48 / 101
48話「精製バグ拡大、記憶喪失事件」
しおりを挟む
夢のカードバトルの興奮冷めやらぬ翌朝。
リオたち「希望の旅団」は、世界大会のさらなる激戦に向けて士気を高めていた。
しかし、その朝の控室には異様な緊張感が漂っていた。
カイが眉をひそめ、
「なあ、昨日一緒に写真撮った“筋肉カード団”の兄ちゃん、今朝まったく俺のこと覚えてなかったぞ」
と言い出したのだ。
「そ、そんなことある?」
ティアナが驚くが、他の参加者やスタッフも、どこか様子がおかしい。
「昨夜の晩餐会で会ったって言われたけど、全然記憶にない」
「控室の場所が急にわからなくなった」
「自分のカードデッキがなぜか一枚消えてる気がする」
会場内のざわめきは、次第にただごとではないものへと変わっていった。
ユリエルは不審な顔でデータ端末を操作しながら呟いた。
「情報ネットワークにも小さなノイズが走ってる……。これは、“精製バグ”の拡大現象かもしれない」
その時、観客席から悲鳴が上がった。
「きゃあ! あの子、自分の名前が急に思い出せなくなったって……!」
「俺も……自分が何をしにここへ来たのか……」
大会スタッフたちが走り回るが、状況は混乱を極めていく。
*
「このままだと大会そのものが危険だわ」
ミナが真剣な声で告げる。
リオは会場スタッフに頼まれ、仲間たちとともに被害者の一時避難と調査を開始した。
アールは震える手で、自分のカードを確かめる。
「僕のカードにもまた……ノイズが。
もしこの“バグ”が、記憶そのものに影響してるとしたら……」
グラン=ヴァルドは厳しい声で指摘した。
『精製バグは、想いや記憶を“記録”するカードにとって致命的なリスクだ。
誰かが意図的に“記憶喪失カード”をバラ撒いているとしか思えん』
シュトラが警備隊と共に情報を集める。
「不自然な被害が広がっているのは、“観客席の北側”と“控室エリア”だけだ。
誰かがピンポイントでバグカードを使ってる可能性が高い」
ユリエルはさらにデータを追い、「この“記憶喪失カード”、一般流通していないはずよ。
精製ネットワークの一部が乗っ取られている……!」
*
リオは現場を走り回り、記憶を失った少年や少女たちを助けた。
「大丈夫、君のカードはちゃんとここにある。僕たちが絶対に守るから!」
ミナもそばで寄り添い、「名前も思い出せない子に、“あなたの好きなこと”を一緒に思い出してもらいましょう」と声をかける。
しばらくすると、一人の少女が震えた声で、
「……お花が好きだった。カードも、お花のカードを作った気がする……」
と呟いた。
リオは少女の手を握り、「それでいいんだよ。君の“想い”が、絶対に戻るから」と励ます。
やがて少女のカードが淡く光り、少しずつ彼女の記憶が戻り始める。
「ほら、“心”はカードとつながってるんだ」
仲間たちは手分けして、記憶を失った人々に語りかけ、彼らの“好きなこと”“大切な想い”を手繰り寄せていった。
その中で、アールはある少年のカードを調べて凍りついた。
「これ……僕のカードと“バグの模様”が同じだ……!」
リオたちは息を呑む。
「つまり、誰かが精製ネットワークを“ハッキング”してバグをばらまいてる?」
ユリエルは頷く。「しかも、ごく一部の上級精製師しか使えない暗号技術……
間違いなく、ただの悪戯じゃない。黒幕がいる!」
*
その夜、リオたちは控室に集まり、事件の分析会議を開いた。
「大会スタッフは事態を公表せず、表向きは『体調不良者続出』で押し通すみたい」
ティアナが憤る。
「だが、実際は何十人も記憶を失ったままだ」
シュトラが渋い顔を見せる。
アールは自分のカードを握りしめ、怯えと怒りに声を震わせる。
「カードって、本来は“希望”や“夢”を精製するものなのに、
誰かがその仕組みごと“人の心”を盗もうとしている――そんなの、絶対に許せない」
リオは真っ直ぐな目で仲間たちを見る。
「俺たちで、この事件を止めよう。
カードの“心”を奪う奴は、カードクリエイターとして許せない!」
ミナがそっと手を重ねる。「私たちが信じる“想いの力”を、もう一度みんなに伝えよう」
グラン=ヴァルドも重々しくうなずいた。
『記憶喪失カードの核心を暴き、精製ネットワークの異常を直すには……
会場の“ネットワーク中枢”に直接アクセスし、黒幕を突き止めるしかないだろう』
ユリエルが「私が調査班をまとめる」と立ち上がり、
カイとティアナも「俺たちが現場をカバーする!」「暴走カードは絶対止める!」とやる気満々だ。
仲間たちがそれぞれ役割を担い、事件解決に動き始めたそのとき――
控室の扉がノックされ、
謎のマント姿の少女がそっと現れた。
「――面白いことになってきたわね、リオ君。あなたたちの“心”、本物かどうか、試させてもらうわ」
その瞳には、ただならぬ知性と妖しさが光っていた。
*
夜の王都は、華やかな大会の陰で、静かに騒乱の影を孕み始めていた。
リオたちの“想い”と“絆”は、果たして黒幕の企みを打ち破ることができるのか――。
