【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

文字の大きさ
34 / 101

第34話「涙と告白」

しおりを挟む
 再生の光に包まれた世界は、まだ薄明かりの中にあった。
 けれどリオと仲間たちの目には、すでに“次の希望”が灯っていた。

 

 記憶と力を取り戻し、新たな精製カードがリオの手に生まれた時――
 世界のどこかで静かに、また新しい戦いが始まろうとしていた。

 

 異界の王の「記憶消去の呪い」は完全には消えていない。
 空には灰色の雲が渦巻き、時折、どこか遠くから絶望の呻き声が響く。

 

 リオたちは王都の広場に再集結していた。
 皆が新たな力と決意を胸に立ち上がったとはいえ、疲労と傷はまだ色濃く残っていた。

 

 そして、その中心に立つミナの瞳は、揺れる決意と優しい光を湛えていた。

 

 *

 

 リオは広場の片隅で、カードケースを手に呆然としていた。
 新たな精製力の余韻が残る手のひらと、新しい希望のカード。
 それをじっと見つめるだけで、胸の奥が苦しくなる。

 

 (これで、世界は本当に救えるのか……?
  本当に俺なんかが、最後まで戦い抜けるのか――)

 

 リオは無意識に拳を握りしめた。
 そこへ、足音もなくミナがそっと近づいてきた。

 

 「リオ……」

 

 その声に、リオは驚いて顔を上げる。

 

 「ミナ……どうしたんだ?」

 

 ミナは何も言わず、リオの隣に静かに腰を下ろす。

 

 沈黙の中、遠くで仲間たちが力を合わせて結界の再生作業をしているのが見えた。
 カイが叫び、ユリエルやティアナが励まし合い、シュトラが市民の世話を焼いている。

 

 ミナは、そんな風景を見守るように、ゆっくりと口を開いた。

 

 「リオ……怖かったよ。もう、全部が終わっちゃうんじゃないかって。本当はずっと、不安で……怖くて、仕方なかった」

 

 リオはハッと息を飲む。

 

 「ごめん……俺が弱かったせいで、ミナまで――」

 

 ミナは首を横に振った。

 

 「違うの。私はね、リオが“最強のカードクリエイター”になる夢を見て、ずっと隣にいたかった。でも、本当は――
  ……私は、リオがいないと怖くて、何もできない子だった。
  あの時、異界に引きずり込まれた時も、リオが来てくれるって信じてなきゃ立ち向かえなかったんだ」

 

 その瞳に涙が浮かぶ。

 

 「それでも、私、気づいたの。
  リオのことが、ずっと……大好きだったんだって。
  ただ守られるだけじゃなくて、一緒に笑って、泣いて、支え合っていきたいって――
  本当は、どんな世界になっても……リオと一緒に生きていきたいって!」

 

 抑えきれない涙がミナの頬を伝う。

 

 「だから、お願い……もう一人で抱え込まないで。
  私にも、守らせてほしい。私も、リオの“カード”になりたい……!」

 

 リオの心に、これまで感じたことのない熱が広がった。
 ミナの小さな手が、震えながらもリオの手を強く握る。

 

 「……ミナ」

 

 リオの声が震える。

 

 「俺も……本当は、怖かったんだ。みんなを守る“ヒーロー”にならなきゃって、無理して笑ってた。でも……
  ミナがいたから、俺はここまで来られた。お前の“信じてくれる力”が、いつだって俺の背中を押してくれてた」

 

 リオはそっとミナを抱きしめる。

 

 「ありがとう、ミナ。
  これからは、俺も“守られる勇気”を持つよ。お前がそばにいてくれるなら、もう何も怖くない――」

 

 ふたりの心が、静かに溶け合っていく。

 

 遠くで雷鳴が轟く。
 異界の王の最後の呪いが、世界のどこかでまだ暴れている。
 だが、リオとミナの胸には、それを超える温かさと決意が灯った。

 

 ミナが小さな声で呟く。

 

 「……リオ、一緒に戦おう。どんなに辛くても、絶対にあきらめない。
  リオと、そしてみんなと一緒なら、きっと“新しい伝説”を作れる気がするから」

 

 リオは強く頷き、ミナの涙をそっと拭った。

 

 「絶対に、世界を救おう。――一緒に、未来を選ぼう!」

 

 広場の空に、一筋の朝日が射し込む。
 結界の向こうで、仲間たちがふたりに手を振る。
 誰もが、愛情と友情の強さを信じていた。

 

 愛し合うふたりの心、支え合う仲間、そして村や家族、世界中の人々の想い――
 それらすべてが、新しい“精製”の力としてリオとミナを満たしていく。

 

 世界の夜明けは、もうすぐそこまで来ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...