【完結】週刊誌の記者は忘れられない

若目

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父親の意地

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神木は学校側のあまりに不誠実な対応にいら立ち、我慢ならなくて声をあげたのだろう。

彼のけたたましい怒鳴り声が響いた後、ほかの保護者がざわつく声と、彼の言葉に賛同を示すかのような拍手の音が聞こえてきた。

『あ…も、申し訳ありませんでした。えー、黙祷!』
神木に怒鳴られて、あわてたような校長の声が続いたかと思うと、1分間の沈黙。
そして、神木の詰問が始まった。

『この保護者会が開かれるにあたって、「報道に関しての説明をします」って最初に聞いたんですよ。
言っていたはずですよね?

この学校に通ってる子どもたちはもちろん、ここにいる大半の人は、SNSも報道内容もすべて見ているはずです。
それについての説明をしてくれるのかと思えば、何なんですかこれは⁈何の説明もない!

先生がた、僕は週刊文士の報道を見て、あんなおぞましいものを見て、涙が出ましたよ!
この学校に子どもを通わす親として、大丈夫なのかって、どうなのかって、不安に思います!

その上で、第三者委員会なんてもんを組んで、「アレはいじめじゃない」と判断して、さらにこんな中途半端な説明会を開いて、こんなんではちっとも納得できません!

何か聞いたら二言目には「第三者委員会により調査中」とか「検討します」とか「答えられません」って…やるんであればね、もう一度記者会見を開いて、「いじめはありませんでした」ってしっかり胸張って言ってくださいよ!

週刊文士に書いてあったことが事実か事実じゃないかくらい、はっきり言えると思いませんか?
週刊文士の記者さんが、事の経緯や内情をあれだけ事細かに書いているんだから!

記事を読みましたよ!
向こうの親御さんに言われて、渋々ながら謝罪の場を設けたはいいけれど、向こう側の弁護士さんは参加できなかったって言うし、その際に先生たちは誰ひとりいなかったし、録音さえも許されなかったそうじゃないですか!!

それに対して、発言すらできないなんて、これは立派な隠蔽じゃないんですか?学校側が隠蔽しようとしたってことなんじゃないですか⁉︎

つい長々と、余計なことは言いたくないですがね…ついね、僕も言ってしまいました。

どうなんですか?ここにきてもまだ結論も出せないんですか?』

息も絶え絶えに、神木は立て続けに訴えた。

『これだけの発言をするってことはね、僕だって覚悟を持って言っていますよ!
「あの人はどこの誰だ?誰のお父さんだ?何を言ってるんだ?」と言われることだって覚悟の上で申し上げています!!』

──なんともまあ、たくましい…

こんなに頼もしい男がそばにいる妻と子どもはどんなに心強いだろうかと、敏雄は顔も知らない神木の妻子のことを考えた。

『あー、それは…この場でお答えできないことは本当に心苦しいんですが、その、同じような回答になってしまうんですが、私からでもお話しできないような状況となっておりますので、本当に申し訳ございません』
予想通りではあったが、校長の答えは相変わらず煮え切らないままだった。

その後も、「現在、加害者側の生徒の処分はどうしているのか」「自分の子が同じ中学校の制服を着ているだけで知らない人に肩をぶつけられた。安全のために私服での登校は可能か」など保護者からの質問は続く。

これは神木に後から聞いた話だが、何度も同じことを言うだけの学校側に業を煮やしたのか、何人かの保護者はこの時点で「もはやここにいても意味が無い」と判断して、帰っていってしまったそうだ。

敏雄が取材に行った際、保護者会がまだ終わっていないのに、帰っていく保護者が何人もいたのはこういうことだったのだ。
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