ハートの瞳が止まらない

若目

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映画

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「うあッ…」
五井の手の甲の感触に驚いた真広は、体をビクッと震わせた。
一方で、五井も少々驚いた様子を見せた。
「いつにも増してすごい汗だな。ひょっとして体調悪いのかな?やっぱり帰ろうか?」
五井の手が離れていく。
その手は真広の汗でベタベタに濡れていて、まるで手を洗った後みたいだった。
「あ、大丈夫です。別に、汗かくのはいつものことなので…」
真広は、より一層汗が吹き出すのを感じて、少し恥ずかしくなってしまった。
汗っかきの自覚はあったけれど、それをこんなふうにまざまざと見せられると、ついつい意識してしまう。
ひょっとして、臭ったりしていないだろうか。
汗拭きシートを持っていくべきだったかもしれない。

「そうかい。しんどくなったりしたら、すぐに言うんだよ?」
「はい…」
五井の優しさに、真広はまたもときめいてしまった。
緊張のあまり、みっともなく汗をかく自分を、こうも丁重に扱ってくれるなんて。
淡々としつつも自分を気遣ってくれるその態度に、真広は大人の余裕を感じた。

「何か買おうか。食べたいものとかはある?」
五井が売店のカウンターを指差す。
「あ、はい…」
真広が返事するのと同時に、2人してカウンターに向かう。
このとき、真広は五井より一歩前に出るようにしてカウンターに並んだ。
いつもみたいに五井の後につくようにして並んだりすると、また五井に払わせてしまうからだ。
案の定、五井は真広が注文したアイスティーの料金まで払おうとした。
「これぐらいは自分で払いますから」
「…ああ、わかった」
「いや、払うよ」と返される可能性も考えていたが、五井は割とあっさり引き下がるようにして了承した。
「これでお願いします!」
それをありがたく思いつつ、真広はポケットからスマートフォンを取り出して、半ば急かすように従業員にバーコードを見せると、従業員はそれをすぐさま読み取って会計を済ませた。

真広は会計を済ますと、後ろで並んでいる人たちにレジを譲るべく、急いでカウンターから離れた。
その後ろで、五井はアイスコーヒーを注文するさっさと会計を済ませて、さっさと真広のところへやって来た。

「お待たせ。さ、行こうか」
「はい…」
真広はアイスティー、五井はアイスコーヒーを片手に暗い館内に入っていった。
館内では、すでに何人かの客が席に着いており、近日に公開される映画の予告も始まっていた。

「こっちだよ。Mの13番と14番。一番後ろの席だね」
五井が囁くような声で席番号と位置を伝えてくれた。
なるだけ足音を立てないように、ゆっくりゆっくり進んで席に着くのとほぼ同時に、映画が始まった。
それ以降は二人とも、黙ったままスクリーンに視線を向けた。

映画の内容自体は面白い。
だけど真広は隣に座っている五井の様子が気になって、15分に1回くらいのペースで横を向いてしまった。
おかげで、映画の内容は半分くらいしか頭に入ってこなかった。
そんな真広とは違い、五井はずっとスクリーンに釘付けだった。
少なくとも、真広の目にはそんなふうに見えていた。


実際は、真広が何度も横を向いては自分の様子を伺っていたことに、五井は気づいていたのだけど。
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