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3章 恋の証明
40 雅の独白 懐かしい声・5(最終話)
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気持ちが溢れて、口に出すつもりのなかった想いが声になる。
俺以上に尋ねた本郷さんはびっくりしていたけれど、始業のチャイムで会話は中断された。
我に返ると、周囲の視線を集めてしまったのがわかる。
一瞬恥ずかしく思ったけど、でももう、そんなこともどうでも良かった。
本郷さんは、パン! と両手を叩いて「はい、朝礼が始まりますよ!」と俺に集まる好奇の視線をはねのけた。
「雅さん」
「何……」
「先ほどの会話の続きです。答えはイエスです」
「は?」
「これから先、ずっと私があなたの味方でいる、というお話です」
「そんなの……」
「雅さんから仰ったことでしょう。信じていただけませんか?」
本郷さんに何か言おうと口を開きかけたけど、朝礼が始まり、オフィスにいた全員がその場で起立する。
俺も少し遅れてから立ち上がった。
確かに俺から言ったことだけど、いまいち本郷さんの言うことは信用できないというか、本気にできない。
企業理念の確認から入って、親父の挨拶と、持ち回りでやってる社員の1分間スピーチ。
いつもと何ら変わらない始業の光景。
全体朝礼の後はすぐに部内朝礼に移るのが定例だけど、そこから先はいつもと違った。
「今日から一緒に働くアルバイトの紹介をします」
確かに法務部に、ひとりアルバイトが来るとは訊いていたけど。
「今までアルバイトの紹介なんて、いちいち全社員の前でしてた?」
俺は小声で本郷さんに尋ねる。
まぁ、そんなに大規模な会社でもないし、アルバイトでも社内で顔を合わせるから、そういう方針にしたと言われれば、それはそれで納得なんだけど。
「アルバイトというのはほとんど建前です。今は学生ですが、彼女にはいずれ社員として働いてもらう予定なので。今日から週に1度、会社の雰囲気に慣れてもらって……て、雅さん聞いて……ないか……」
オフィスの空気が変わった。
俺だけじゃなく、その場にいる人全員が彼女に釘付けになったと思う。
法務部の課長に連れられて入ってきた、凛とした一輪の花みたいに綺麗な女の子は、少しだけ不安そうにオフィスを見渡す。
「え?」
幻かと思った。
だって、訳がわからない。
目を離した隙に消えてしまったら困るから、瞬きすら惜しんで彼女に見入る。
「……どう、して……?」
そう口にするのがやっとだった。
俺の呟きは消えそうなくらい小さくて、ほとんど独り言に近かったけど、本郷さんは拾って答えてくれていた。
「さあ? ですがまぁ、憶測ですけれど……。あなたと彼女の熱意に心を動かされていたのは、私だけではなかった。ということなんでしょうね……」
『世界は繋がっているんだよ』
不意に、懐かしい、大好きな人の声が聞こえた気がした。
『たとえこれから先に、自分がひとりだと思う日が来ても。世界にはたくさんの人がいるんだから、ひとりぼっちになることは決してないんだよ』
何度も何度も繰り返し聞かされた言葉。
傷つく度に疑った。
その度に優しい声で諭しながら、泣いてる俺を慰め奮い立たせてきた。
だけど、もういない、会えないから。
幼い頃に聞かされた優しい夢物語で終わるんだと思ってた。
「本日から法務部でお仕事させていただきます、浅木美亜です。至らぬ所も多いと思いますが、精一杯頑張りますので宜しくお願いします!」
緊張して震えた声。
さっきまでイヤホン越しに聞いていた筈なのに、懐かしくて愛しくて、涙が出そうになる。
不安そうに漂っていた視線が俺を見つけて止まる。
目が合った瞬間、離れていた時間全てが吹き飛んだ気がした。
美亜が笑う。
それだけで、眩しいくらい鮮やかに世界が色づいて見えるから、まるで運命の人みたいだなって思ったよ。
大好きな、ばーちゃん。
きっとどこかで笑って見てるんでしょ?
