1 / 2
1
しおりを挟む
今日も聴こえる。
この透き通った綺麗な音色。
新校舎3階、オレンジ色に染まった太陽が照らす音楽室で、君はいつも何よりも綺麗で、どこか寂しい音色を響かせている。
どうしていつも寂しそうなの?
どうしていつもそんなに痛そうなの?
それなのに、そんな寂しくて痛い音でも君の音はすごく綺麗で、ずっと聴いていたい。
クラスも違う、部活も違う、話したことすらない。一方的に君をみてきただけだけど…
毎日、ここで大事そうにヴァイオリンを弾く君に、私はどうやら惚れてしまったようだよ。
「やっ!」
今日も今日とて、このオレンジ色に染まった音楽室でヴァイオリンを弾く君は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。
「おーい?大丈夫?驚かせちゃった?ごめんね、あたしってば急で…」
口を開いて、明らかに固まってしまっている君に、あたしは手をヒラヒラ振ってみせた。
「え、と。どーも。あの、いつからここに?」
「いつからって、多分君がさっきの曲を弾き始めた辺りからかな?」
君の問いに答えると、君はなんだか恥ずかしそうに頬を染めて、百面相し始めた。
それにしても、君をこんなに近くで見るのは初めてだけど、すごく綺麗な顔をしている。なんだか、ビスクドールと話しているよう。
「それって…さ、最初からだね。」
自分の演奏を聴かれたのが、そんなに恥ずかしかったのだろうか。君はバツの悪そうな顔をした。
「そうかも!あたし、君の弾く音が大好きでさ。いつも、この時間この音楽室でヴァイオリン弾いてるでしょう?すっごい上手!!あたし、音楽のこととかほんとに何もわからないけど、君のヴァイオリンはすごく好き!」
勢い余って、叫んでしまったけれど、俯きつつも嬉しそうな顔をした。
あぁ、君はそんなふうに笑うんだね。
花が咲いたような、春が訪れたようなふんわり柔らかい笑顔。
今日は良い日だな。君の笑う顔が見れた。
「ありがとう。というか、今までも聴いてくれていたんだね。その、ちょっと恥ずかしいけどそんなこと言われたの初めてで、嬉しいよ。」
あ。また花が咲いた。綺麗。
「君、同い歳かな。上履きの色が一緒だね。俺は、A組の瀬川夏澄。君は?」
「あたしは、E組の桜河いつき!ねえ、瀬川!あたし、瀬川のヴァイオリンすごく好きなの!これから、ここで弾いてるときは近くで聴いてもいい?」
あたしがそう言うと君は、またもや少しびっくりしたような顔をした。驚いた顔もすごく綺麗。海のように澄んだターコイズブルーの瞳はぱちぱちしている。
そんな風に考えていると、君はくすくすと笑った。
「あはは!桜河は面白いな。そもそも、俺がここで演奏していることすら、きっと知っている人なんていないのに。でも、嬉しいよ。俺、ヴァイオリンが好きなんだ。だから、そんなに褒めてもらえて嬉しい。俺なんかの演奏で良かったら、いつでも聴きに来て。」
綺麗。
君はなんて綺麗なんだろう。男の子に綺麗だなんて感情を持つのは少し違うのだろうが、君は綺麗という言葉がよく似合う。
「桜河?」
「っ!あ、ありがとう!じゃ、じゃあまた明日聴きに来るね!ちょっと今日はなんていうか、心がしんどいから帰るわ!!ありがとね、瀬川!」
「えっ…具合悪い?大丈夫?保健室きっと、今なら空いてるから連れて行こうか?」
「ううん!ほんと、気にしないで!ちょっといっぱいいっぱいなだけだから!今日はありがとう!さようなら!!!」
全速力で音楽室を出ると、そのまま廊下を駆け抜けて下駄箱に急ぐ。
今日は本当に良い日だな。
瀬川夏澄くんか。君にはすごく魅力がある。短時間話しただけでも、気付いてしまう。
あたしはやっぱり、君が好きなんだと思う。
今日初めて面と向かって話したけれど、わかってしまう。
君の笑った顔が好き。君の奏でる音が好き。君の話す声が好き。君に幸せになって欲しい。
きっと、あのまま瀬川の前にいてしまえば好きだと告げてしまって居ただろう。
瀬川のことが好き。瀬川のことが知りたい。君が、どうしていつもどこか寂しい音色を響かせているのかも。
この透き通った綺麗な音色。
新校舎3階、オレンジ色に染まった太陽が照らす音楽室で、君はいつも何よりも綺麗で、どこか寂しい音色を響かせている。
どうしていつも寂しそうなの?
