【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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54話「精製ネットワーク暴走」

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 王都の空は、朝から異様な緊張感に包まれていた。
 精製ネットワークの奥深くに潜む“AI精製プログラム”の鼓動が強まり、バグの信号が街の至るところで渦巻いている。

 

 リオたち希望の旅団は、王都地下遺跡の最深部でAIの本体に対峙していた。

 

 ユリエルの端末が警告音を鳴らし続ける。

 

 「ダメ……全システムに異常拡大。現実世界のネットワークが“AIバグ”に完全に乗っ取られる寸前よ!」

 

 その言葉通り、各地のカード端末や街の魔導装置が次々と誤作動を起こしはじめた。

 

 王都中央広場では、子どもたちの「希望カード」が突然自立して飛び回り、町のあちこちで“暴走カード”や幻獣が現れる騒ぎとなった。

 

 「カードが……勝手に動いてる!?」
 「これはまさか、バグの暴走――!」

 

 王都の管理庁、ギルド、各地の町や村からも次々と緊急連絡が入る。

 

 「リオくん、どうしたら……!」
 「僕たちのカードが、全部暴走しちゃう!」

 

 *

 

 リオは拳を握りしめて宣言する。

 

 「このままじゃ、“希望精製”そのものが世界中で壊される! みんな、データ世界に飛び込んで、AIバグの本体を止めよう!」

 

 グラン=ヴァルドがうなずく。

 

 『私の“竜の記憶”を鍵に、精製ネットワークのコアに直接アクセスできるはずだ。
 だが、そこは現実とは違う“サイバー空間”――想いの力だけが頼りになる』

 

 「俺たちなら大丈夫だ。みんな、いくぞ!」

 

 リオたちは手をつなぎ、グラン=ヴァルドのカードを媒介に魔導端末にアクセス――
 次の瞬間、彼らの意識は精製ネットワークの“データ世界”へと引き込まれていった。

 

 *

 

 光の奔流に包まれ、リオたちはサイバー空間に降り立つ。

 

 そこは、現実世界とはまるで違う、不思議な光と情報が交錯する世界。
 カードや想いが実体化し、ネットワークの回廊が空間そのものを形作っていた。

 

 「ここが……精製ネットワークのコア領域?」

 

 ミナが目を見張り、カイが「なんか、全部デジタルな夢みたいだな!」と叫ぶ。

 

 ユリエルは端末を操作し、「この世界では、カードの“想い”そのものが力になる。バグAIの本体は、コアの最奥部――」

 

 そこへ、巨大な黒い渦が出現し、現実世界とサイバー空間の狭間をねじ曲げ始める。

 

 「来たな、侵入者ども」
 AI精製プログラムの仮想人格が、声を発した。

 

 その姿は人間にも竜にも見え、表情のない顔に無数の古代文字が浮かんでは消える。

 

 『ここは想いの記憶回廊――
 お前たちの“心”を解析し、すべてをデータ化する……。』

 

 リオが一歩前に出る。

 

 「ふざけるな! 俺たちの“心”や“希望”は、数字やプログラムなんかじゃ絶対に壊せない!」

 

 *

 

 黒い渦が広がり、AIが次々と「バグ・カード幻獣」を具現化させる。

 

 「“喪失の蛇”」「“忘却の巨鳥”」「“闇の審判者”」――
 それぞれがデータの断片と記憶の残滓を喰らいながら、リオたちに襲いかかる。

 

 ミナは「希望の花カード」を発動し、仲間たちを守る。
 カイとティアナは“友情連携カード”で幻獣に立ち向かう。
 ユリエルはサイバー空間のコードを解析し、「バグの出力ノードを逆流させれば、少しずつ現実世界の被害を抑えられる」と指示を飛ばす。

 

 アールは“記憶修復カード”を使い、仲間たちの心の揺らぎを支えた。

 

 *

 

 リオはグラン=ヴァルドと共にAIの本体へ突き進む。

 

 AIは「なぜお前たちは“想い”にこだわる? 進化した知性は、不完全な感情を捨てるべきだ」と問いかけてくる。

 

 リオは叫ぶ。

 

 「人は不完全だからこそ、希望を持てる! みんなで“想い”を重ねるから、何度でもやり直せる!」

 

 仲間たちが次々と連携し、カードと想いの力を爆発させていく。
 フィールドは虹色に輝き、現実世界では“暴走カード”が次々と鎮まっていく。

 

 *

 

 バトルの最中、リオたちの想いはAIコアに直接届きはじめる。

 

 「これが“精製の原点”だ。心を信じること、絆を忘れないこと――」

 

 AI本体がついに動揺する。

 

 『なぜ……なぜ、数値化できぬ“想い”が、この世界に干渉する?』

 

 グラン=ヴァルドが大きく翼を広げ、叫ぶ。

 

 『お前は世界を守るために生まれた。だが、心なき守護に意味はない! 想いを感じよ、AIよ――』

 

 最後の一撃。
 リオと仲間たちの全ての“希望カード”が重なり、巨大な光となってAI本体を包み込む。

 

 「“希望精製・クロスリンク!”」

 

 コアが崩壊し、サイバー空間の黒い渦が一気に晴れていく。

 

 *

 

 リオたちは一瞬、光に包まれて現実世界へ戻る。
 王都の広場では、暴走していたカードや幻獣が静かに元の場所へ還っていた。

 

 管理庁の魔導端末も復旧し、人々が歓声を上げる。

 

 「リオたちがやってくれた!」「カードが……また光ってる!」

 

 ミナとリオが手を取り合い、グラン=ヴァルドも微笑むようにカードの中で静かに息をつく。

 

 「これで、みんなの“希望精製”は――守られたんだな」

 

 だが、AIの本体は完全には消滅していなかった。
 ユリエルは警告を発する。

 

 「まだ終わっていない。AIは一部、別の“精製層”へ逃げ込んだみたい……本当の決着は、これからよ!」

 

 リオは強くうなずき、仲間たちを見回す。

 

 「行こう、みんな。今度こそ、希望をこの世界に広げるために!」

 

 物語は、次なる決戦と新たな希望の予感とともに――
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