【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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第24話「異界からの来訪者」

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 夜明け前の遺跡には冷たい風が流れ、淡い霧が石畳の上を這っていた。
 封印解除を終えたリオたちは、仮設の野営地で小さな焚火を囲み、冷えた体を温めていた。

 

 「昨夜の異形バトル……あの黒いカード使い、ただの犯罪者じゃないわ。戦い方も、発する雰囲気も……まるで“世界が違う”」
 ユリエルがじっと炎を見つめてつぶやく。

 

 「異界のカードクリエイター……本当に現れるんだな」
 カイが肩を回しながら呟いた。

 

 「油断したら、また罠にかかるかもね。今度こそ気を引き締めていこう」
 ティアナは装備を確認しながら微笑むが、その目には決意の色が濃い。

 

 ミナは、仲間がそろっていることを確かめるように一人ずつ見渡して微笑む。

 

 (大丈夫。リオがいれば、きっと乗り越えられる)

 

 そんな空気の中、シュトラが空を指さした。

 

 「……見て、空が!」

 

 東の空に、突如として黒い亀裂が走った。
 雷鳴のような轟音とともに、地上まで届く“次元の裂け目”が空間を切り裂く。

 

 「異界の門、だ……!」

 

 王都でも同じ現象が起きていた。各地の精製師たちや管理庁の仲間たちから、次々と「門が開いた」という魔導通信が届く。

 

 「……どうする? 王都に戻る?」
 カイが尋ねる。

 

 「いや、今はここで踏みとどまる。俺たち自身で“門”と向き合うんだ」
 リオがしっかりと応えた。

 

 その時、遺跡の中心にぽっかりと闇の穴が開き、禍々しい光とともに新たな存在が現れた。

 

 *

 

 「……来たか、伝説のカードクリエイターたちよ」

 

 現れたのは三人組――
 異様なデザインのコートを纏った青年と、白銀の髪の少女、それに巨大な仮面をつけた無言の獣使い。

 

 「異界の……クリエイター!?」

 

 リオがグラン=ヴァルドのカードに手を添えると、青年が口元を上げた。

 

 「我々は“アルカナの使徒”。この世界の“精製”に興味があってな。だが、まずは貴様らの力を見せてもらおうか?」

 

 少女が指を鳴らすと、彼女の背後に奇妙な幻獣が出現する。
 その身体は透き通り、色とりどりの光を放ちながら地面を滑るように動く“虹蛇(レインボー・サーペント)”だ。

 

 「まるで生きている幻想そのもの……カードからの召喚とは思えない」
 ティアナが息を呑む。

 

 「カード精製の原理が……私たちのと違う!?」
 ユリエルが舌を巻く。

 

 青年は不敵に微笑む。

 

 「我らの世界では“魂を直接カードに刻む”のが常識だ。力ある者は“精製”で幻獣そのものと一体化する。君たちの“召喚して戦わせる”やり方は随分と優しいな」

 

 「魂を直接……!? それって……」

 

 「説明は後だ。さあ――“異界カードバトル”を始めよう」

 

 青年は「アルカナフィールド」を展開。遺跡の地面がカードの魔法陣で覆われ、空気が変わった。

 

 「リオ、こっちも全力でいくぞ!」
 カイが気合いを入れる。

 

 「仲間の力、見せてやる!」

 

 *

 

 先鋒はカイ vs 獣使い。
 獣使いは異界幻獣「影狼(シャドウウルフ)」を精製し、同時に自身の体と同化させて能力を強化してくる。

 

 「なるほど、これが異界流……でも負けない!」

 

 カイは《雷牙狼ルガノス》で応戦。速さとパワーで互角に渡り合い、村で鍛えた“直感”で相手の変則行動にも食らいつく。

 

 だが獣使いの動きは予測不能で、カイは何度も危機に陥る。

 

 「カイ、カード連携を使って!」
 ユリエルの声援に、カイはティアナの補助カード「閃光の結界」と組み合わせ、間一髪で攻撃を防ぐ。

 

 「みんなのカードを信じる! ルガノス、全開だ!」

 

 最終的に、雷の咆哮でシャドウウルフを倒し、勝利を掴む。

 

 *

 

 続いて、少女の“虹蛇”とミナのバトル。
 虹蛇はフィールド上に虹色の幻影を広げ、幻惑や精神攻撃を仕掛けてくる。

 

 「リオ、ちょっと助けて!」
 ミナが叫び、リオがサポートカード「村の灯」を発動して正気を保つ。

 

 ミナは「仲間との思い出カード」を使い、虹蛇の心を少しずつ解きほぐす。
 精神の絆と“やさしさ”が、異界バトルで意外な効果を発揮する。

 

 「あなたたちの世界には、温かいカードが多いのね……」
 少女が目を細めた。

 

 *

 

 ラストはリオ vs 青年。

 

 青年は異界最強カード「黒のアルカナ・ロード」を精製し、自身と融合して闇のオーラを纏う。

 

 「魂の力を、見せてもらうぞ!」

 

 リオは《グラン=ヴァルド》を召喚、竜の咆哮で場を制圧する。

 

 青年は魂の力でフィールドを変化させ、異界幻獣を無限に呼び出すが、リオは仲間たちのカード連携を駆使し、劣勢を覆していく。

 

 「俺は一人じゃない。仲間と作ったカードが、俺のすべてだ!」

 

 バトルの終盤、リオは「希望の黎明竜」カードを発動、フィールドを光で満たし、闇のアルカナ・ロードを浄化する。

 

 「この光は……君たちの世界の“心の力”か」

 

 青年は一歩退き、微笑んだ。

 

 「どうやら、我々のやり方も絶対じゃないらしいな。――次に会うときは、さらなる“強さ”と“優しさ”を見せてくれ」

 

 異界の三人組は静かに門へと姿を消す。

 

 門が閉じると同時に、空に朝焼けが広がった。

 

 「すごい……異界のバトルって、全然別世界だったね」
 ミナがほっと息を吐く。

 

 「カードの価値観も、使い方も、全然違った。でも――」

 

 「でも、俺たちは俺たちのやり方で、仲間を信じて進めばいい」
 リオはカードケースを胸に、決意を新たにした。

 

 仲間たちは、それぞれに学びを胸に、遠く開きかけた空を見上げていた。

 

 (どんな世界でも、カード精製は“心”から生まれる。俺はこの仲間と――もっと強くなってみせる)

 

 こうして、異界との新たな接触は終わった。
 だが、さらなる“未知”の脅威と可能性が、リオたちの前に広がろうとしていた――。
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