【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

52話「幻獣復活と友情バトル」

　希望の旅団による暴走カード討伐作戦が成功し、王都や各地の町には安堵と再生の空気が広がっていた。
　だが、その平和も束の間のものだった――。

　

　＊

　

　「リオ、大変だ！　また幻獣が現れた！」
　朝焼けの王都広場に、カイが血相を変えて駆け込んできた。

　

　「幻獣って、暴走カードのじゃなくて……本物!?」
　ミナが驚く。

　

　「それも、一度“封印”したり、討伐したはずの幻獣ばかりだ」
　ユリエルがデータ端末を睨みながら続ける。「カード精製ネットワーク上に“幻獣カード”の暴走波が走ってる。誰かが意図的に“記憶の幻獣”たちを呼び戻しているわ」

　

　「シャドウリンクの仕業か？」
　シュトラが警戒する。

　

　リオは静かに頷いた。「けど、俺たちで何度だって向き合える。あの時と違うのは――今は“希望”でみんながつながってるから！」

　

　＊

　

　現場となったのは、王都郊外の広い精製フィールドだった。
　空には雷鳴竜ゼルガ、地には巨狼ガルム、湖のほとりには幻蝶フローリア――
　かつてリオや仲間たちが苦しみ、共に戦い、時には和解してきた伝説級の幻獣たちが、
　今は制御不能の暴走状態で次々と現れていた。

　

　「このままじゃ町が危ない！」
　カイが剣を構える。

　

　「でも、ただ戦うだけじゃダメだ……あの子たちは、もともと“誰かの願い”や“想い”が形になった存在なんだから」
　ティアナがそう言って湖の幻蝶に向き合う。

　

　＊

　

　リオはまず雷鳴竜ゼルガの前に立った。

　

　「また会えたな、ゼルガ！　お前は、俺がまだ弱かった頃、初めて“恐怖”を乗り越えさせてくれた相手だ。あの時も、俺は自分の弱さを認めて、勇気をもらった――今度は、もう逃げない！」

　

　グラン＝ヴァルドの咆哮がフィールドに響く。
　竜同士の咆哮がぶつかり合い、電撃が空を裂く。

　

　「ゼルガ、お前もきっと寂しかったんだろ。
　だからもう一度“友達”として、俺と戦ってくれ！」

　

　リオは“希望の竜カード”を発動、グラン＝ヴァルドと共にゼルガへ真っ向からぶつかる。
　ぶつかり合いの末、ゼルガの瞳がかすかに優しさを取り戻し、リオの肩に光の粒が降り注いだ。

　

　「ありがとう……お前の強さ、忘れない」

　

　ゼルガの暴走は収まり、静かに空へと還っていった。

　

　＊

　

　一方、湖畔ではミナとアールが幻蝶フローリアに立ち向かっていた。

　

　「フローリア、昔はおとなしくて可愛かったのに……どうして暴れてるの？」
　ミナが涙ぐむ。

　

　「たぶん、僕たちの“心”が届かなくなってたんだ」
　アールが静かにカードを掲げる。「僕はずっと、みんなと違う存在なんじゃないかって怖かった。だけど、
　カードも、幻獣も、みんな“想い”でつながってる。もう一度信じてみる！」

　

　アールの“記憶修復カード”とミナの“希望の花カード”が輝き、
　幻蝶フローリアに優しい光を送る。

　

　「フローリア……また、一緒にお花畑を飛ぼうよ！」

　

　光に包まれたフローリアは暴走を止め、美しい羽でミナの手に舞い降りる。
　ミナはそっとフローリアを抱きしめ、「ごめんね、忘れかけてた“優しさ”を思い出したよ」と微笑んだ。

　

　＊

　

　カイとティアナは巨狼ガルムと対峙した。

　

　「カイ、お前はいつも“強くあれ”って言うけど、本当は臆病なとこもあるだろ」
　ティアナが笑う。

　

　「うるせー！　でも……ガルムもきっと寂しかっただけなんだよな」
　カイはガルムに向かい、「もう一度、俺たちの仲間になってくれ！」と叫ぶ。

　

　ティアナの“癒やしの風カード”がフィールドを包み、ガルムの牙が静かにおさまる。

　

　ガルムは大きな体を寄せ、カイの手に頭をこすりつけた。

　

　「ほらな、やっぱり“心”だよな！」

　

　ティアナも「これでまた、一緒に冒険できるね」と笑い合った。

　

　＊

　

　シュトラとユリエルは町の外れで小型幻獣たちの暴走に対応していた。

　

　「精製バグの影響、ようやく収まってきたみたいです」
　ユリエルが冷静に解析データを送る。

　

　シュトラは町の子どもたちを守りながら、「幻獣だって“絆”を信じてる。俺たちが迷わなければ、必ず心は届く」と語った。

　

　やがて小型幻獣たちも落ち着き、子どもたちの周囲を跳ね回る。

　

　「ありがとうシュトラお兄ちゃん！」
　「ユリエルお姉ちゃんも、また来てね！」

　

　町の人々の笑顔が広がっていく。

　

　＊

　

　討伐の終わり、リオたちは再び広場に集まった。
　幻獣たちも、その姿を穏やかに見せ、カードの中へと還っていく。

　

　「やっぱり、カードも幻獣も、“心”と“友情”でできてるんだな」
　リオがしみじみとつぶやく。

　

　ミナは「これからも、みんなで希望を届けていこう」と強く誓い、
　アールは「僕も、ずっと一緒にいたい。みんなの“絆”があれば、どんなバグにも負けない」と笑顔を見せた。

　

　希望精製の原点――
　それは「想い」でつながる友情と、みんなの心を信じる強さだった。

　

　「さあ、次の冒険だ！」
　リオが声を上げ、仲間たちもそれぞれのカードを手に新たな一歩を踏み出す。

　

　世界にまた一つ、希望の光が灯った。