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バイト先で
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翌日、真広は朝早くに家を出て、バイト先の喫茶店に向かっていた。
今日の講義は午後からだから、午前中にバイトを入れておいたのだ。
五井はいつもこの時間帯にやってくるから、きっと五井に会える。
時間に充分余裕はあるし、遅れる心配なんて全くないのだけれど、早く五井に会いたくて、ついつい急ぎ足になってしまう。
あまりに急いだものだから、途中で一度転んでしまいそうになった。
バイト先の喫茶店に到着すると、真広はウキウキとはずむ気持ちを抑えつつ、更衣室に入って、後ろ手でエプロンの紐を結んだ。
ふと、更衣室の壁に立てかけてある姿見が目に入った。
鏡の中の自分の髪が乱れているのに気がついた真広は、手櫛で自分の髪を整え始めた。
──ああ、クシを持ってくればよかった!
こんなみっともない姿で、五井に会うなんてできない。
初めてデートに向かう女の子みたいに、真広は入念に自分の姿をチェックした。
「おはようございます!」
「おはよう、ヒロちゃん」
店内に向かうと、嗅ぎ慣れたコーヒーの匂いが鼻腔をくすぐった。
真広はさっそく、店内を見回してみた。
そばの席ではサンドウィッチをかじる女性客、少し奥のテーブル席には夜の現場仕事からの朝帰りと思わしき作業着姿の若い男性客、トイレ近くの席には散歩帰りと思わしき高齢男性。
そして、予想通り。
隅の方の席に五井が座っていた。
すでにコーヒーを注文していたらしく、片手にカップを持ちながら新聞を読んでいる。
五井の姿を目にした途端、真広はドキドキと動悸がして、腰のあたりがほんのり疼くのを感じた。
ちょうどそのとき、マスターの「ありがとうございましたー!」という威勢のいい声が聞こえた。
作業着姿の若い男性客が立ち上がって、店を出ようとレジまでやってきたのだ。
会計のため、マスターがレジまで向かうと、真広は「ありがとうございました!」とマスターに倣うように挨拶の言葉を放ち、男性客が使っていたコーヒーカップや皿、ティースプーンを片付けるため、布巾とアルコール消毒液が入ったスプレーボトルをトレンチに置き、それを持ってさっき男性客が座っていた席まで向かった。
男性客が使っていた席の後片付けを済ませて持ち場に戻る途中、真広はこっそり五井の座っている席まで近づいていった。
「今日、講義が終わった後に来ますね」
五井に向かって囁くと、五井は新聞から少しだけ顔を上げて、「ああ」と短く返事した。
五井はその後、新聞を読み終えると、いつものようにパソコンで作業し始めて、しばらく経つと帰っていった。
彼がレジに向かったとき、ちょうどマスターが奥に引っ込んでいたため、真広は会計するときにも五井と接触することができた。
会計時、五井はいつものごとく静かに会釈したけれど、そのときに「待ってるよ」と囁いたのを、真広は聞き逃さなかった。
朝はもともと客の出入りが少ないことが多く、大抵は時間が余ることが多い。
今日も客の出入りに変化はなく、真広はバイトを終えるとマスターに別れを告げ、喫茶店を出た。
今日の講義は午後からだから、午前中にバイトを入れておいたのだ。
五井はいつもこの時間帯にやってくるから、きっと五井に会える。
時間に充分余裕はあるし、遅れる心配なんて全くないのだけれど、早く五井に会いたくて、ついつい急ぎ足になってしまう。
あまりに急いだものだから、途中で一度転んでしまいそうになった。
バイト先の喫茶店に到着すると、真広はウキウキとはずむ気持ちを抑えつつ、更衣室に入って、後ろ手でエプロンの紐を結んだ。
ふと、更衣室の壁に立てかけてある姿見が目に入った。
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──ああ、クシを持ってくればよかった!
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初めてデートに向かう女の子みたいに、真広は入念に自分の姿をチェックした。
「おはようございます!」
「おはよう、ヒロちゃん」
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ちょうどそのとき、マスターの「ありがとうございましたー!」という威勢のいい声が聞こえた。
作業着姿の若い男性客が立ち上がって、店を出ようとレジまでやってきたのだ。
会計のため、マスターがレジまで向かうと、真広は「ありがとうございました!」とマスターに倣うように挨拶の言葉を放ち、男性客が使っていたコーヒーカップや皿、ティースプーンを片付けるため、布巾とアルコール消毒液が入ったスプレーボトルをトレンチに置き、それを持ってさっき男性客が座っていた席まで向かった。
男性客が使っていた席の後片付けを済ませて持ち場に戻る途中、真広はこっそり五井の座っている席まで近づいていった。
「今日、講義が終わった後に来ますね」
五井に向かって囁くと、五井は新聞から少しだけ顔を上げて、「ああ」と短く返事した。
五井はその後、新聞を読み終えると、いつものようにパソコンで作業し始めて、しばらく経つと帰っていった。
彼がレジに向かったとき、ちょうどマスターが奥に引っ込んでいたため、真広は会計するときにも五井と接触することができた。
会計時、五井はいつものごとく静かに会釈したけれど、そのときに「待ってるよ」と囁いたのを、真広は聞き逃さなかった。
朝はもともと客の出入りが少ないことが多く、大抵は時間が余ることが多い。
今日も客の出入りに変化はなく、真広はバイトを終えるとマスターに別れを告げ、喫茶店を出た。
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