備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず

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第2章 矢作、村を出る?!

待ち人来たる?!

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『*##@&,*##』

一瞬だったけど確かに見えたあれは、古代文字だったはず。
あの時…「先輩、先輩ってば!!」

はっ。

草薙の呑気な声に考え事から意識が浮上した。

「だからココはまずいですって。間違いないです。ここはスラム街ですよ。」

「あのな、【跳馬亭】の皆さんに失礼だろ。」
と、言ってるそばから

バキッ!!

『あんた達、これ以上ここを壊したら出入り禁止だからね!!』
箒を振り上げて怒る女将の姿に、俺たちに朝ごはんを運ぶ爽やかな面影はない。

この辺りでは大きな建物のこの【跳馬亭】も、古い・汚い・ボロの3点はきちんと網羅している。

そう、草薙の言う通りこの辺りは間違いなくスラム街の一画だ。
この【跳馬亭】にも乱暴者が集っては喧嘩に明け暮れている。

今も、その真っ最中で喧嘩中の荒くれ者たちは全員正座で女将に叱られている。

こんな日常なのだから、なるほど建物がボロボロなはずだ。
しかしここでの俺たちは圧倒的武力不足。
まあ、ジルたちと別れた我々はザコ中のザコだ。でも、ザコにもそれなりに手はある。
だから、色々やっただろ?
この数日間の奮闘は、形になりつつある。
だから、心配はないと言うのに、相変わらず草薙は心配性だな。

「先輩、なんで【鹿目亭】に向かわないのですか?ジルさん達心配してると思うんですけど。」
ふう、諦めないな。

「勘。まだしばらくはココだ。」

あれを話すにはココは耳目が多すぎる。
危ない橋は渡らないに限る。
不貞腐れている草薙も女将の料理にはゾッコンだ。この辺りで女将の料理に叶う味は無いらしい。だからいつも超人気店なので人の出入りは多い。

ま、それで荒くれ者が集う度に喧嘩が始まる訳なのだ。

それにしても、ココは不思議な場所だ。
宿屋としての客はほぼいないのに料理屋として大繁盛店。
宿屋は諦めれば楽になるのに何故か客引きまでしてる熱心さだ。
女将に聞けば『だって、料理屋じゃあの人が見つけられないでしょ。』との事。
えっ、ご主人がいたのかと驚けば。

常連客曰く(幻の恋人に違いない。本人の願望で付き合ってなぞいない。)との事。

まあ、何が本当か分からないな。

でも、彼女が言うには待ち人は昔ギルドで冒険者をしていて彼女はその時ギルドの受付だったらしい。その時、お互いにひと目惚れた相手だったとか。

やっぱり妄想半分かな?

『あの人は、私が今ここに居るのを知らないのよ。冒険者と受付では中々込み入った話も当時は出来ないから。だから冒険者が泊まれる宿屋は止められないのよ。』
ニッコリ笑う女将

。。。

とにかく、ツッコミ所満載でもこの事について一言呟いた常連客があの箒でズタボロにされてたのは何度か見た。
この事とは関わらないのが得策だ。

まあ毎朝の賑やかな喧嘩風景は案外嫌いじゃない。草薙は本気にして怖がっているが多分彼らにとっては単なる息抜き。それに我々のような素人相手には何もすまい。

そんな風にいつもの朝を満喫していたら…。

事態は突然、一変する事になる。

『大変だよ。お上の手入れが入るらしいよ。』そう言って飛び込んできたのは隣で
雑貨屋兼武器屋を営むメルさん。
女将のお友達だ(やり手な所も一緒。)

『手入れ?!そんなのこんな場所でやるなんて聞いた事ねぇぞ。ほんとか?』
次々と騒ぐ荒くれ者の問いかけに、ザワりと嫌な予感を覚えた俺は聞き耳をたてた。

もしかして、我々のせいか。

嫌な予感が当たった気がして草薙を振り返れば小さく頷くのが見えた。やっぱり同じ考えだったようだ。

『アンタね。お上は普段はこんな場末には来ないんだよ。旨味がないからね。袖の下も大した金額出来ないしね。
だとすれば、手入れは誰かを狙ったものだね。』

やはりか。
更に嫌な汗で手が湿る。今更ここを離れても迷惑をかけるのに違いはない。
それでも一刻も早くここを離れなければならない。そうと決まったら早い方が良いと口を開こうとしたら。

『ああ、私、とうとう見つかったちゃったか。それでも10年はここで自由にしてたから仕方ないけど。』

えっ?

