60 / 90
STORY6
1
しおりを挟む
どうして、こんな事になってしまったのだろう。
泣いても泣いても涙が止まらない詩歌は、黛の所有するマンションの一室に連れ込まれると、窓のない布団だけが敷かれた物置部屋のような所へ押し込まれ、手を拘束されたまま寝かされていた。
(……私が、いけなかったんだ……危険だって言われていたのに、マンションを出て……勝手な行動をしたから……だから、郁斗さんだけじゃなくて、美澄さんや小竹さんにまで……)
自分の浅はかな行動のせいで、郁斗が死に、美澄や小竹の安否すら分からない。
そして自身は悪魔のような男に囚われ、どうする事も出来ない状態に陥っている。
詩歌にとって今の状況は、死よりも辛いものだった。
(……そもそも、私が家出なんてしなければ、誰も不幸になる事は……無かったんだ……)
全ては義父や婚約者の手から逃れたくて行動した『家出』が全ての原因だと気づいた詩歌は、ただ自分を責め続けていた。
「…………郁斗さん……ごめん……なさい……。ごめん……なさい……っ」
届かない思いを口にした詩歌は、彼を思って目を閉じると、ひたすら謝り続けていた。
一方、病院に運ばれ手術を終えた郁斗は、詩歌に名前を呼ばれた気がして目を覚ます。
「…………詩歌?」
目を開けた郁斗は天井を見つめながら、痛む身体を起こそうとする。
「郁斗さん! 駄目っすよ! 今は絶対安静なんすから!」
そこへ用事を済ませて病室へ戻って来た美澄が駆け寄り、郁斗が動くのを慌てて制止した。
「……美澄……お前、無事だったのか?」
「いや、当たり前っすよ。俺も小竹もあの程度じゃ死ぬわけないって。ただ、俺らのせいで詩歌さんが攫われちまって……本当に、申し訳ないです……すいません」
美澄や小竹も普通の人からすれば重症ではあったものの、他より身体が多少丈夫に出来ているらしく、少しの痛みさえ我慢すれば動く事に支障はないらしい。
ただ、自分たちが詩歌を守りきれなかった事を悔いているようで、いつもの元気は無い。
「いや、詩歌については、俺の落ち度だ。正直黛があそこまでイカれた奴だとは……思ってなかった。迅もなかなかイカれた奴だが、それ以上だ……」
「郁斗さん……」
「美澄、恭輔さんは?」
「一旦事務所に戻ってますが、また顔見せに来るって言ってたんで直に来るかと」
「そうか……。詩歌の行方は、分かってるのか?」
「それがまだ。黛の奴、至る所に伝手があるせいか、何処に匿っているか、まだ見当がついてない状況らしいっす」
美澄のその言葉に、郁斗を悔しさを滲ませる。
あの時、詩歌を助ける事が出来なかった自分が許せなかった。
(……詩歌、必ず、助けてやるからな)
だからこそ、絶対に助け出す。次こそ命を失う事になっても彼女だけは、守りきる。
そう、密かに心に誓っていた。
泣いても泣いても涙が止まらない詩歌は、黛の所有するマンションの一室に連れ込まれると、窓のない布団だけが敷かれた物置部屋のような所へ押し込まれ、手を拘束されたまま寝かされていた。
(……私が、いけなかったんだ……危険だって言われていたのに、マンションを出て……勝手な行動をしたから……だから、郁斗さんだけじゃなくて、美澄さんや小竹さんにまで……)
自分の浅はかな行動のせいで、郁斗が死に、美澄や小竹の安否すら分からない。
そして自身は悪魔のような男に囚われ、どうする事も出来ない状態に陥っている。
詩歌にとって今の状況は、死よりも辛いものだった。
(……そもそも、私が家出なんてしなければ、誰も不幸になる事は……無かったんだ……)
全ては義父や婚約者の手から逃れたくて行動した『家出』が全ての原因だと気づいた詩歌は、ただ自分を責め続けていた。
「…………郁斗さん……ごめん……なさい……。ごめん……なさい……っ」
届かない思いを口にした詩歌は、彼を思って目を閉じると、ひたすら謝り続けていた。
一方、病院に運ばれ手術を終えた郁斗は、詩歌に名前を呼ばれた気がして目を覚ます。
「…………詩歌?」
目を開けた郁斗は天井を見つめながら、痛む身体を起こそうとする。
「郁斗さん! 駄目っすよ! 今は絶対安静なんすから!」
そこへ用事を済ませて病室へ戻って来た美澄が駆け寄り、郁斗が動くのを慌てて制止した。
「……美澄……お前、無事だったのか?」
「いや、当たり前っすよ。俺も小竹もあの程度じゃ死ぬわけないって。ただ、俺らのせいで詩歌さんが攫われちまって……本当に、申し訳ないです……すいません」
美澄や小竹も普通の人からすれば重症ではあったものの、他より身体が多少丈夫に出来ているらしく、少しの痛みさえ我慢すれば動く事に支障はないらしい。
ただ、自分たちが詩歌を守りきれなかった事を悔いているようで、いつもの元気は無い。
「いや、詩歌については、俺の落ち度だ。正直黛があそこまでイカれた奴だとは……思ってなかった。迅もなかなかイカれた奴だが、それ以上だ……」
「郁斗さん……」
「美澄、恭輔さんは?」
「一旦事務所に戻ってますが、また顔見せに来るって言ってたんで直に来るかと」
「そうか……。詩歌の行方は、分かってるのか?」
「それがまだ。黛の奴、至る所に伝手があるせいか、何処に匿っているか、まだ見当がついてない状況らしいっす」
美澄のその言葉に、郁斗を悔しさを滲ませる。
あの時、詩歌を助ける事が出来なかった自分が許せなかった。
(……詩歌、必ず、助けてやるからな)
だからこそ、絶対に助け出す。次こそ命を失う事になっても彼女だけは、守りきる。
そう、密かに心に誓っていた。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレヤクザの束縛婚から逃れられません!
古亜
恋愛
旧題:ヤンデレヤクザの束縛婚〜何も覚えていませんが〜
なぜかここ一年の間の記憶を失い、なぜかその間にヤクザの若頭と結婚することになってました。
書いてみたかった記憶喪失もの。相変わらずのヤクザものです。
文字数バラバラで40話くらい。
なんでも許せる方向け。苦手な方は即回れ右でお願いします。
お肌に合わないと感じたら即座に使用を止めてください。誤字脱字等はご指摘いただければありがたく修正させていただきます。肌に合わない、想像と違った等の批判否定は豆腐メンタルにきて泣きますのでご遠慮ください。
この話はフィクションです。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ヤクザの組長は随分と暇らしい
海野 月
恋愛
キャバクラでバイトするリカ
店に来たヤクザの組長である中井律希のテーブルにつかされた
目当ての女の接客じゃないことに面倒くさそうな態度だったこの男。それがどうして――
「リカちゃん。俺の女になって」
初めての彼氏がヤクザなんて絶対にごめんだ!
汚い手も使いながらあの手この手で迫ってくる中井を躱し、平和な日常を取り戻そうとあがくストーリー
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
兄の親友が彼氏になって、ただいちゃいちゃするだけの話
狭山雪菜
恋愛
篠田青葉はひょんなきっかけで、1コ上の兄の親友と付き合う事となった。
そんな2人のただただいちゃいちゃしているだけのお話です。
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる