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第14話「伝説カード狩り事件」
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王都リュミエールの春は、活気と共に不穏な空気をまとっていた。
近ごろ、街では「カード狩り」と呼ばれる集団による事件が相次いでいた。被害にあったのは、公認・未認可を問わず強力なカードを持つクリエイターたち。突然現れた複数の男たちに囲まれ、力ずくでカードを奪われる――そんな噂が日増しに広がっていた。
ある朝、広場の掲示板には被害報告と警告が貼り出されていた。
「未認可カード狩り、昨夜また発生!」「管理庁より通告:不審な集団に警戒を!」
食堂で朝食をとるリオたち仲間の間にも、不安が広がっていた。
「やっぱり……王都でも、こんなことが起きるんだな」
カイがパンをちぎりながら苦い顔をする。
ティアナはカップを両手で包み、「未認可カードって、精製に危険も多いけど……本当に誰も守ってくれないの?」とささやいた。
「カードを狙うのは悪い奴だけじゃないわ。利用できるなら、誰だって手を出す」
ユリエルが低く言う。「特に、伝説級が絡むと、みんな理性をなくすものよ」
リオはグラン=ヴァルドのカードをふと見つめた。
(俺のカードも……誰かの“欲望”を呼ぶものなのか?)
仲間の沈黙を破るように、ミナがきっぱり言った。
「でも、あんたのカードは絶対に誰にも渡さない! それに、こんな事件を見過ごしてちゃダメだよ。困ってる人がいるなら――」
その言葉に背を押され、リオも強くうなずいた。
「よし、俺たちで事件の正体を突き止めよう!」
◇
リオたちは数日かけて、街中で聞き込みや見回りを重ねた。
夜の裏路地、市場の喧騒、冒険者ギルドの酒場――
どこでも「黒ずくめの集団」「顔を隠した男たち」「謎の札を使うリーダー」が目撃されていた。
やがて、最新の被害者に話を聞くことができた。
被害者は肩を落として語った。
「突然、三人組が現れて……逃げても、妙な“拘束カード”を使われたんだ。俺の“雷獅子”も一発で封じられて、気が付いたらカードがなかった……。奴ら、普通の冒険者じゃない。あんな高位のカード、正規ルートじゃ手に入らないはずだ」
リオは仲間たちと街角に集まり、状況を整理した。
「事件の裏に、カードの流通に詳しい誰かがいる……?」
「うーん。管理庁の正式な審査を経てないカードをピンポイントで狙ってるってことは……内部に情報を流してる奴がいるかも」
ティアナが鋭く指摘する。
「そうだな。俺たち、庁の記録室に忍び込んで調べてみよう」
カイが提案する。
夜、リオたちは人気の途絶えた管理庁の記録室に潜入した。
ユリエルが警備の目を引き付け、シュトラが静かに錠前を解く。ティアナは資料の山を器用に整理し、カイは耳を澄ませて周囲の警戒を怠らない。
リオは棚に並ぶ登録台帳をめくる。
(……このリスト、妙だ。事件が起きた日付と、カード登録のデータが一致してる……。まるで“誰か”が、登録情報を外部に流してるみたいだ)
その時、物音がした。
「誰だ!」
奥の暗がりから現れたのは、管理庁の制服を着た男だった。
リオたちはとっさに身を隠すが、男はどこか焦った様子で記録台帳の一部を懐に隠し、素早く立ち去っていった。
「怪しい……」
ミナが小声でつぶやく。
「あとを追おう!」
リオの合図で、一同は夜の街へと駆け出す。
男は人気のない路地へ入り、そこで黒ずくめの男たちと接触していた。
彼らはまさに“カード狩り”の一味――管理庁の情報を使い、次々とターゲットを襲っていたのだ。
「おい、あれを見ろ……!」
ティアナがささやく。男たちは新たな獲物を待ち伏せている。
リオは決意を固め、仲間たちと前へ進み出る。
「待て!」
男たちが振り向く。
「チッ、ガキどもか……!」
リオはカードケースからグラン=ヴァルドを構えた。
仲間たちも次々とカードを取り出す。
「カイ! 正面から突破だ!」
「任せろ! 《雷牙狼ルガノス》――召喚!」
カイのカードから雷を纏う狼が現れ、黒ずくめの男たちの前に立ちふさがる。
ユリエルは冷静に「氷結魔法」で道を封じ、ティアナはサポートカードで仲間を強化する。
リオはグラン=ヴァルドと心で語り合った。
(俺たちのカードは、奪うためのものじゃない。守るためにあるんだ――!)