内容に追いつけない俺たちに、女将の言葉にメルさんたちが怒るセリフ更に驚く事になる。

『諦めちゃダメだよ。あの人に1目会いたいんだろ?狭い五大家を出てやっと掴んだ自由を簡単に手放すんじゃないよ!!』
『そうだよ!!』
『俺たちで女将は守るよ!!』
『あんなに不味い飯の時代からの仲間じゃないか!!最初の頃なんて食えたもんじゃなくて…』『馬鹿!!』『『黙れ!!』』

女将はもしかして訳ありなのか?
最後の余計な一言があって別の意味でまたややこしくなってるけれど、もしかしてこの手入れ、俺たちは関係ないのか?

希望的観測に縋りたくなるが、相手はジルでさえ手こずる相手なのだ。やはり俺たちに対する追手に違いない。

『女将さん、皆さん。
恐らく彼らの目的は俺たちです。俺たちがココから出ていけば被害は最小限に留められるかと。』
俺の言葉に草薙が続ける。
『そうです!!僕ら、ここと関係ない。そう言うしてもムリ。だからいきます。
ありがと。おせわしたから。』
うーん、まだカタコトか。また徹夜だな。
ふふふ。それにしても草薙め。さっきまでスラム街とか言ってたのに本当はここが気に入ってたんだな。

急ぐ我々を女将が止める。

『アンタ達が出ていく事はない。お上が来たってお客様は渡さないよ。
ココは行き場をなくしたもの達を受け入れる最後の砦なんだ。
そう言って、作った宿屋なんだよ。
まあ、任せておきな。私も本気をだすから!!』
女将の大きな声が響いて、周りの荒くれ者達がガハガハと笑う。朝と変わらぬ様子に
少し毒気を抜かれた。

温かい場所だ。だからこそ守らなきゃ。

『皆さん俺たちは大丈夫です。行く先はちゃんとあるので心配しないで下さい。でも女将の料理の虜なのでまた絶対訪ねます。』
そう言い終えて、急ぎ出口に向かおうとしたらこちらに向かって扉が凄い勢いで開いた。
と言うか、壊れた。遅かったか…。

バタン!!!!

『お前たち動くなーーー。これからお取調べだ!!』

ドカドカと踏み込んてくるお役人らしき人々が棒を持って我々を押さえ込もうと威嚇する。

『おー、臭い臭い。こんなドブみたいな場所によく人間が住めるもんだ。いや、人間じゃなかったか、お前たちは。はははは。
ドブネズミだったな。』
最後に入ってきたリーダーらしき男のセリフに笑いが込み上げる。

なんという定型文。
あまりのチープなセリフに草薙が変な顔になった(絶対心の中で爆笑してるな。)

『おや、少しはマシなおばさんがいるな。お前!!ついてこい。色々聞きたい事がある。まずは身体に聞いてやるか?』そう言って女将を手を掴んだのは、恐らくこの踏み込んだ役人の更に上役。

のそのそ入ってきて、エロ一直線とは。
救えない、馬鹿だ。でも、権力を持った馬鹿はとても厄介だ。

変な色目で女将をニヤニヤ見てるのもキショい。どっちがドブネズミだ!!
いや、ドブネズミに失礼か。

『離しな。あたしに手を出して無事でいられるとおもってるのかい?!』『ははは、お前ごときに手を出そうが誰も止められまい。やってみろ。、ほら、ほらほら。』

おぉ。馬鹿のする煽りのお手本を初めて目の前で見た。
でも実際見ると、とてつもなく嫌な気持ちになるな。草薙の顔色も怒気に近づいてきた。

揉み合う2人に止めに入りたい荒くれ者は、他のお役人に棒で抑え込まれてる。

こっちに引きつけるには…そう考えてチラッと草薙の方を見れば真顔で頷き返していた。気持ちは同じらしい。

『お役人さん。お探しなのは私だと思います。その方の手を離してください。』
前へ進み出た俺を見て、一瞬お役人が止まってジロジロとこちらに視線を向けた。

『うーむ。まあ言われている姿と少し違うがいいだろう。お前たちも連れていこう。』

女装を解いた俺たちは、人相書き通りなのだろう(宿屋で直ぐに元に戻ったのだ!!絶対もうしないと節約の神様に誓った。)

ん?お前たち《も》。

《も》???

