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 あれから凜が昼寝から目覚めてしまい、竜之介くんが帰って来ていた事を喜んで彼を独占状態。

 夕飯を食べ、お風呂を済ませ、眠くなるまで竜之介くんにベッタリだった凜もようやく寝てくれて、ひと息吐いた私たちは竜之介くんの部屋で話の続きをする事になった。


「……それじゃあ、俺の方から話すよ」
「うん……」

 ベッドの上に並んで座った私たちは少し時間が経ってしまった事もあってなかなか話始めるタイミングが掴めず若干気まずい状態が続いていたものの、竜之介くんの方からそう切り出してくれた。

「――一樹から聞いたと思うけど、俺は今日、西ノ宮財閥の令嬢と、二人で会ってた。経緯としては、以前名雪家うちが開いたパーティーに来ていた彼女が俺の事を気に入ったのが始まりだったみたいで、親父の耳にその話が入った事で、見合いって形で会う話が進んでた。西ノ宮と名雪は仕事での交流もあるから親父の顔を立てる為に、会う事にしたんだ」
「……そう、だったんだね」
「ただ、俺は見合いのつもりは無いし、この前一度親父と話もして、俺にはその気が無い事、亜子さんと付き合ってる事もきちんと話した。今日の事は決まっていた事だから断れなくて会ったけど、勿論本人にも付き合ってる人がいる事を伝えた上で断ってきた。だから、亜子さんが心配するような事は何もないんだよ」

 そう言って私の身体を抱き締めてくれた竜之介くん。

 話を聞いて、私は馬鹿だと思った。彼はこんなにも私の為に動いてくれていたのに、私は田所さんからの話に一人で悩んで、あんな風に、竜之介くん以外の人にキスまでされて……。本当に、馬鹿みたい。不安に思う事があるなら、すぐに相談すれば良かったのに。

「亜子さん、次は亜子さんの番だよ。この前から少し様子が変だった事が気になってた。この前の事も含めて、一樹絡みで何かあったんだよね?  隠さないで、ありのままを話して欲しい」
「…………その、竜之介くんがお見合いをするっていう話は、先日田所さんが話があるって家に来た時に、偶然聞いてしまって……その事に気付いていた田所さんが、この前竜之介くんの代わりに迎えに来てくれた時に、色々教えてくれた。そして、竜之介くんのご両親は私たちの関係をよく思っていないから……私の方から、竜之介くんの元を去って欲しいって……言われて……」

 隠し事をしたくないから話はしたものの、何だか告げ口しているみたいで少し複雑な気分になる。

 そんな私の話を聞いた竜之介くんの表情は当然、怒りに満ちていた。

「一樹が、そんな事を……。確かに、親父たちに同居の事をよく思われて無かったのは事実なんだけど、この前改めて話をして、交際を始めた事を告げたら、それについては好きにしていいって言われた。だから問題無いんだ。一樹がそんな事を思っていたのは俺も知らなかった……知らずに頼って亜子さんの助けになればと思って迎えや色々な事を頼んでいたけど……それが亜子さんを苦しめる事になってたなんて……本当にごめん」
「ううん、謝らないで。竜之介くんが悪い訳じゃない……っていうか、誰も悪くは無いのよ。私たちの事を反対する人がいても、不思議な事じゃないの。ご両親だって田所さんだって竜之介くんを大切に思うからこそ、私みたいなバツイチ子持ちと親密な関係にあるって聞いたら、難色を示すのは当たり前の事なのよ。それは仕方の無い事だから、私も分かってるの」
「亜子さん……」
「でも、もう悩むのは止める。誰に何を言われても、私は竜之介くんを信じるよ」
「うん、そうして。何かあったらすぐに話して。一人で悩まないでね」
「うん」

 顔を見合せ、少しずつ、距離が縮まる。

 その時ふと、昼間の出来事がフラッシュバックする。

「――ッ」
「亜子さん?」
「…………竜之介くん、ごめんなさい……」
「何?  どうして謝るの?」

 そう、まだ言えていない事があったのだ。

 寧ろ一番に話して謝罪すべき事。

「……その、今日も竜之介くんと別れるように田所さんに言われて……その時に、それを拒んだら彼が…………」

 何て話せばいいのか、それを聞いたら竜之介くんがどう思うのか色々考えると話せなくて言い淀む。

「もしかして、一樹が、アイツが何かしたの?」

 そんな私を見て何かを察した竜之介くんは再び怒りを露わにしながら聞いてきた。
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