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優しく頼れる存在
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手始めにエリスに手渡したのは人参。
これは皮を剥かなくても食べられるので、洗って適当な大きさに切るくらい簡単だと思い頼んだものの、エリスは人参を片手にすぐ近くに置いてある洗剤を取ろうとする。
「おい、何をするつもりだ?」
「え? あの、人参を洗おうかと」
「野菜に洗剤は必要無い。水でサッと汚れを落とせばいい」
「そうなんですか……すみません」
エリスの頭の中で汚れを落とす=洗剤を使うという思考らしく、ギルバートの言葉をきょとんとした様子で聞いていた。
「ギルバートさん、出来ました」
「それじゃあ次はその包丁で人参を切ってくれ。食べやすい大きさでいいから」
「分かりました」
次に、洗い終えた人参を切ってもらおうと頼むギルバート。
言われた通り包丁を手にしたエリスの手付きは危なっかしいものだった。
「……エリス、そんなに刃先を指に近付けたら危険だ。抑える手はこう、指を中にしまい込む形にした方がいい」
「こう、ですか?」
「そうだ。そうすれば指が切れる事は無いから怖くは無いだろう?」
「はい」
まるで幼い子供に教えているかのような感覚に陥るギルバートだったが、普段人と関わらない彼は誰かに物を教える機会も無いので、どこか新鮮さを感じていた。
そして、一人ならばあっという間に出来上がったであろう料理は二時間近く掛かってようやく完成した頃、初めての経験を沢山出来たエリスの表情はどこか満足そうだった。
食事を終え、シャワーを浴びて寝る支度を整えた二人。
ここはギルバートが一人で暮らしている家なので、当然寝室は一部屋でベッドも一つしかない。
それに気付いたエリスは自分の寝床をどうしようか考えていた。
「エリス、ベッドはお前が使え。まあ、城のベッドと違ってあまり寝心地は良くないだろうが、そこは我慢してくれ」
「え……、ですが……」
しかしギルバートから自身のベッドを使うよう言われたエリスは思う、自分がこのベッドを使うと、ギルバートはどこで寝るのだろうかと。
辺りを見回す限り、ベッドの代わりになる家具は無い。椅子を二脚合わせたとしても、ギルバートには小さくて寝られないだろう。
かくなる上はテーブルの上か、床くらいのものだ。
「あの、私がベッドを使ってしまったらギルバートさんの寝る場所がありませんよ?」
「俺は床で寝るから問題無い」
「ええ!? 駄目ですよ、床で寝るなんて」
「姫様には経験が無いだろうが、床で寝るくらい普通の事だ。仕事中は野宿だってあるくらいだからな」
「……それなら私が床で寝ます! だってここはギルバートさんの家ですもの、置いて貰っている私の方がベッドを使うなんておかしいです……」
そして、ギルバートの話を聞いたエリスは、それならば自分の方が床で寝ると言い出した。
「気持ちは嬉しいが、男が女を床で寝かせて自分だけベッドを使う訳にはいかない。遠慮はしなくていい、お前はベッドを使ってくれ」
「いやです、私は使えません。それなら、外で寝ます!」
ギルバートは何とかしてエリスにベッドを使わせたいと思っているのだけど、エリスはそれを頑なに拒否し続ける。
いつまでも続く押し問答に困り果てたギルバートは悩み悩んだ末、
「――分かった、ならば二人でベッドを使う、それでどうだ? まあ、あのベッドは二人用では無いが、二人で寝れない事も無い広さだ。二人で使えばどちらかが床で寝る事も無い」
二人一緒にベッドを使う提案をエリスにした。
幸いギルバートが使っているベッドはセミダブルより少し大きめのサイズで二人一緒に寝れない広さでは無い。
勿論、ギルバートに下心など一切無い。
いつまでも折れないエリスに配慮して、二人で使う提案をしたまでだ。
それは恐らくエリスも分かっているのだろう。
だがしかし、エリスは異性とベッドで寝るという経験が一度だけあり、それがシューベルトとの初夜で、あれは彼女が生きてきた中で、一番苦痛な時間だった。
シューベルトは経験が無く怖がり、嫌がるエリスを押さえつけ、無理矢理犯す形で自身の欲を放ったのだ。
エリスにとってあの夜の行為はトラウマにしかならず、異性と同じベッドで眠る状況になればそれを思い出してしまいそうで怖かったのだ。