『目当ては見つかったんだろ?早く彼女を離せ!!』
『はあ?そんな事約束した覚えなどない。お前らは言われた通りについて来ればいいのだ!』
『約束が違うぞ。その人は本当に関係ないのだから離せ!!』
いい合っている間にも、縄で拘束されてゆく俺たち。くっそー。
懐疑的は大切。会社で何度も学んだのに危機的状況に思わず。クッソ、どうすれば。

『少し遊んだら、解放してやるよ。』
『離せ!!私に、こんな、、、こんな事して!!』

何とかしたいと揉み合う2人に近づこうとしては縄に引っ張られる。

マジで痛い、けど諦めるか!!

めげずに何度も近づこうしたが、手首の縄が更に締まって痛みが強くなるだけだ。
どうすれば…。

隣で同様に草薙が暴れながら「痛い!!」と叫んでる。「テンプレは?こういう時こそ、テンプレでしょ!!」

痛みが酷いらしい。錯乱している。


役人に向かっていく猛者(荒くれ者)達も悪戦苦闘しているが、相手の人数が多くて無理そうだ。


頼む、誰か!!


『待たれよ。これは一体。
貴方の身分を明かしてください。』

救い主か?!
た、助かったのか。

突然現れた救いの主の背は小さい。
それでも覇気と威圧感が物凄い。

『むむ、ギルドマスター何故ココに。でもギルドには関係ない事だ。さっさと去れ!!』
この、存在感に怒鳴るなんてすごい。
怒鳴っているせいか、俺の縄が締まって手首が痛む。

『ではこれではどうですか?』
隣のフードを被った大男が割って出てきて
役人の上役らしき男に何かを差し出した。

紙?

『む?むむむむ。むむむむむむむむむ』

唸りあげた後、暫く固まった役人がボソッ呟いた。

『て、撤退。』

嫌そうな顔で俺たちの縄を解いて出ていこうとしたら、その後ろ姿に向かってフードの男が一言。

『所属を言いなさい。そのまま帰れると思わないように。』静かな声なのに、覇気のある声は、どこかで聞いた事のある気がするが…。

『私は、義、、義、、義の大家の傍流。
【存】の家付き騎士団付き、取り締まり第1部隊  第3班付き白部隊のリーダーです。』

。。。えーーっと。。。

誰かの下の更に下の…。
ま、とりあえず下っ端決定だな。

『分かった。では上役に私を相手にしたと伝える事。その先の処罰は上役がするでしょうからさっさと帰りなさい。』
おぉ、えぐっ。

リーダーらしき男の顔色は青を通り越して真っ白。帰ったら無事では済まないんだな、こりゃ。
ふーむ。このフードの男、意外に厳しい人だな。

しかし、この声。どこかで。。。

そうだ!!


『【剛腕】!!来てくれたのねーーー!!!』
『村長だ!!』

重なった2つの声の後、静かな草薙のツッコミが入った。


「えっ?先輩、今頃??でも女将の【剛腕】って呼び名はまさか店長のあだ名?!
だとすれば…」

『矢作様、遅くなりました。』フードを取ってこちらを振り向いた村長がいつもの笑みでこっちを見た。

ホッとしたい…けど。
鈍い俺でも気づきました。

待ち人来たる。。だな。

なのに、その待ち人が俺の方しか見ないのから、女将が般若になりかけてるし。

混沌と化したこの場を収めたのは背の低いギルドマスター。

『まずは建物が崩れそうだから、覇気を止めろよ。
そして女将は落ち着いて話をしたいから、矢作様達とギルドへ来てくれ。』

「でたーーーギルドだぁーーー」

頷く村長と女将に変わって、騒ぎ出した草薙の頭を叩く。

しかし、草薙が組合(ギルド)に興味があるとはお驚きだ。
漫画とアニメ一色かと思っていたのに。

よーーし。
今夜の勉強は、組合についての職業用語を徹底的にやるか。

俺のやる気を感じたのか、草薙が身震いをした。






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