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第2編 消えた人々の行方
モールの秘密
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「おいこら、モールよ。金は返せるんだろうな?」
家の前に待ち伏せしていた借金取りに迫られて、モールはたじろいだ。
「も、もちろん!ほら、この通りだ」
モールは、先ほど質屋で受け取った金貨が入った布の袋を借金取りに手渡した。
借金取りは袋を開けると、中に入っていた金貨の枚数を確認した。
「なるほど、たしかに…」
口ではそういうものの、借金取りの表情はどこか訝しげだった。
家や着ているものは粗末だし、ついこないだまでギャンブルで作った借金や飲み代のツケに追われていた目の前の男が、どうやってこんな大金を短期間のうちに用意できたのか。
「たしかにあるだろう?もう金は返したんだ。もう帰ってくれないか?」
「わかったよ。じゃあな、二度と踏み倒したりするんじゃねえぞ!」
疑問は残れども、貸した金を回収できたならそれで良しと考えて、借金取りはその場を去っていった。
モールは、借金取りの背中が遠のいていき、やがて豆粒ほどの大きさに感じるまで遠くに消えていったのを確認すると、家に入った。
家の中は閑散としていた。
家具と呼べるものはほとんどなく、あるものといったら粗末な椅子とテーブル、硬い木のベッドのみ。
そのテーブルや椅子には、汚れた衣類や酒瓶や借金の督促状なんかが無造作に置かれ、散らかり放題だった。
モールはベッドにどっかと座ると、そばに置いてあった飲みさしの酒瓶を手に取った。
中に入っていた酒を一気に口に流し込むと、ほんのり体が熱くなり、気分もわずかに高揚してきた。
「ふうーっ…」
モールは酒瓶から口を離すと、思い切り熱い息を吐き出した。
今日は、モールにとってはかなり運のいい日だった。
これはいわば、祝い酒のようなものであった。
──借金が返せたのは、ホントにありがてえ
モールは空になった酒瓶を、放り投げるように床に転がした。
硬い床に当たった酒瓶に、バキッと亀裂が走る。
──アイツに愛想良くしてやって、正解だったな
暗がりの中、モールはひとりほくそ笑んだ。
─────────────────────
モールは、ジャンティーと初めて会ったときのことを思い出した。
この街の住人たちと比べると、はるかに身なりがよく、言葉遣いや仕草がどこかお高くとまっている彼を見て、モールは大体のことを察した。
名前をジャンティーと名乗った彼から話を聞いてみると、概ね予想通りの事情を抱えていた。
彼は元は裕福な商人の息子であった。
しかし、父親の事業が失敗して破産。
以前住んでいた大きな屋敷や所有していた家財道具をすべて売り払って、この街にやってきたのだという。
それを知ったとき、モールはなんて月並みな不幸話だろうかと、何の気なしにジャンティーの話を聞いていた。
同時に、ざまあみろと嘲笑ったりもした。
たまたま生まれた親が違うだけで、いい暮らしをしている金持ちのご子息様が、今やみじめにも庶民と働かなくてはならないなんて、なんて愉快なことだろう。
反面、ジョワイユ親方からジャンティーの世話係を任されたときほど、辟易したことはない。
しかし、ジャンティーと接していくうち、モールはあることを思い付いた。
家の前に待ち伏せしていた借金取りに迫られて、モールはたじろいだ。
「も、もちろん!ほら、この通りだ」
モールは、先ほど質屋で受け取った金貨が入った布の袋を借金取りに手渡した。
借金取りは袋を開けると、中に入っていた金貨の枚数を確認した。
「なるほど、たしかに…」
口ではそういうものの、借金取りの表情はどこか訝しげだった。
家や着ているものは粗末だし、ついこないだまでギャンブルで作った借金や飲み代のツケに追われていた目の前の男が、どうやってこんな大金を短期間のうちに用意できたのか。
「たしかにあるだろう?もう金は返したんだ。もう帰ってくれないか?」
「わかったよ。じゃあな、二度と踏み倒したりするんじゃねえぞ!」
疑問は残れども、貸した金を回収できたならそれで良しと考えて、借金取りはその場を去っていった。
モールは、借金取りの背中が遠のいていき、やがて豆粒ほどの大きさに感じるまで遠くに消えていったのを確認すると、家に入った。
家の中は閑散としていた。
家具と呼べるものはほとんどなく、あるものといったら粗末な椅子とテーブル、硬い木のベッドのみ。
そのテーブルや椅子には、汚れた衣類や酒瓶や借金の督促状なんかが無造作に置かれ、散らかり放題だった。
モールはベッドにどっかと座ると、そばに置いてあった飲みさしの酒瓶を手に取った。
中に入っていた酒を一気に口に流し込むと、ほんのり体が熱くなり、気分もわずかに高揚してきた。
「ふうーっ…」
モールは酒瓶から口を離すと、思い切り熱い息を吐き出した。
今日は、モールにとってはかなり運のいい日だった。
これはいわば、祝い酒のようなものであった。
──借金が返せたのは、ホントにありがてえ
モールは空になった酒瓶を、放り投げるように床に転がした。
硬い床に当たった酒瓶に、バキッと亀裂が走る。
──アイツに愛想良くしてやって、正解だったな
暗がりの中、モールはひとりほくそ笑んだ。
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モールは、ジャンティーと初めて会ったときのことを思い出した。
この街の住人たちと比べると、はるかに身なりがよく、言葉遣いや仕草がどこかお高くとまっている彼を見て、モールは大体のことを察した。
名前をジャンティーと名乗った彼から話を聞いてみると、概ね予想通りの事情を抱えていた。
彼は元は裕福な商人の息子であった。
しかし、父親の事業が失敗して破産。
以前住んでいた大きな屋敷や所有していた家財道具をすべて売り払って、この街にやってきたのだという。
それを知ったとき、モールはなんて月並みな不幸話だろうかと、何の気なしにジャンティーの話を聞いていた。
同時に、ざまあみろと嘲笑ったりもした。
たまたま生まれた親が違うだけで、いい暮らしをしている金持ちのご子息様が、今やみじめにも庶民と働かなくてはならないなんて、なんて愉快なことだろう。
反面、ジョワイユ親方からジャンティーの世話係を任されたときほど、辟易したことはない。
しかし、ジャンティーと接していくうち、モールはあることを思い付いた。
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