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第二章

第十三話

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「Hey bro, I'll go to spar later, you wanna come? (兄弟、俺後でスパー (スパーリングの略で、ボクシングの実践練習)しに行くんだけど来るか?) I heard the story about the party, you beat some dude. (パーティーの話聞いたよ、誰かぶっ飛ばしたんだろ。)」
Patが席を立ちながら言った。

よけいなこと言いやがってとCoryを睨んだが、Patからの誘いは願ってもない事だった。
この大学にボクシング部があることは事前に調べていたので、俺は日本からバンテージ(拳を守るために巻く包帯のようなもの)とボクシングシューズを持ってきていた。
一度は練習に参加したいと思いながらも、ずっと行けずにいたのだ。

「Yeah, most definitely. (おう、絶対行くわ。)」
Patと夕方に合流する約束をし、俺たちは各々授業に向かった。

10月も半ばに入り、紅葉が本格的に色付き始め、陽が沈むのも早くなっていた。

「Bro, about Yuri thing. (兄弟、友梨のことなんだけど。) 」
俺はPatと練習場に向かう道中、先程気になったことを聞いてみた。

「Why do you wanna take the trouble to write a letter? (何でわざわざ手紙書きたいの?) You can just tell her what you got in your mind face to face, that's hella simple. (その子に面と向かって思ってること言えばいいじゃん、超簡単だよ。)」 
出会ってまだ数時間だったが、すでに俺たちは打ち解け始めていた。友情は一瞬で国境を越えるのだ。
「It's fucking embarrassed but I couldn't even talkt to her. (くそ恥ずかしいんだけど、あの子に話しかけんのですら無理だよ。)」
Patは少し照れながらも、当然だというような顔でそう答えた。
どんだけ純情なんだよと思ったが、彼の言葉には嘘がなかった。

「How about the spar, you gonna fight in an hour, are you nervous? (じゃあスパーはどうなんだよ、今から一時間以内にやるんだぜ、緊張しないの?)」
「Never. (全く。)」
Patは満面の笑みを浮かべていた。

ボクシング部の練習場は、様々なスポーツ施設が併設されている体育館のような建物の中にあった。
地下には50mプールがあり、一階にはバスケットコートやテニスコートまで設置されていた。
想像をはるかに上回る設備の良さに感動しながらも、練習場に近づくにつれ緊張が高まっていった。

「You ready to watch my fight? (俺のスパー楽しみか?)」
アメリカ人はボクシングの試合やスパーリングに対してもFight(戦い、ケンカ)という表現を多く使う。
「Yeah, show me some good shit. (おう、かっこいいとこ見してよ。)」
俺たちはそんな会話を交わしながら練習場に入って行った。
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