89 / 135
3章 恋の証明
09 今の私にできること
しおりを挟む
今の自分にできることって何だろう。
自分に付加価値って、どうやったら付けられるんだろう。
歩いている時や食事をしている時。
頭の中が少しでも暇になることがあれば、そんなことばかり考えていた。
勉強には今まで以上に熱が入っていた。
何かしていないと気持ちが焦ってどうにかなりそうだった。
今までも奨学金欲しさに勉強を頑張っていたけれど、その頃とは比にならない熱意と集中力で授業を受けていたと思う。
授業で納得できないことがあれば、教授に食らいついて、納得いくまで議論させてもらった。
多分、答えの出ない苛立ちがそういう方向に出たんだと思う。
私のストレス発散は健全で建設的だなと我ながら感心する。
授業が終わり私の存在を確認するなり、サッと視線を外して講堂を後にする教授を見て、良くも悪くも顔を覚えてくれたんだな……と複雑な気持ちになった。
今まで頭になかった進学も、就職と平行して考え始めていた。
――美亜は成績割といいじゃない。ロースクール行って司法試験目指すとか……。
千夏にそう言われた時は、進学をしようなんて微塵も思っていなかった。
だけど、司法試験に合格したら、孝幸さんに一目置かれる存在になれるのかもしれない……なんて。
そう考え出したらいてもたってもいられなくなって、気がつけばロースクールの合同説明会に足を運んでいた。
事前予約や申し込みがいらなかったのも大きかったのかもしれない。
ポスターで見た合同説明会の日時と場所が頭の中に焼きついて離れなくて、当日の朝になったら、話を聞くだけなら行ってみても良いかもしれない、という気になっていた。
母校に付属するロースクールの他にも、有名大学のロースクール3校が説明に来ていた。
代表者の挨拶に続き、カリキュラムや教員の紹介、入試についての案内が続く。
学生が定員割れをしている学校が多いこのご時勢、受験するのなら、少しでも司法試験の合格率が高いところに行きたい。
自分の今の成績で挑戦できるとしたら、どこまでが限界だろう。
予備校も視野に入れた方が良いのだろうか。
軽い気持ちで来ていた筈なのに、いつの間にか自分が進学をしている状況を思い描いて、質疑応答では率先して手を上げていた。
渡されたパンフレットをパラパラと捲って、他に何を聞こうか考えていたけれど、学費のページにきて手が止まった。
それでやっと現実に返った。
給付される分もあるようだけど、奨学金という名の貸与――借金は避けられそうにない。
将来への約束もないのに、こんな大金をどうやって返していくんだろう。
ロースクールを出た後で司法試験に受からなかったら?
5回落ちたら受験資格も無くなって借金だけが残る。
例え受かったとしても、その後は?
それで就職できるとは限らない厳しい世界なのに……。
こんな狭き門を、リスクヘッジもできない自分が、どんな覚悟で通ろうとしているの?
わかっていた筈だったのに。
何を夢見ていたんだろう。
我に返った途端、空間がぐらりと揺らいだ気がして、どうして自分がここにいるのかわからなくなった。
上がってくる質問も、説明者の回答も、みんな現実味が無くて、どこか別の世界の話を聞いているみたいだった。
自分にどこまで出来るのか試してみたい気持ちが疼いていたけど、結局、ずっと堅実に生きていくことばかりを考えていた私に、そんな大きな勝負に出るほどの度胸は無かった。
だから駄目なのかもしれない。
この狭い枠組みの中で生きていくことしか考えられないから……私は『然るべき人』になれないのかもしれない。
くしゃりと髪を掻きあげる。
就職活動の時期が迫っている。
インターンシップの申し込みをしなければ。
自分に付加価値って、どうやったら付けられるんだろう。
歩いている時や食事をしている時。
頭の中が少しでも暇になることがあれば、そんなことばかり考えていた。
勉強には今まで以上に熱が入っていた。
何かしていないと気持ちが焦ってどうにかなりそうだった。
今までも奨学金欲しさに勉強を頑張っていたけれど、その頃とは比にならない熱意と集中力で授業を受けていたと思う。
授業で納得できないことがあれば、教授に食らいついて、納得いくまで議論させてもらった。
多分、答えの出ない苛立ちがそういう方向に出たんだと思う。
私のストレス発散は健全で建設的だなと我ながら感心する。
授業が終わり私の存在を確認するなり、サッと視線を外して講堂を後にする教授を見て、良くも悪くも顔を覚えてくれたんだな……と複雑な気持ちになった。
今まで頭になかった進学も、就職と平行して考え始めていた。
――美亜は成績割といいじゃない。ロースクール行って司法試験目指すとか……。
千夏にそう言われた時は、進学をしようなんて微塵も思っていなかった。
だけど、司法試験に合格したら、孝幸さんに一目置かれる存在になれるのかもしれない……なんて。
そう考え出したらいてもたってもいられなくなって、気がつけばロースクールの合同説明会に足を運んでいた。
