行き場を失くした私を拾ってくれたのは、強くて優しい若頭の彼でした

夏目萌

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戸惑いと不安

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「そうなんですね……それなのに、私がここへ来てしまって……大丈夫なんでしょうか?」
「問題ねぇよ、部屋は余ってる。まあ、男所帯で気遣うかもしれねぇが、我慢して欲しい」
「いえ、そんな……置いてもらえるだけで有り難いですから」

 確かに、相嶋さんと二人きりというのも緊張するけど、男の人五人が生活を共にする家でお世話になるのもなかなか緊張する。

 けれど、今の私に行き場は無いのでここを追い出されてしまっては困るし、何より置いてもらう身で文句なんて言えた義理でもない。

「しかしな、部屋はあるが、片付けねぇと使えない。悪いが今日のところは俺の部屋を使ってくれ。七星、心を俺の部屋へ案内しろ。俺はこれから出掛けるから、風呂に入ったらベッドをで寝てて構わない。着替えは……何か適当に未開封のTシャツかなんか出してやれ……つーか、下着がねぇ……コンビニに寄れば良かったな」
「あ、あの! し、下着は……その、今日のところは、今着けているもので大丈夫です……。けど、お部屋を使わせてもらうのは……」
「気にするな、寝床があって今すぐ使えるのは俺ら個人の部屋しかねぇし、俺以外は寝るのに使う。朝まで帰らない俺の部屋しかねぇんだから遠慮しねーで使っていい。それじゃあ、俺は着替えて出掛けて来る。新、博、七星、心のことを頼むな」

 相嶋さんはそれだけ言うと、奥にある部屋へ向かって歩いていってしまい残された私は、

「それじゃあ心ちゃん、こっちに来て」
「あ、はい」

 渡利さんに連れられて相嶋さんの部屋へ向かうことになった。

「ここが兄貴の部屋だよ。風呂は一階と二階の両方にあるんだけど、二階の風呂場は基本兄貴しか使ってないから、心ちゃんも二階のお風呂使いなよ。その方が気兼ねなく使えるでしょ?」

 部屋へ案内された私はドアの前でお風呂についての話を聞く。

 二階のお風呂は相嶋さんしか使っていないということなのに、本人の承諾も無く私が使わせてもらうのは申し訳無いと断ったのだけど、

「平気だよ、兄貴が自分の部屋を使わせるくらいだから、二階の風呂場を使うのも問題無いって。着替えとタオルは後から持って行くから、まずはシャワー浴びてくるといいよ。あ、それとも浴槽にお湯張ろうか?」
「いえ、シャワーだけで大丈夫です、お気遣いありがとうございます。それじゃあ、お言葉に甘えてシャワー浴びて来ますね」
「うん」

 二階のお風呂を使っても問題無いだろうという渡利さんに従い、ひとまずシャワーを浴びて来ることにした。

 服を脱いで浴室へ入った私は、鏡に映る自身の姿を見つめながら溜め息を吐く。

「……私、何やってんだろ……」

 一人になって今一度冷静に状況を整理したことで、置かれている状況に頭を抱えたくなった。

 死ぬつもりで廃ビルの屋上へ上がったはずなのに、止められた挙句、今日会ったばかりの名前しか知らない男の人の自宅に上がっただけでは無く、こうして無防備にお風呂へ入っている訳で……、普通の思考なら、こんな状況有り得ないなと思ってしまう。

 けれど、行き場の無い私を拾ってくれた相嶋さんには感謝してるし、少なくとも悪い人には思えないので、今は彼を頼るしか無い。

(……それにしても、相嶋さんって何者なんだろ……)

 蛇口を捻り、シャワーヘッドから流れるお湯を頭から掛けた私は相嶋さんが何者なのかを考えた。
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