どうしていつもそんなに痛そうなの?
それなのに、そんな寂しくて痛い音でも君の音はすごく綺麗で、ずっと聴いていたい。
クラスも違う、部活も違う、話したことすらない。一方的に君をみてきただけだけど…
毎日、ここで大事そうにヴァイオリンを弾く君に、私はどうやら惚れてしまったようだよ。
「やっ!」
今日も今日とて、このオレンジ色に染まった音楽室でヴァイオリンを弾く君は、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。
「おーい?大丈夫?驚かせちゃった?ごめんね、あたしってば急で…」
口を開いて、明らかに固まってしまっている君に、あたしは手をヒラヒラ振ってみせた。
「え、と。どーも。あの、いつからここに?」
「いつからって、多分君がさっきの曲を弾き始めた辺りからかな?」
君の問いに答えると、君はなんだか恥ずかしそうに頬を染めて、百面相し始めた。
それにしても、君をこんなに近くで見るのは初めてだけど、すごく綺麗な顔をしている。なんだか、ビスクドールと話しているよう。
「それって…さ、最初からだね。」
自分の演奏を聴かれたのが、そんなに恥ずかしかったのだろうか。君はバツの悪そうな顔をした。
「そうかも!あたし、君の弾く音が大好きでさ。いつも、この時間この音楽室でヴァイオリン弾いてるでしょう?すっごい上手!!あたし、音楽のこととかほんとに何もわからないけど、君のヴァイオリンはすごく好き!」
勢い余って、叫んでしまったけれど、俯きつつも嬉しそうな顔をした。
あぁ、君はそんなふうに笑うんだね。
花が咲いたような、春が訪れたようなふんわり柔らかい笑顔。
今日は良い日だな。君の笑う顔が見れた。
「ありがとう。というか、今までも聴いてくれていたんだね。その、ちょっと恥ずかしいけどそんなこと言われたの初めてで、嬉しいよ。」
あ。また花が咲いた。綺麗。
「君、同い歳かな。上履きの色が一緒だね。俺は、A組の瀬川夏澄。君は?」
「あたしは、E組の桜河いつき!ねえ、瀬川!あたし、瀬川のヴァイオリンすごく好きなの!これから、ここで弾いてるときは近くで聴いてもいい?」
あたしがそう言うと君は、またもや少しびっくりしたような顔をした。驚いた顔もすごく綺麗。海のように澄んだターコイズブルーの瞳はぱちぱちしている。
そんな風に考えていると、君はくすくすと笑った。
「あはは!桜河は面白いな。そもそも、俺がここで演奏していることすら、きっと知っている人なんていないのに。でも、嬉しいよ。俺、ヴァイオリンが好きなんだ。だから、そんなに褒めてもらえて嬉しい。俺なんかの演奏で良かったら、いつでも聴きに来て。」
綺麗。
君はなんて綺麗なんだろう。男の子に綺麗だなんて感情を持つのは少し違うのだろうが、君は綺麗という言葉がよく似合う。
「桜河?」
「っ!あ、ありがとう!じゃ、じゃあまた明日聴きに来るね!ちょっと今日はなんていうか、心がしんどいから帰るわ!!ありがとね、瀬川!」
「えっ…具合悪い?大丈夫?保健室きっと、今なら空いてるから連れて行こうか?」
「ううん!ほんと、気にしないで!ちょっといっぱいいっぱいなだけだから!今日はありがとう!さようなら!!!」
全速力で音楽室を出ると、そのまま廊下を駆け抜けて下駄箱に急ぐ。
今日は本当に良い日だな。
瀬川夏澄くんか。君にはすごく魅力がある。短時間話しただけでも、気付いてしまう。
あたしはやっぱり、君が好きなんだと思う。
今日初めて面と向かって話したけれど、わかってしまう。
君の笑った顔が好き。君の奏でる音が好き。君の話す声が好き。君に幸せになって欲しい。
きっと、あのまま瀬川の前にいてしまえば好きだと告げてしまって居ただろう。
瀬川のことが好き。瀬川のことが知りたい。君が、どうしていつもどこか寂しい音色を響かせているのかも。
0
あなたにおすすめの小説
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た
しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。
学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。
彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。
そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。
嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた
桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。
どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。
「もういい。愛されたいなんて、くだらない」
そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。
第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。
そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。
愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。
私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。
いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。
「僕には想い合う相手いる!」
初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。
小説家になろうさまにも登録しています。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる