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第2編 消えた人々の行方
街へ向かって
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まだウォルターが野獣だった頃、ジャンティーが家族の元へ帰りたいと願い出たときに渡した魔法の指輪だ。
これは現在、結婚指輪としてジャンティーとウォルターの左手薬指にはめられている。
ふたりの絆と愛の象徴たる指輪を、ジャンティーは片時も離すことなく指にはめ続けていた。
「わかっています、ウォルター様。それにしても、これを使うのはだいぶ久しぶりですね。さっそくですけれど、行って参ります。その間、お父さまをよろしくお願いしますね」
「ああ、いってらっしゃいジャンティー。気をつけて」
ウォルターは自室のベッドに潜り込んだジャンティーに手を振って見送った。
──────────────────────
次の瞬間、ジャンティーは以前住んでいた一軒家の居間に建っていた。
この家は、ウォルターと結ばれてすぐの頃に引き払ってしまってから空き家になっており、未だに後の入居者はいないようだった。
ジャンティーが何気なく窓の外を見ると、かつて自分が耕していた畑が目に飛び込んできた。
畑は長きにわたってほったらかしにされ、ろくに手入れされていないからか、雑草がぼうぼうに伸び切って、下の土はほとんど見えなくなっていた。
狭い室内は閑散としていて、掃除が行き届いていないのか、至るところに埃が積もっている。
──街から帰ったら、ここを少し掃除しよう
いつかここに来るであろう後の住人のことを考えつつ、ジャンティーは埃まみれの部屋を通り抜けた。
玄関ドアを開けると、見覚えのある景色が視界に入り込んでくる。
──なんて懐かしい!
ジャンティーは、少し離れた場所にある街を見やった。
一軒家や屋台が立ち並び、石畳が敷かれた中を人々が行き交う。
かつてのジャンティーは、あの中に溶けこんで働いていたのだ。
面倒を見てくれた仕事先の親方に、よく一緒に仕事をした同僚のモールにガブリエル。
彼らは元気だろうか。
いまも街で働いているのだろうか。
早く彼らに会いたくて、ジャンティーは街まで駆けていった。
そんなジャンティーの後ろで、空き家のドアがバタンとひとりでに閉まったことなど気づきもせずに。
─────────────────────
街中に着くと、ジャンティーは息を切らして、その場に立ち尽くした。
焦って走ってきたものだから、肺が酸素を欲しているのだ。
ジャンティーは息を整えながら、街を見回した。
幼い子の手を引く母親、通行人におひとついかがと呼び込む商人、誰かがパンを焼く匂い、魚を卸しにやってきた漁師、広場でたむろして井戸端会議する女性たち。
そのどれもが懐かしくて、ジャンティーはしばらく街の景色を眺めていた。
しかし、そんな懐かしさに心躍らせていられたのも束の間。
ジャンティーは水が欲しくなってきた。
長いこと荒い呼吸を繰り返していたものだから、喉が渇いたのだ。
──たしか、あっちに井戸があったはず
記憶の中にある井戸を目指して、ジャンティーは歩いた。
案の定、井戸はすぐに見つかり、ジャンティーはそこから汲んだ水を手ですくって飲んだ。
「おい、お前。ひょっとしてジャンティーか?」
その瞬間に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
これは現在、結婚指輪としてジャンティーとウォルターの左手薬指にはめられている。
ふたりの絆と愛の象徴たる指輪を、ジャンティーは片時も離すことなく指にはめ続けていた。
「わかっています、ウォルター様。それにしても、これを使うのはだいぶ久しぶりですね。さっそくですけれど、行って参ります。その間、お父さまをよろしくお願いしますね」
「ああ、いってらっしゃいジャンティー。気をつけて」
ウォルターは自室のベッドに潜り込んだジャンティーに手を振って見送った。
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次の瞬間、ジャンティーは以前住んでいた一軒家の居間に建っていた。
この家は、ウォルターと結ばれてすぐの頃に引き払ってしまってから空き家になっており、未だに後の入居者はいないようだった。
ジャンティーが何気なく窓の外を見ると、かつて自分が耕していた畑が目に飛び込んできた。
畑は長きにわたってほったらかしにされ、ろくに手入れされていないからか、雑草がぼうぼうに伸び切って、下の土はほとんど見えなくなっていた。
狭い室内は閑散としていて、掃除が行き届いていないのか、至るところに埃が積もっている。
──街から帰ったら、ここを少し掃除しよう
いつかここに来るであろう後の住人のことを考えつつ、ジャンティーは埃まみれの部屋を通り抜けた。
玄関ドアを開けると、見覚えのある景色が視界に入り込んでくる。
──なんて懐かしい!
ジャンティーは、少し離れた場所にある街を見やった。
一軒家や屋台が立ち並び、石畳が敷かれた中を人々が行き交う。
かつてのジャンティーは、あの中に溶けこんで働いていたのだ。
面倒を見てくれた仕事先の親方に、よく一緒に仕事をした同僚のモールにガブリエル。
彼らは元気だろうか。
いまも街で働いているのだろうか。
早く彼らに会いたくて、ジャンティーは街まで駆けていった。
そんなジャンティーの後ろで、空き家のドアがバタンとひとりでに閉まったことなど気づきもせずに。
─────────────────────
街中に着くと、ジャンティーは息を切らして、その場に立ち尽くした。
焦って走ってきたものだから、肺が酸素を欲しているのだ。
ジャンティーは息を整えながら、街を見回した。
幼い子の手を引く母親、通行人におひとついかがと呼び込む商人、誰かがパンを焼く匂い、魚を卸しにやってきた漁師、広場でたむろして井戸端会議する女性たち。
そのどれもが懐かしくて、ジャンティーはしばらく街の景色を眺めていた。
しかし、そんな懐かしさに心躍らせていられたのも束の間。
ジャンティーは水が欲しくなってきた。
長いこと荒い呼吸を繰り返していたものだから、喉が渇いたのだ。
──たしか、あっちに井戸があったはず
記憶の中にある井戸を目指して、ジャンティーは歩いた。
案の定、井戸はすぐに見つかり、ジャンティーはそこから汲んだ水を手ですくって飲んだ。
「おい、お前。ひょっとしてジャンティーか?」
その瞬間に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
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