これは皮を剥かなくても食べられるので、洗って適当な大きさに切るくらい簡単だと思い頼んだものの、エリスは人参を片手にすぐ近くに置いてある洗剤を取ろうとする。
「おい、何をするつもりだ?」
「え? あの、人参を洗おうかと」
「野菜に洗剤は必要無い。水でサッと汚れを落とせばいい」
「そうなんですか……すみません」
エリスの頭の中で汚れを落とす=洗剤を使うという思考らしく、ギルバートの言葉をきょとんとした様子で聞いていた。
「ギルバートさん、出来ました」
「それじゃあ次はその包丁で人参を切ってくれ。食べやすい大きさでいいから」
「分かりました」
次に、洗い終えた人参を切ってもらおうと頼むギルバート。
言われた通り包丁を手にしたエリスの手付きは危なっかしいものだった。
「……エリス、そんなに刃先を指に近付けたら危険だ。抑える手はこう、指を中にしまい込む形にした方がいい」
「こう、ですか?」
「そうだ。そうすれば指が切れる事は無いから怖くは無いだろう?」
「はい」
まるで幼い子供に教えているかのような感覚に陥るギルバートだったが、普段人と関わらない彼は誰かに物を教える機会も無いので、どこか新鮮さを感じていた。
そして、一人ならばあっという間に出来上がったであろう料理は二時間近く掛かってようやく完成した頃、初めての経験を沢山出来たエリスの表情はどこか満足そうだった。
食事を終え、シャワーを浴びて寝る支度を整えた二人。
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それに気付いたエリスは自分の寝床をどうしようか考えていた。
「エリス、ベッドはお前が使え。まあ、城のベッドと違ってあまり寝心地は良くないだろうが、そこは我慢してくれ」
「え……、ですが……」
しかしギルバートから自身のベッドを使うよう言われたエリスは思う、自分がこのベッドを使うと、ギルバートはどこで寝るのだろうかと。
辺りを見回す限り、ベッドの代わりになる家具は無い。椅子を二脚合わせたとしても、ギルバートには小さくて寝られないだろう。
かくなる上はテーブルの上か、床くらいのものだ。
「あの、私がベッドを使ってしまったらギルバートさんの寝る場所がありませんよ?」
「俺は床で寝るから問題無い」
「ええ!? 駄目ですよ、床で寝るなんて」
「姫様には経験が無いだろうが、床で寝るくらい普通の事だ。仕事中は野宿だってあるくらいだからな」
「……それなら私が床で寝ます! だってここはギルバートさんの家ですもの、置いて貰っている私の方がベッドを使うなんておかしいです……」
そして、ギルバートの話を聞いたエリスは、それならば自分の方が床で寝ると言い出した。
「気持ちは嬉しいが、男が女を床で寝かせて自分だけベッドを使う訳にはいかない。遠慮はしなくていい、お前はベッドを使ってくれ」
「いやです、私は使えません。それなら、外で寝ます!」
ギルバートは何とかしてエリスにベッドを使わせたいと思っているのだけど、エリスはそれを頑なに拒否し続ける。
いつまでも続く押し問答に困り果てたギルバートは悩み悩んだ末、
「――分かった、ならば二人でベッドを使う、それでどうだ? まあ、あのベッドは二人用では無いが、二人で寝れない事も無い広さだ。二人で使えばどちらかが床で寝る事も無い」
二人一緒にベッドを使う提案をエリスにした。
幸いギルバートが使っているベッドはセミダブルより少し大きめのサイズで二人一緒に寝れない広さでは無い。
勿論、ギルバートに下心など一切無い。
いつまでも折れないエリスに配慮して、二人で使う提案をしたまでだ。
それは恐らくエリスも分かっているのだろう。
だがしかし、エリスは異性とベッドで寝るという経験が一度だけあり、それがシューベルトとの初夜で、あれは彼女が生きてきた中で、一番苦痛な時間だった。
シューベルトは経験が無く怖がり、嫌がるエリスを押さえつけ、無理矢理犯す形で自身の欲を放ったのだ。
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私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
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