そして優しい笑顔で、お決まりの口調で、何度も俺の背中を押すんだ。
『誰かに必ず想いは届くから。人を愛することを諦めちゃ駄目だよ』って。
俺以上に尋ねた本郷さんはびっくりしていたけれど、始業のチャイムで会話は中断された。
我に返ると、周囲の視線を集めてしまったのがわかる。
一瞬恥ずかしく思ったけど、でももう、そんなこともどうでも良かった。
本郷さんは、パン! と両手を叩いて「はい、朝礼が始まりますよ!」と俺に集まる好奇の視線をはねのけた。
「雅さん」
「何……」
「先ほどの会話の続きです。答えはイエスです」
「は?」
「これから先、ずっと私があなたの味方でいる、というお話です」
「そんなの……」
「雅さんから仰ったことでしょう。信じていただけませんか?」
本郷さんに何か言おうと口を開きかけたけど、朝礼が始まり、オフィスにいた全員がその場で起立する。
俺も少し遅れてから立ち上がった。
確かに俺から言ったことだけど、いまいち本郷さんの言うことは信用できないというか、本気にできない。
企業理念の確認から入って、親父の挨拶と、持ち回りでやってる社員の1分間スピーチ。
いつもと何ら変わらない始業の光景。
全体朝礼の後はすぐに部内朝礼に移るのが定例だけど、そこから先はいつもと違った。
「今日から一緒に働くアルバイトの紹介をします」
確かに法務部に、ひとりアルバイトが来るとは訊いていたけど。
「今までアルバイトの紹介なんて、いちいち全社員の前でしてた?」
俺は小声で本郷さんに尋ねる。
まぁ、そんなに大規模な会社でもないし、アルバイトでも社内で顔を合わせるから、そういう方針にしたと言われれば、それはそれで納得なんだけど。
「アルバイトというのはほとんど建前です。今は学生ですが、彼女にはいずれ社員として働いてもらう予定なので。今日から週に1度、会社の雰囲気に慣れてもらって……て、雅さん聞いて……ないか……」
オフィスの空気が変わった。
俺だけじゃなく、その場にいる人全員が彼女に釘付けになったと思う。
法務部の課長に連れられて入ってきた、凛とした一輪の花みたいに綺麗な女の子は、少しだけ不安そうにオフィスを見渡す。
「え?」
幻かと思った。
だって、訳がわからない。
目を離した隙に消えてしまったら困るから、瞬きすら惜しんで彼女に見入る。
「……どう、して……?」
そう口にするのがやっとだった。
俺の呟きは消えそうなくらい小さくて、ほとんど独り言に近かったけど、本郷さんは拾って答えてくれていた。
「さあ? ですがまぁ、憶測ですけれど……。あなたと彼女の熱意に心を動かされていたのは、私だけではなかった。ということなんでしょうね……」
『世界は繋がっているんだよ』
不意に、懐かしい、大好きな人の声が聞こえた気がした。
『たとえこれから先に、自分がひとりだと思う日が来ても。世界にはたくさんの人がいるんだから、ひとりぼっちになることは決してないんだよ』
何度も何度も繰り返し聞かされた言葉。
傷つく度に疑った。
その度に優しい声で諭しながら、泣いてる俺を慰め奮い立たせてきた。
だけど、もういない、会えないから。
幼い頃に聞かされた優しい夢物語で終わるんだと思ってた。
「本日から法務部でお仕事させていただきます、浅木美亜です。至らぬ所も多いと思いますが、精一杯頑張りますので宜しくお願いします!」
緊張して震えた声。
さっきまでイヤホン越しに聞いていた筈なのに、懐かしくて愛しくて、涙が出そうになる。
不安そうに漂っていた視線が俺を見つけて止まる。
目が合った瞬間、離れていた時間全てが吹き飛んだ気がした。
美亜が笑う。
それだけで、眩しいくらい鮮やかに世界が色づいて見えるから、まるで運命の人みたいだなって思ったよ。
大好きな、ばーちゃん。
きっとどこかで笑って見てるんでしょ?
そして優しい笑顔で、お決まりの口調で、何度も俺の背中を押すんだ。
『誰かに必ず想いは届くから。人を愛することを諦めちゃ駄目だよ』って。
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