【完結】地味な村人が伝説ドラゴンをカード化したら、最強無双の人生が始まりました

東野あさひ

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74話「白銀の賢者の試練」

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 夜明け前のアルカナシティ。
 黒き精製者の影が町を覆い始め、アールの一時離脱が旅団に残した不安が、どこか重い空気となって広がっていた。

 

 リオは眠れずにいた。
 仲間の大切さ、守れなかった悔しさ、心の奥底に残る“弱さ”と向き合い続けていた。

 

 その夜――
 リオは不思議な夢を見る。

 

 *

 

 見知らぬ銀世界。
 月明かりに照らされる幻想的な氷の森。
 リオは独りきりで、きしむ雪の上を歩いていた。

 

 (ここは……どこだ?)

 

 ふと前方に、白銀のローブを纏った老人が現れた。
 長い髪と髭、優しげな瞳――どこか温かさと厳しさを併せ持った、不思議な存在感。

 

 「……お前が“希望の旅団”のリオか」

 

 老人は静かに語りかけてきた。

 

 「私は“白銀の賢者”。遥かな時の流れの中で、精製師たちの魂を見守り続けてきた者だ」

 

 リオは息を呑む。

 

 「どうして俺の前に?」

 

 賢者は深く微笑む。

 

 「お前の“心”を試すためだ。仲間のために、世界のために戦い続けるお前だが――
 本当の弱さを見ぬふりしていないか? 本当に“自分自身”を信じているのか?」

 

 その言葉と同時に、銀世界が揺らぎ、リオの足元から闇が湧き上がった。

 

 「リオ!」

 

 遠くからミナ、レイナ、カイ、ユリエル、ティアナ、シュトラ……仲間たちの声が響く。

 

 けれどリオの耳には、黒き精製者の嘲笑がこだまする。

 

 「仲間を守れなかったお前に何ができる?
 力だけを求めて、結局みんなを危険にさらすのではないか?」

 

 リオの胸に、アールの苦しげな顔、過去の失敗の記憶が蘇る。

 

 「――俺は……俺は、もっと強くならなきゃいけないのに……!」

 

 白銀の賢者は、静かにリオに近づいた。

 

 「強さとは何か。お前にとって“仲間”とは何だ?」

 

 リオはうつむき、拳を握る。

 

 「俺は、みんなのことが大好きだ。だからこそ、怖いんだ……
 誰かが傷つくのも、失うのも……本当は、怖くて仕方ない」

 

 その時、夢の中のグラン=ヴァルドが現れた。

 

 『リオ、お前の弱さも恐れも、すべてが“心”の力だ。
 お前が弱さを受け入れた時、初めて本当の絆が生まれるのだ』

 

 ミナの声が続く。

 

 「リオ、ひとりで背負わないで。
 私たち、ずっとそばにいるから――」

 

 レイナも、カイも、ユリエルも、皆がリオを囲む。

 

 リオは目を閉じて、自分の胸に手を当てた。

 

 (弱さも不安も、全部自分なんだ。
 でも――それでも、俺は仲間を信じたい。自分も、信じたい)

 

 リオがそう心に決めた瞬間、白銀の賢者の瞳が輝いた。

 

 「よくぞ己の弱さを見つめ、受け入れたな。
 本当の絆とは、互いの光と闇を認め合うことだ。
 お前の旅は、これからが本当の意味で始まるのだろう」

 

 賢者は最後に静かに微笑み、リオの肩を叩いた。

 

 「希望の旅団のリーダー、リオ。
 お前の弱さは、仲間の強さになる。
 ――この“銀の加護”を授けよう」

 

 賢者の杖が空を裂き、銀色の光がリオの体に注がれた。

 

 「ありがとう……!」

 

 リオは眩しい光に包まれながら、ゆっくりと目を覚ます。

 

 *

 

 朝、リオが目を覚ますと、ミナたちが心配そうに見守っていた。

 

 「リオ、大丈夫? すごくうなされてたよ」

 

 「うん……変な夢を見た。でも、
 なんだか、すごく心が軽くなった気がする」

 

 ミナがそっとリオの手を握る。

 

 「ひとりじゃないよ。みんなで一緒に進もう」

 

 レイナや他の仲間たちも微笑み、リオの肩をたたく。

 

 「ありがとう、みんな……俺、もう迷わない。
 これからは、仲間と一緒に前に進む」

 

 そのとき、リオの手元に銀色に輝くカードが現れた。

 

 「これは……“賢者の加護”……?」

 

 グラン=ヴァルドがうなずく。

 

 『お前の心が“試練”を越えた証だ。さあ、黒き精製者の闇を、みんなの絆で打ち破れ』

 

 希望の旅団は、新たな強さと絆を胸に、
 再び歩みを進めていく。
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