『わかっている、リオ。お前の願いを、私が叶えよう』
グラン=ヴァルドの咆哮が夜空に響く。
黒衣の男たちは次々と幻獣を繰り出すが、仲間たちの連携の前に次第に劣勢となる。
「もうやめろ! お前たちのやっていることは、絶対に許されない!」
リオの叫びに、男たちは動揺する。
一人がついに観念し、こう叫んだ。
「俺たちは……管理庁の職員に命令されてやってただけだ! あいつが未認可カードのリストを回してきたんだ……!」
騒ぎに気づいた近隣の衛士たちが駆け付け、男たちはそのまま捕えられた。
逃げ出そうとした庁の男も現行犯で逮捕された。
◇
事件はすぐさま王都の話題となり、管理庁の一部職員が「裏取引」に関与していた事実が大きく報じられた。
リオたちは庁舎に呼ばれ、公式に感謝と謝意を伝えられるが、リオの胸は晴れなかった。
(カードの力って……本当に、扱い方ひとつで人の心をも狂わせる)
夜、仲間たちと静かに焚き火を囲む。
「俺たちが守ったものは、たった一枚のカードじゃない。“信頼”や“希望”だったんだと思う」
ユリエルがそっと頷く。
「カードの闇と向き合う覚悟も、これからの旅には必要なんだね」
グラン=ヴァルドの声が静かに響いた。
『リオ。力を持つ者は、その力に溺れず、闇と向き合い続けなければならない。お前なら、必ず越えていける』
リオは、仲間とともに決意を新たにした。
(どんなに困難な道でも、仲間となら乗り越えられる。俺は、この力を“守るため”に使う――)
王都の夜空には、星が静かにまたたいていた。
近ごろ、街では「カード狩り」と呼ばれる集団による事件が相次いでいた。被害にあったのは、公認・未認可を問わず強力なカードを持つクリエイターたち。突然現れた複数の男たちに囲まれ、力ずくでカードを奪われる――そんな噂が日増しに広がっていた。
ある朝、広場の掲示板には被害報告と警告が貼り出されていた。
「未認可カード狩り、昨夜また発生!」「管理庁より通告:不審な集団に警戒を!」
食堂で朝食をとるリオたち仲間の間にも、不安が広がっていた。
「やっぱり……王都でも、こんなことが起きるんだな」
カイがパンをちぎりながら苦い顔をする。
ティアナはカップを両手で包み、「未認可カードって、精製に危険も多いけど……本当に誰も守ってくれないの?」とささやいた。
「カードを狙うのは悪い奴だけじゃないわ。利用できるなら、誰だって手を出す」
ユリエルが低く言う。「特に、伝説級が絡むと、みんな理性をなくすものよ」
リオはグラン=ヴァルドのカードをふと見つめた。
(俺のカードも……誰かの“欲望”を呼ぶものなのか?)