事前予約や申し込みがいらなかったのも大きかったのかもしれない。
ポスターで見た合同説明会の日時と場所が頭の中に焼きついて離れなくて、当日の朝になったら、話を聞くだけなら行ってみても良いかもしれない、という気になっていた。
母校に付属するロースクールの他にも、有名大学のロースクール3校が説明に来ていた。
代表者の挨拶に続き、カリキュラムや教員の紹介、入試についての案内が続く。
学生が定員割れをしている学校が多いこのご時勢、受験するのなら、少しでも司法試験の合格率が高いところに行きたい。
自分の今の成績で挑戦できるとしたら、どこまでが限界だろう。
予備校も視野に入れた方が良いのだろうか。
軽い気持ちで来ていた筈なのに、いつの間にか自分が進学をしている状況を思い描いて、質疑応答では率先して手を上げていた。
渡されたパンフレットをパラパラと捲って、他に何を聞こうか考えていたけれど、学費のページにきて手が止まった。
それでやっと現実に返った。
給付される分もあるようだけど、奨学金という名の貸与――借金は避けられそうにない。
将来への約束もないのに、こんな大金をどうやって返していくんだろう。
ロースクールを出た後で司法試験に受からなかったら?
5回落ちたら受験資格も無くなって借金だけが残る。
例え受かったとしても、その後は?
それで就職できるとは限らない厳しい世界なのに……。
こんな狭き門を、リスクヘッジもできない自分が、どんな覚悟で通ろうとしているの?
わかっていた筈だったのに。
何を夢見ていたんだろう。
我に返った途端、空間がぐらりと揺らいだ気がして、どうして自分がここにいるのかわからなくなった。
上がってくる質問も、説明者の回答も、みんな現実味が無くて、どこか別の世界の話を聞いているみたいだった。
自分にどこまで出来るのか試してみたい気持ちが疼いていたけど、結局、ずっと堅実に生きていくことばかりを考えていた私に、そんな大きな勝負に出るほどの度胸は無かった。
だから駄目なのかもしれない。
この狭い枠組みの中で生きていくことしか考えられないから……私は『然るべき人』になれないのかもしれない。
くしゃりと髪を掻きあげる。
就職活動の時期が迫っている。
インターンシップの申し込みをしなければ。
0
あなたにおすすめの小説
〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー
i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆
最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡
バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。
数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)
18年愛
俊凛美流人《とし・りびると》
恋愛
声を失った青年と、かつてその声に恋をしたはずなのに、心をなくしてしまった女性。
18年前、東京駅で出会ったふたりは、いつしかすれ違い、それぞれ別の道を選んだ。
そして時を経て再び交わるその瞬間、止まっていた運命が静かに動き出す。
失われた言葉。思い出せない記憶。
それでも、胸の奥ではずっと──あの声を待ち続けていた。
音楽、記憶、そして“声”をめぐる物語が始まる。
ここに、記憶に埋もれた愛が、もう一度“声”としてよみがえる。
54話で完結しました!
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
フローライト
藤谷 郁
恋愛
彩子(さいこ)は恋愛経験のない24歳。
ある日、友人の婚約話をきっかけに自分の未来を考えるようになる。
結婚するのか、それとも独身で過ごすのか?
「……そもそも私に、恋愛なんてできるのかな」
そんな時、伯母が見合い話を持ってきた。
写真を見れば、スーツを着た青年が、穏やかに微笑んでいる。
「趣味はこうぶつ?」
釣書を見ながら迷う彩子だが、不思議と、その青年には会いたいと思うのだった…
※他サイトにも掲載
2月31日 ~少しずれている世界~
希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった
4年に一度やってくる2月29日の誕生日。
日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。
でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。
私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。
翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる