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第2編 消えた人々の行方
策謀
しおりを挟むジャンティーには、妹が2人いるという。
また、最近になって父親が新しい事業を始めたとも話した。
そこから、モールはある可能性に賭けてみようと考えた。
もしジャンティーの父親の事業が軌道に乗れば、一家はまた元の羽振りを取り戻すことができるはずだ。
過去に商売で成功した実績はあるのだから、可能性は皆無とは言えない。
その可能性を考えれば、ジャンティーと親しくしておくのが得策ではないか、とモールは思い至るようになった。
たいぶ運が良ければの話だが、親しくしているうちに妹を紹介してくれるかもしれない。
商売が繁盛した頃合いに、ジャンティーの妹のどちらかと結婚までこぎつけることができたら、金に不自由しない薔薇色の生活が自分を出迎えてくれている。
どちらかといえば女性受けは良いほうだし、ジャンティーの話を聞くに、妹たちもあまり世間を知らないようだった。
それなら、尚のこと都合がいい。
おそらく、深窓育ちの令嬢にとっては、庶民の男など未知の生き物に近しい存在だろう。
その未知の部分に興味を抱いてもらえば、たらしこむのはそう難しいことではない。
下品だとか粗野だとか思われて嫌がられることも考えられるから、とんだ大博打ではあるが、やってみる価値はある。
この価値に気づいたモールは、ジャンティーの指導を任されたことを大きな好機と考えることにして、仕事に打ち込んだ。
ジャンティーは深窓育ちだけあってか非力で仕事が遅く、何度もイラつかされた。
何の苦労も知らない元お坊ちゃんと働かされることが、モールにはこの上もない不満だった。
しかし、後に手に入るかもしれない得を考えれば、まだ堪えることができた。
概ねモールの思惑通り、ともに仕事しているうちに、ジャンティーは自分に懐いてきた。
仕事が終わった後は、ともに飲みに行ったり、多少なりとも家族や家のことを話すくらいには仲が進展した。
これも深窓育ちゆえであろうか、ジャンティーは人を疑う術を知らないのか、かなり不用心に自分についての話をした。
家計の復興は変わらずうまくいっていないこと、妹たちの浪費に悩んでいること、ときどき亡き母親が恋しく感じてしまうこと……
モールが望む未来はまだまだ先だが、ジャンティーをうまく手懐けることには成功した。
しかし、今度は半年も見かけなくなり、もしや事業が波に乗り出したのを機に去っていたのかとか、こちらの思惑に気づいて逃げたのかと思ったが、ジャンティーはまたやって来た。
しかも、以前よりずっと洗練された身なりで。
とはいえども、内面は相変わらずだ。
仕えている屋敷の場所や主人の名前は、主人の意向で話せないと言うものの、自分や父親の現状はあっさり話した。
結果、商売は失敗したが運良く大きな家の大きな懐の主人の下で働くことができ、その主人から高価な服や宝石類をもらうこともあると話した。
モールが半ば強引に「見せてくれ」と頼んでも、ジャンティーはさほど抵抗することもなく、身につけている宝石を無防備に晒した。
そんなジャンティーのスキをついて、モールは高価なブレスレットをくすねることに成功した。
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