リオたち「希望の旅団」は、世界大会のさらなる激戦に向けて士気を高めていた。
しかし、その朝の控室には異様な緊張感が漂っていた。
カイが眉をひそめ、
「なあ、昨日一緒に写真撮った“筋肉カード団”の兄ちゃん、今朝まったく俺のこと覚えてなかったぞ」
と言い出したのだ。
「そ、そんなことある?」
ティアナが驚くが、他の参加者やスタッフも、どこか様子がおかしい。
「昨夜の晩餐会で会ったって言われたけど、全然記憶にない」
「控室の場所が急にわからなくなった」
「自分のカードデッキがなぜか一枚消えてる気がする」
会場内のざわめきは、次第にただごとではないものへと変わっていった。
ユリエルは不審な顔でデータ端末を操作しながら呟いた。
「情報ネットワークにも小さなノイズが走ってる……。これは、“精製バグ”の拡大現象かもしれない」
その時、観客席から悲鳴が上がった。
「きゃあ! あの子、自分の名前が急に思い出せなくなったって……!」
「俺も……自分が何をしにここへ来たのか……」
大会スタッフたちが走り回るが、状況は混乱を極めていく。
*
「このままだと大会そのものが危険だわ」
ミナが真剣な声で告げる。
リオは会場スタッフに頼まれ、仲間たちとともに被害者の一時避難と調査を開始した。
アールは震える手で、自分のカードを確かめる。
「僕のカードにもまた……ノイズが。
もしこの“バグ”が、記憶そのものに影響してるとしたら……」
グラン=ヴァルドは厳しい声で指摘した。
『精製バグは、想いや記憶を“記録”するカードにとって致命的なリスクだ。
誰かが意図的に“記憶喪失カード”をバラ撒いているとしか思えん』
シュトラが警備隊と共に情報を集める。
「不自然な被害が広がっているのは、“観客席の北側”と“控室エリア”だけだ。
誰かがピンポイントでバグカードを使ってる可能性が高い」
ユリエルはさらにデータを追い、「この“記憶喪失カード”、一般流通していないはずよ。
精製ネットワークの一部が乗っ取られている……!」
*
リオは現場を走り回り、記憶を失った少年や少女たちを助けた。
「大丈夫、君のカードはちゃんとここにある。僕たちが絶対に守るから!」
ミナもそばで寄り添い、「名前も思い出せない子に、“あなたの好きなこと”を一緒に思い出してもらいましょう」と声をかける。
しばらくすると、一人の少女が震えた声で、
「……お花が好きだった。カードも、お花のカードを作った気がする……」
と呟いた。
リオは少女の手を握り、「それでいいんだよ。君の“想い”が、絶対に戻るから」と励ます。
やがて少女のカードが淡く光り、少しずつ彼女の記憶が戻り始める。
「ほら、“心”はカードとつながってるんだ」
仲間たちは手分けして、記憶を失った人々に語りかけ、彼らの“好きなこと”“大切な想い”を手繰り寄せていった。
その中で、アールはある少年のカードを調べて凍りついた。
「これ……僕のカードと“バグの模様”が同じだ……!」
リオたちは息を呑む。
「つまり、誰かが精製ネットワークを“ハッキング”してバグをばらまいてる?」
ユリエルは頷く。「しかも、ごく一部の上級精製師しか使えない暗号技術……
間違いなく、ただの悪戯じゃない。黒幕がいる!」
*
その夜、リオたちは控室に集まり、事件の分析会議を開いた。
「大会スタッフは事態を公表せず、表向きは『体調不良者続出』で押し通すみたい」
ティアナが憤る。
「だが、実際は何十人も記憶を失ったままだ」
シュトラが渋い顔を見せる。
アールは自分のカードを握りしめ、怯えと怒りに声を震わせる。
「カードって、本来は“希望”や“夢”を精製するものなのに、
誰かがその仕組みごと“人の心”を盗もうとしている――そんなの、絶対に許せない」
リオは真っ直ぐな目で仲間たちを見る。
「俺たちで、この事件を止めよう。
カードの“心”を奪う奴は、カードクリエイターとして許せない!」
ミナがそっと手を重ねる。「私たちが信じる“想いの力”を、もう一度みんなに伝えよう」
グラン=ヴァルドも重々しくうなずいた。
『記憶喪失カードの核心を暴き、精製ネットワークの異常を直すには……
会場の“ネットワーク中枢”に直接アクセスし、黒幕を突き止めるしかないだろう』
ユリエルが「私が調査班をまとめる」と立ち上がり、
カイとティアナも「俺たちが現場をカバーする!」「暴走カードは絶対止める!」とやる気満々だ。
仲間たちがそれぞれ役割を担い、事件解決に動き始めたそのとき――
控室の扉がノックされ、
謎のマント姿の少女がそっと現れた。
「――面白いことになってきたわね、リオ君。あなたたちの“心”、本物かどうか、試させてもらうわ」
その瞳には、ただならぬ知性と妖しさが光っていた。
*
夜の王都は、華やかな大会の陰で、静かに騒乱の影を孕み始めていた。
リオたちの“想い”と“絆”は、果たして黒幕の企みを打ち破ることができるのか――。
0
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる