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帰り道
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──みんな、若くてキレイだな……
自分と違って華やかで若い女の子たちを見て、久実子はほーっとした。
彼女たちのミニスカートから伸びた足は雪のように白く、陶器のようにすべすべだ。
「ダークサイド・ストーリー」のファン層は大体が20代半ばなので、久実子は中心年齢層からは少し外れていることになる。
キャピキャピと楽しそうにはしゃぐ彼女たちと、自分たちのグループを見比べた。
彼女たちと比べると、マキナを除いてはみんな見劣りしている気がする。
お世辞にも華やかとは言えない。
自分もそのひとりだ。
久実子は下を向いた。
おろしたての靴と、スカートの裾が視界に入り込む。
──流行りのマーメイドスカートにしてみたけど、ちょっと派手だった?そういえば、店員さんがわたしたちを見て引いてたような気がする
中には、あからさまに久実子たちを見てクスクス笑っている店員もいた。
久実子と違って、華やかさが際立つ若い女性店員だ。
しっかり整えたストレートの黒髪にシャンパンゴールドのインナーカラー、ナチュラルな黒のカラーコンタクト、泣きはらしたような赤いアイシャドウが特徴的な、いかにもいまどきの若者といった風体の女の子だ。
彼女はきっと、自分たちのことをこんなふうに他に話すんだろう。
「わたし、コラボカフェでバイトしたことあるんだけどさ、ああいうところって、すっごい痛い集団が来るんだよねー。一人称が「オレ」とか、異様な早口に甲高い声で話す女オタとか!やばいやばい!」
「あの人たちさ、センスもやばいの!服はヒラヒラフリフリでかわいいのに顔はすっぴんメガネとか、ドクロとかクロスとかプリントされた裾のやたら長い黒シャツとか着てるんだけど、顔はイモくさくて体格も貧相だから、完全に服に着られてるんだよ。マジで大笑い。中にはちゃんとした清楚な美人もいるけど、そういうのは例外中の例外。ほんと笑えるわ!」
そんな若い彼女を見ても、不思議と後ろめたい気持ちにならない自分に、久実子は居心地のいい優越感を感じた。
──笑いたいなら、好きなだけ笑えばいいわ。バカにしたいんなら好きなだけバカにすればいい。わたしは他人の目なんか気にしない。わたしは、わたしの楽しいと思うことをひたすら追求して生きていく!
我ながら、なんて素晴らしい決意なのだろうか。
ずっと待ち焦がれていたコラボカフェに行けた久実子の気分はうなぎ上りで、それに合わせるようにして、久実子はメガネの位置をクイと押して上げた。
──────────────────────
「きゃさりんさんのアレちょっとひどくない?」
駅構内。
改札口まで一緒に向かう途中で、ウツミが突然切り出した。
「え?ああ……まあ、ちょっとびっくりしましたね」
ウツミが言っているのはおそらく、先ほどカフェで動画の再生回数が最近伸びないことを口に出されたことであろう。
「きゃさりんさんホントに困りモンだよね。ひとりでボーっとしててぜんぜん何にも話さないかと思ったら突然あんなこと言うんだもん。それで毎回周りがヘンな空気になってもお構いなしだし」
ほとんど息継ぎもなしに、ウツミは愚痴をこぼし続けた。
その活発に動く唇の上に、うっすらうぶ毛が生えているのが確認できた。
「はあ……」
そうですね、なんて肯定していいものなのかもわからない久実子は、曖昧に相槌を打った。
「困りモンって言ったらハイリさんもだよね。今日のカッコもすごかったし。あの人ガイコツとかクロスとかのシルバーアクセやたらつけてるでしょ?ピアスの量もすごいし。アレはカッコいいつもりなのかな?」
自分と違って華やかで若い女の子たちを見て、久実子はほーっとした。
彼女たちのミニスカートから伸びた足は雪のように白く、陶器のようにすべすべだ。
「ダークサイド・ストーリー」のファン層は大体が20代半ばなので、久実子は中心年齢層からは少し外れていることになる。
キャピキャピと楽しそうにはしゃぐ彼女たちと、自分たちのグループを見比べた。
彼女たちと比べると、マキナを除いてはみんな見劣りしている気がする。
お世辞にも華やかとは言えない。
自分もそのひとりだ。
久実子は下を向いた。
おろしたての靴と、スカートの裾が視界に入り込む。
──流行りのマーメイドスカートにしてみたけど、ちょっと派手だった?そういえば、店員さんがわたしたちを見て引いてたような気がする
中には、あからさまに久実子たちを見てクスクス笑っている店員もいた。
久実子と違って、華やかさが際立つ若い女性店員だ。
しっかり整えたストレートの黒髪にシャンパンゴールドのインナーカラー、ナチュラルな黒のカラーコンタクト、泣きはらしたような赤いアイシャドウが特徴的な、いかにもいまどきの若者といった風体の女の子だ。
彼女はきっと、自分たちのことをこんなふうに他に話すんだろう。
「わたし、コラボカフェでバイトしたことあるんだけどさ、ああいうところって、すっごい痛い集団が来るんだよねー。一人称が「オレ」とか、異様な早口に甲高い声で話す女オタとか!やばいやばい!」
「あの人たちさ、センスもやばいの!服はヒラヒラフリフリでかわいいのに顔はすっぴんメガネとか、ドクロとかクロスとかプリントされた裾のやたら長い黒シャツとか着てるんだけど、顔はイモくさくて体格も貧相だから、完全に服に着られてるんだよ。マジで大笑い。中にはちゃんとした清楚な美人もいるけど、そういうのは例外中の例外。ほんと笑えるわ!」
そんな若い彼女を見ても、不思議と後ろめたい気持ちにならない自分に、久実子は居心地のいい優越感を感じた。
──笑いたいなら、好きなだけ笑えばいいわ。バカにしたいんなら好きなだけバカにすればいい。わたしは他人の目なんか気にしない。わたしは、わたしの楽しいと思うことをひたすら追求して生きていく!
我ながら、なんて素晴らしい決意なのだろうか。
ずっと待ち焦がれていたコラボカフェに行けた久実子の気分はうなぎ上りで、それに合わせるようにして、久実子はメガネの位置をクイと押して上げた。
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「きゃさりんさんのアレちょっとひどくない?」
駅構内。
改札口まで一緒に向かう途中で、ウツミが突然切り出した。
「え?ああ……まあ、ちょっとびっくりしましたね」
ウツミが言っているのはおそらく、先ほどカフェで動画の再生回数が最近伸びないことを口に出されたことであろう。
「きゃさりんさんホントに困りモンだよね。ひとりでボーっとしててぜんぜん何にも話さないかと思ったら突然あんなこと言うんだもん。それで毎回周りがヘンな空気になってもお構いなしだし」
ほとんど息継ぎもなしに、ウツミは愚痴をこぼし続けた。
その活発に動く唇の上に、うっすらうぶ毛が生えているのが確認できた。
「はあ……」
そうですね、なんて肯定していいものなのかもわからない久実子は、曖昧に相槌を打った。
「困りモンって言ったらハイリさんもだよね。今日のカッコもすごかったし。あの人ガイコツとかクロスとかのシルバーアクセやたらつけてるでしょ?ピアスの量もすごいし。アレはカッコいいつもりなのかな?」
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