仲間の沈黙を破るように、ミナがきっぱり言った。
「でも、あんたのカードは絶対に誰にも渡さない! それに、こんな事件を見過ごしてちゃダメだよ。困ってる人がいるなら――」
その言葉に背を押され、リオも強くうなずいた。
「よし、俺たちで事件の正体を突き止めよう!」
◇
リオたちは数日かけて、街中で聞き込みや見回りを重ねた。
夜の裏路地、市場の喧騒、冒険者ギルドの酒場――
どこでも「黒ずくめの集団」「顔を隠した男たち」「謎の札を使うリーダー」が目撃されていた。
やがて、最新の被害者に話を聞くことができた。
被害者は肩を落として語った。
「突然、三人組が現れて……逃げても、妙な“拘束カード”を使われたんだ。俺の“雷獅子”も一発で封じられて、気が付いたらカードがなかった……。奴ら、普通の冒険者じゃない。あんな高位のカード、正規ルートじゃ手に入らないはずだ」
リオは仲間たちと街角に集まり、状況を整理した。
「事件の裏に、カードの流通に詳しい誰かがいる……?」
「うーん。管理庁の正式な審査を経てないカードをピンポイントで狙ってるってことは……内部に情報を流してる奴がいるかも」
ティアナが鋭く指摘する。
「そうだな。俺たち、庁の記録室に忍び込んで調べてみよう」
カイが提案する。
夜、リオたちは人気の途絶えた管理庁の記録室に潜入した。
ユリエルが警備の目を引き付け、シュトラが静かに錠前を解く。ティアナは資料の山を器用に整理し、カイは耳を澄ませて周囲の警戒を怠らない。
リオは棚に並ぶ登録台帳をめくる。
(……このリスト、妙だ。事件が起きた日付と、カード登録のデータが一致してる……。まるで“誰か”が、登録情報を外部に流してるみたいだ)
その時、物音がした。
「誰だ!」
奥の暗がりから現れたのは、管理庁の制服を着た男だった。
リオたちはとっさに身を隠すが、男はどこか焦った様子で記録台帳の一部を懐に隠し、素早く立ち去っていった。
「怪しい……」
ミナが小声でつぶやく。
「あとを追おう!」
リオの合図で、一同は夜の街へと駆け出す。
男は人気のない路地へ入り、そこで黒ずくめの男たちと接触していた。
彼らはまさに“カード狩り”の一味――管理庁の情報を使い、次々とターゲットを襲っていたのだ。
「おい、あれを見ろ……!」
ティアナがささやく。男たちは新たな獲物を待ち伏せている。
リオは決意を固め、仲間たちと前へ進み出る。
「待て!」
男たちが振り向く。
「チッ、ガキどもか……!」
リオはカードケースからグラン=ヴァルドを構えた。
仲間たちも次々とカードを取り出す。
「カイ! 正面から突破だ!」
「任せろ! 《雷牙狼ルガノス》――召喚!」
カイのカードから雷を纏う狼が現れ、黒ずくめの男たちの前に立ちふさがる。
ユリエルは冷静に「氷結魔法」で道を封じ、ティアナはサポートカードで仲間を強化する。
リオはグラン=ヴァルドと心で語り合った。
(俺たちのカードは、奪うためのものじゃない。守るためにあるんだ――!)
『わかっている、リオ。お前の願いを、私が叶えよう』
グラン=ヴァルドの咆哮が夜空に響く。
黒衣の男たちは次々と幻獣を繰り出すが、仲間たちの連携の前に次第に劣勢となる。
「もうやめろ! お前たちのやっていることは、絶対に許されない!」
リオの叫びに、男たちは動揺する。
一人がついに観念し、こう叫んだ。
「俺たちは……管理庁の職員に命令されてやってただけだ! あいつが未認可カードのリストを回してきたんだ……!」
騒ぎに気づいた近隣の衛士たちが駆け付け、男たちはそのまま捕えられた。
逃げ出そうとした庁の男も現行犯で逮捕された。
◇
事件はすぐさま王都の話題となり、管理庁の一部職員が「裏取引」に関与していた事実が大きく報じられた。
リオたちは庁舎に呼ばれ、公式に感謝と謝意を伝えられるが、リオの胸は晴れなかった。
(カードの力って……本当に、扱い方ひとつで人の心をも狂わせる)
夜、仲間たちと静かに焚き火を囲む。
「俺たちが守ったものは、たった一枚のカードじゃない。“信頼”や“希望”だったんだと思う」
ユリエルがそっと頷く。
「カードの闇と向き合う覚悟も、これからの旅には必要なんだね」
グラン=ヴァルドの声が静かに響いた。
『リオ。力を持つ者は、その力に溺れず、闇と向き合い続けなければならない。お前なら、必ず越えていける』
リオは、仲間とともに決意を新たにした。
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