【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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48話「精製バグ拡大、記憶喪失事件」

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 夢のカードバトルの興奮冷めやらぬ翌朝。
 リオたち「希望の旅団」は、世界大会のさらなる激戦に向けて士気を高めていた。

 

 しかし、その朝の控室には異様な緊張感が漂っていた。
 カイが眉をひそめ、
 「なあ、昨日一緒に写真撮った“筋肉カード団”の兄ちゃん、今朝まったく俺のこと覚えてなかったぞ」
 と言い出したのだ。

 

 「そ、そんなことある?」
 ティアナが驚くが、他の参加者やスタッフも、どこか様子がおかしい。

 

 「昨夜の晩餐会で会ったって言われたけど、全然記憶にない」
 「控室の場所が急にわからなくなった」
 「自分のカードデッキがなぜか一枚消えてる気がする」
 会場内のざわめきは、次第にただごとではないものへと変わっていった。

 

 ユリエルは不審な顔でデータ端末を操作しながら呟いた。
 「情報ネットワークにも小さなノイズが走ってる……。これは、“精製バグ”の拡大現象かもしれない」

 

 その時、観客席から悲鳴が上がった。

 

 「きゃあ! あの子、自分の名前が急に思い出せなくなったって……!」

 

 「俺も……自分が何をしにここへ来たのか……」

 

 大会スタッフたちが走り回るが、状況は混乱を極めていく。

 

 *

 

 「このままだと大会そのものが危険だわ」
 ミナが真剣な声で告げる。

 

 リオは会場スタッフに頼まれ、仲間たちとともに被害者の一時避難と調査を開始した。

 

 アールは震える手で、自分のカードを確かめる。
 「僕のカードにもまた……ノイズが。
 もしこの“バグ”が、記憶そのものに影響してるとしたら……」

 

 グラン=ヴァルドは厳しい声で指摘した。
 『精製バグは、想いや記憶を“記録”するカードにとって致命的なリスクだ。
 誰かが意図的に“記憶喪失カード”をバラ撒いているとしか思えん』

 

 シュトラが警備隊と共に情報を集める。

 

 「不自然な被害が広がっているのは、“観客席の北側”と“控室エリア”だけだ。
 誰かがピンポイントでバグカードを使ってる可能性が高い」

 

 ユリエルはさらにデータを追い、「この“記憶喪失カード”、一般流通していないはずよ。
 精製ネットワークの一部が乗っ取られている……!」

 

 *

 

 リオは現場を走り回り、記憶を失った少年や少女たちを助けた。

 

 「大丈夫、君のカードはちゃんとここにある。僕たちが絶対に守るから!」

 

 ミナもそばで寄り添い、「名前も思い出せない子に、“あなたの好きなこと”を一緒に思い出してもらいましょう」と声をかける。

 

 しばらくすると、一人の少女が震えた声で、
 「……お花が好きだった。カードも、お花のカードを作った気がする……」
 と呟いた。

 

 リオは少女の手を握り、「それでいいんだよ。君の“想い”が、絶対に戻るから」と励ます。

 

 やがて少女のカードが淡く光り、少しずつ彼女の記憶が戻り始める。

 

 「ほら、“心”はカードとつながってるんだ」

 

 仲間たちは手分けして、記憶を失った人々に語りかけ、彼らの“好きなこと”“大切な想い”を手繰り寄せていった。

 

 その中で、アールはある少年のカードを調べて凍りついた。

 

 「これ……僕のカードと“バグの模様”が同じだ……!」

 

 リオたちは息を呑む。

 

 「つまり、誰かが精製ネットワークを“ハッキング”してバグをばらまいてる?」

 

 ユリエルは頷く。「しかも、ごく一部の上級精製師しか使えない暗号技術……
 間違いなく、ただの悪戯じゃない。黒幕がいる!」

 

 *

 

 その夜、リオたちは控室に集まり、事件の分析会議を開いた。

 

 「大会スタッフは事態を公表せず、表向きは『体調不良者続出』で押し通すみたい」
 ティアナが憤る。

 

 「だが、実際は何十人も記憶を失ったままだ」
 シュトラが渋い顔を見せる。

 

 アールは自分のカードを握りしめ、怯えと怒りに声を震わせる。

 

 「カードって、本来は“希望”や“夢”を精製するものなのに、
 誰かがその仕組みごと“人の心”を盗もうとしている――そんなの、絶対に許せない」

 

 リオは真っ直ぐな目で仲間たちを見る。

 

 「俺たちで、この事件を止めよう。
 カードの“心”を奪う奴は、カードクリエイターとして許せない!」

 

 ミナがそっと手を重ねる。「私たちが信じる“想いの力”を、もう一度みんなに伝えよう」

 

 グラン=ヴァルドも重々しくうなずいた。

 

 『記憶喪失カードの核心を暴き、精製ネットワークの異常を直すには……
 会場の“ネットワーク中枢”に直接アクセスし、黒幕を突き止めるしかないだろう』

 

 ユリエルが「私が調査班をまとめる」と立ち上がり、
 カイとティアナも「俺たちが現場をカバーする!」「暴走カードは絶対止める!」とやる気満々だ。

 

 仲間たちがそれぞれ役割を担い、事件解決に動き始めたそのとき――

 

 控室の扉がノックされ、
 謎のマント姿の少女がそっと現れた。

 

 「――面白いことになってきたわね、リオ君。あなたたちの“心”、本物かどうか、試させてもらうわ」

 

 その瞳には、ただならぬ知性と妖しさが光っていた。

 

 *

 

 夜の王都は、華やかな大会の陰で、静かに騒乱の影を孕み始めていた。

 

 リオたちの“想い”と“絆”は、果たして黒幕の企みを打ち破ることができるのか――。
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