【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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47話「夢のカードバトル」

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 世界大会、第二日。

 アリーナの朝は、まるで祝祭の始まりのように騒がしかった。
 朝露に濡れた花びらが舞い上がり、会場前の広場では露天の香りと歓声が響く。

 

 この日は特別イベント――「夢のカードバトル」。
 なんと大会実行委員が“応募ネタカード”を選抜し、公式戦でサプライズ投入するというのだ。

 

 控室では、リオたちが朝食のパンをかじりつつ、今日の組み合わせにどきどきしていた。

 

 「ねえリオ、今日のバトル“ネタカード”使うって知ってた?」
 ミナがパン片手に目を輝かせる。

 

 「知ってる知ってる! 『空飛ぶカレーパン』とか『筋肉サウナカード』とか、へんてこな応募カードが選ばれたって、噂で……」

 

 「リオ兄ちゃん、俺“ぴよぴよエンドカード”に当たったら絶対勝つ!」
 カイはすでに腕まくりだ。

 

 ユリエルは、ややあきれ顔で「精製の本質からは外れてるけど、こういうバトルも悪くないわ」と微笑む。

 

 アールはというと、緊張気味に「僕、ちゃんと“変なカード”も使いこなせるかな……」と不安げだ。

 

 「大丈夫!」とミナが背中をぽんと叩く。「変でも、みんなで笑えばそれが一番の“希望”だもん」

 

 シュトラとティアナも「大会の余興だ、楽しもうぜ」「逆に新たな戦術を試せるチャンスよ!」と盛り上がっている。

 

 *

 

 やがて大会アナウンスが響き渡った。

 

 「さあ皆さん、本日の特別イベント“夢のカードバトル”!
 みんなから寄せられた奇想天外なカードで、トップクリエイターたちが真剣勝負!
 笑いあり涙あり、意外な友情とドラマにもご期待ください!」

 

 会場の大スクリーンには、応募されたネタカードの一部が映し出される。

 

 ・『空飛ぶカレーパン』
 ・『筋肉サウナカード』
 ・『ぴよぴよエンドカード』
 ・『超高速メイドさんカード』
 ・『失恋ソーダカード』
 ・『まんぷくドラゴンカード』
 ・『寝落ちウサギカード』
 ・『無敵おばあちゃんカード』
 ・『モフモフモンスターカード』
 ……などなど、ネーミングも性能もツッコミどころ満載で、観客たちは腹を抱えて笑っている。

 

 リオは自分のカードデッキを見つめてつぶやいた。

 

 「こういう時、真面目にやるほど負けそうだな……」

 

 グラン=ヴァルドが珍しく真面目にアドバイスする。

 

 『油断は禁物だぞ、リオ。こういう“混沌”こそ、真のバトルの妙味が潜んでいる』

 

 「そ、そうかなぁ……?」

 

 *

 

 いよいよリオの対戦が始まる。
 対戦相手は南方ギルドのプリシラ嬢。おっとりした雰囲気だが、実は「奇抜なカード使い」として密かな人気者である。

 

 「どうぞ、お手やわらかに……」
 「こちらこそ、よろしく!」

 

 審判の合図とともに、バトルフィールドにお互いカードを展開――。

 

 まず、プリシラが切り札を投入。

 

 「いけ!“モフモフモンスターカード”!」

 

 もくもくと雲のようなモンスターが現れ、リオにふわっと抱きついてくる。
 「わっ、動けない! めっちゃ気持ちいいけど!」
 観客席は「もふもふ!」「うちの犬より可愛い!」と大盛り上がり。

 

 リオも負けじとカードを繰る。

 

 「俺のターン!“空飛ぶカレーパン”発動!」

 

 熱々のカレーパンがバサバサと羽根を生やし、モフモフモンスターの頭上を猛スピードで旋回。
 「カレーパンの香りにモンスターが気を取られているうちに――“ぴよぴよエンドカード”!」

 

 無数のヒヨコ幻影が現れ、場内は“ぴよぴよ”大合唱。
 プリシラ嬢が笑いをこらえきれず崩れ落ちる。

 

 「これは、戦いなのかコントなのか……!」

 

 だがその瞬間、プリシラも反撃。

 

 「“寝落ちウサギカード”!」

 

 フィールドに現れた白ウサギが、ぴよぴよヒヨコとカレーパンを一斉に寝かしつけ、会場に平和な寝息が広がる。

 

 観客は大爆笑。
 リオも「こうなったら……“まんぷくドラゴンカード”!」

 

 巨大なドラゴン(グラン=ヴァルド似)が現れ、カレーパンやヒヨコ、ウサギを次々と食べてまんぷくになり、
 「……おやすみ」とフィールドで寝息を立て始めた。

 

 審判が呆然としながらも、「両者、面白すぎて勝敗つかず!」と判定を下すと、会場は大歓声に包まれた。

 

 *

 

 控室でも仲間たちが盛り上がっていた。

 

 カイは「筋肉サウナカードで汗かきまくって負けたー!」とタオルで頭を拭き、
 ティアナは「超高速メイドさんカードが私のケーキ全部片付けていった……」と肩を落とし、
 ユリエルは「失恋ソーダカードで一瞬メンタルが虚無になったわ……」とぼそっと呟く。

 

 アールは“無敵おばあちゃんカード”に遭遇し、「強すぎて何もできなかった……」と項垂れる。

 

 シュトラだけは、「俺の相棒、まさか“モフモフモンスター”に裏切られるとは……」と悔しがる。

 

 そんな中、観客たちは「夢のカードバトル」に大喜び。
 “バトルで勝つ”だけでなく、“笑って楽しむ”こともまた、カードの素晴らしさだと誰もが実感していた。

 

 ミナはみんなを見回し、
 「どんなカードも“想い”があれば、ちゃんと誰かを幸せにできるね」とほほえんだ。

 

 リオはうなずきながら、
 「次はきっと真剣勝負……でも、たまにはこんなバトルも悪くないな!」と明るく笑った。

 

 そして、
 会場の隅で一人、マント姿の少女が「やっぱり、カードって最高に自由ね」とつぶやいた。

 

 “夢のカードバトル”は、世界大会に新たな友情と絆、そして笑いと希望をもたらした。
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