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裏切りと絶望の淵で
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(誰……?)
暗闇の中で突然投げ掛けられた声に警戒する紅花。
翳っていた月が顔を覗かせ、月明かりに照らされたのは全身黒づくめの男。
「道にでも迷ったのか?」
淡々とした様子で男に尋ねられた紅花はこくりと頷きながら、「使い先から帰る途中で道を間違えてしまったようで……」と、土地勘があまり無い事を強調してみせる。
「使い先から……? まあ、こういった道は一つ間違えば迷い込んでもおかしくは無いからな。それなら俺に付いてこい。きちんとした道まで共に行ってやる」
話を信じたらしい男は自分に付いてこいと言って来た道を戻ろうとしたので、「ありがとうございます……」と答えた紅花が彼に続いて行こうと一歩足を踏み出した次の瞬間、ドサッという何かが倒れる音を聞いた男が振り返ると、
「おい!?」
体力の限界を迎えた紅花が意識を失い、その場に倒れてしまっていたのだ。
「おい、しっかりしろ!」
男はすぐさま紅花に駆け寄って身体を抱き起こす。
「……熱は無いな……。恐らく体力の限界を迎えたのだろう。少し休ませれば問題無さそうだな」
紅花の額に手を当てて熱の有無を確認した男はひとまず紅花を休ませる為、雨風を凌ぐ為に作られたような洞穴がある場所まで彼女を抱き抱えて歩き始めた。
洞穴に着いた男が抱き抱えていた紅花を降ろそうとしたところで目を覚ます。
「……あれ? 私……」
何が起きているのか理解が追いつかない紅花に男は、
「いきなり倒れたから驚いた。歩き疲れているのだろう? 少しここで身体を休めた方がいい」
そう声を掛けながら紅花を降ろして座らせる。
「倒れた? すみません、ご迷惑をお掛けして……」
「気にするな。それよりも、いくつか聞かせて貰いたい事がある――」
紅花の横に腰を降ろした男が「質問をしたい」と言葉にしたところで、
「こんなところに二匹も獲物がいるなんて、今日はツイてるなぁ」
突然木々の間から、肩には獣の毛皮をかけて古びた革鎧を羽織り、腰には刃こぼれした大刀をぶら下げた体格の良い男が一人現れた。
どうやらこの辺りを塒にしている山賊の類のようだ。
粗野な男の登場に紅花が恐怖で震える中、黒づくめの男は自身の背に彼女を庇うも、一人かと思っていた山賊はもう一人居たようで、紅花と男は逃げ場を失ってしまう。
「まずはそこから出てもらおうか」
山賊の一人が二人に洞穴から出るよう指示すると、男と紅花は大人しくそれに従う。
「お前はそこに跪け」
そして、男にはその場に跪くよう指示した後でもう一人が紅花の腕を掴んで自身の傍へ引き寄せ、
「嬢ちゃんはこっちだ。心配するな、俺たちが可愛がってやるから」
下卑た表情を浮かべながら震える紅花に声を掛けた。
「嫌……っ、離して……」
恐怖で泣きたくなるのを堪えつつ、紅花は必死に抵抗をするも、屈強な男の力に敵うはずが無く逃れられ無い。
一方の男の方は、刀を突き付けられて身動きが取れない状況に立たされていた。
暗闇の中で突然投げ掛けられた声に警戒する紅花。
翳っていた月が顔を覗かせ、月明かりに照らされたのは全身黒づくめの男。
「道にでも迷ったのか?」
淡々とした様子で男に尋ねられた紅花はこくりと頷きながら、「使い先から帰る途中で道を間違えてしまったようで……」と、土地勘があまり無い事を強調してみせる。
「使い先から……? まあ、こういった道は一つ間違えば迷い込んでもおかしくは無いからな。それなら俺に付いてこい。きちんとした道まで共に行ってやる」
話を信じたらしい男は自分に付いてこいと言って来た道を戻ろうとしたので、「ありがとうございます……」と答えた紅花が彼に続いて行こうと一歩足を踏み出した次の瞬間、ドサッという何かが倒れる音を聞いた男が振り返ると、
「おい!?」
体力の限界を迎えた紅花が意識を失い、その場に倒れてしまっていたのだ。
「おい、しっかりしろ!」
男はすぐさま紅花に駆け寄って身体を抱き起こす。
「……熱は無いな……。恐らく体力の限界を迎えたのだろう。少し休ませれば問題無さそうだな」
紅花の額に手を当てて熱の有無を確認した男はひとまず紅花を休ませる為、雨風を凌ぐ為に作られたような洞穴がある場所まで彼女を抱き抱えて歩き始めた。
洞穴に着いた男が抱き抱えていた紅花を降ろそうとしたところで目を覚ます。
「……あれ? 私……」
何が起きているのか理解が追いつかない紅花に男は、
「いきなり倒れたから驚いた。歩き疲れているのだろう? 少しここで身体を休めた方がいい」
そう声を掛けながら紅花を降ろして座らせる。
「倒れた? すみません、ご迷惑をお掛けして……」
「気にするな。それよりも、いくつか聞かせて貰いたい事がある――」
紅花の横に腰を降ろした男が「質問をしたい」と言葉にしたところで、
「こんなところに二匹も獲物がいるなんて、今日はツイてるなぁ」
突然木々の間から、肩には獣の毛皮をかけて古びた革鎧を羽織り、腰には刃こぼれした大刀をぶら下げた体格の良い男が一人現れた。
どうやらこの辺りを塒にしている山賊の類のようだ。
粗野な男の登場に紅花が恐怖で震える中、黒づくめの男は自身の背に彼女を庇うも、一人かと思っていた山賊はもう一人居たようで、紅花と男は逃げ場を失ってしまう。
「まずはそこから出てもらおうか」
山賊の一人が二人に洞穴から出るよう指示すると、男と紅花は大人しくそれに従う。
「お前はそこに跪け」
そして、男にはその場に跪くよう指示した後でもう一人が紅花の腕を掴んで自身の傍へ引き寄せ、
「嬢ちゃんはこっちだ。心配するな、俺たちが可愛がってやるから」
下卑た表情を浮かべながら震える紅花に声を掛けた。
「嫌……っ、離して……」
恐怖で泣きたくなるのを堪えつつ、紅花は必死に抵抗をするも、屈強な男の力に敵うはずが無く逃れられ無い。
一方の男の方は、刀を突き付けられて身動きが取れない状況に立たされていた。
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