家族に裏切られ全てを奪われた私は、辺境地に住む強くて心優しい彼に出逢い、沢山の愛と優しさに触れながら失ったモノを取り戻す

夏目萌

文字の大きさ
9 / 27
優しく頼れる存在

1

しおりを挟む
「まずはセネル国の現状を知る必要がある」
「知る……とは、どういう?」
「お前を仕留め損ねた奴らは、どういう対応を下すのかという事だ」
「確かに……」

 夜中に寝込みを襲われたエリスは男が気になる事を口にしていたと思い出す。

「そう言えば、襲われた時、相手の方が『薬で眠らせてるからその間に殺せと言われた』……みたいな事を口にしていました」
「薬で? 何か心当たりはあるか?」
「……えっと、思い当たることと言えば、夕飯……昼間にシューベルトたちの話を聞いて、その夜は食事も喉を通らなかったんですけど、メイドにスープだけでもと言われていたのでスープを二、三口程……」
「恐らくそのスープに薬が盛られていたのだろう。全て飲み干せば朝まで深い眠りについていたのだろうが、少量しか口にしなかった事で、効きが浅かったのだろうな」

 ギルバートのその話を聞いたエリスの身体はガタガタと震えだす。

 もし、あの時スープを飲み干していたら、目を覚ます事も無く寝ている間に殺されていたと知ったから。

「話を聞いた事で命拾いしたという訳か。皮肉なものだ」
「…………っ」
「今は奴らも血眼になって探しているだろうが、今後どう出るかだな……」
「私が見つからなければ、どうするのでしょう?」
「元よりお前は病に伏せていると噂が流れていたからな……病状が悪化したというシナリオを作り、強制的にお前の存在を消すつもりなのかもしれない」
「ですが、亡骸も無いのにどうやって……」
「それなんだが、お前が見つからなかった場合、誰かが犠牲になるかもしれない」
「誰か?」
「そうだな、背格好が似ている者が一番可能性を持っている。周りに居なかったか? お前と似たような背格好の者は」

 そう問い掛けられたエリスは記憶を辿ると、一人思い当たる人物が頭に浮かぶ。

「……私の食事を運んでいた、メイドです。彼女は歳も近くて……背格好も似ていました」
「そうか……残念だが、そのメイドは犠牲になるだろう。お前の身代わりとしてな」
「そんなっ!」
「それはお前を誘き出す為でもある。お前は心優しい人間だ、自分の身代わりに誰かが殺されたと知れば、良心の呵責に耐え切れず戻って来るだろうというな」
「だとしたら、私……」

 ギルバートの言葉通り、もし本当にそうなってしまったらエリスは耐えられないだろう。

「今更嘆いたところで、何も変わらない。恐らく、今日明日中にはそれが行われる。残念だがそのメイドは助からない」
「そんなっ、駄目です、そんな事……」
「エリス、よく聞け。セネル国にお前の味方はいない。それは分かっているな? そのメイドもお前の味方では無かった。昨夜スープを勧めたのはそのメイドだろう? その事から踏まえるとそのメイドは知っていたはずだ、薬が盛られている事を。上から言われていたのだろう。失敗すれば自分の命が危うくなる事もな」
「……でも、それでも……」
「エリス、しっかりしろ。奴らに復讐すると決めただろう? 復讐に情けは無用だ。例えそのメイドが脅されて協力させられていたとしても、実行した時点で奴らと同罪だ。情けをかける必要は無い」

 ギルバートの意見は最もだ。復讐をすると決めた時点で、敵に情けをかける必要は無い。例えそれが、どんな相手だったとしても。

「とにかく、明日以降、セネル国から何らかの発表があるだろう。ひとまずはそれ待ちだ」
「……はい」

 ギルバートの言い分は分かるものの、すぐに納得なんて出来ないエリスは心を痛め、すっかり落ち込んでいた。

 そんな彼女に何か言葉を掛けたいギルバートだったが、今はそっとしておく方がいいだろうと思い黙って席を立つとキッチンへ向かう。

「今日は疲れただろう。もう日暮だ。飯を食って早く身体を休めた方がいい。エリス、何か食えない物はあるか?」
「……いえ、特には」
「そうか。有りものだが飯を作るから待っててくれ」
「あ、それじゃあ私も何かお手伝いします!」

 座ったままのエリスはギルバートの言葉で立ち上がると、急いでキッチンまで歩いて行く。

「いや、お前は座っていて構わない。姫様は料理なんてした事ないだろう?」
「確かに、した事無いですけど……今の私はもう、姫ではありません。これからは何でも自分でやらなければいけないんです……だから、私にも手伝わせてください……」

 王女だったエリスに料理の経験など無く、それを危惧したギルバートは彼女の申し出を断ったのだけど、エリスとしては、自分はもう王族とは関係の無い一般人だと言って経験の為にも手伝いたいと申し出る。

 そんなエリスの思いにギルバートは、

「分かった。それじゃあ手伝ってもらおう。まずはこの野菜を洗ってくれ」

 小さく溜め息を吐きつつも、エリスに料理の手伝いをさせてみる事にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...