた事実が大きく報じられた。
 リオたちは庁舎に呼ばれ、公式に感謝と謝意を伝えられるが、リオの胸は晴れなかった。

 

 (カードの力って……本当に、扱い方ひとつで人の心をも狂わせる)

 

 夜、仲間たちと静かに焚き火を囲む。

 

 「俺たちが守ったものは、たった一枚のカードじゃない。“信頼”や“希望”だったんだと思う」

 

 ユリエルがそっと頷く。

 

 「カードの闇と向き合う覚悟も、これからの旅には必要なんだね」

 

 グラン=ヴァルドの声が静かに響いた。

 

 『リオ。力を持つ者は、その力に溺れず、闇と向き合い続けなければならない。お前なら、必ず越えていける』

 

 リオは、仲間とともに決意を新たにした。

 

 (どんなに困難な道でも、仲間となら乗り越えられる。俺は、この力を“守るため”に使う――)

 

 王都の夜空には、星が静かにまたたいていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...