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第六章
第五節
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夏祭り当日の今日、雪弥は勇気を振り絞って、初恋の相手である華那に『好きだ』と告白した。
去りゆく猫背に向かって告白した途端、華那はこちらを振り返った。しかし、告白の返事はしてくれなかった。
雪弥の顔を穴の開くほどじっと見詰めていたが、急に雪弥の口元を見詰め始めた。
もしかして……ちゃんと伝わってないのか??
そう思った雪弥は、
『俺はお前が。いや、俺は華那が好きなんだ』
もう一度告白した。
途中でお前と呼ぶのは失礼なのではないかと思い直し、咄嗟に言い換えた。滑舌良くハキハキ言えたし今度こそ伝わるだろうとドキドキしながら返事を待つ。
ところが、華那は、貴方は何を仰ってるんですか、と言っているかのような冷めた眼差しを向けてきた。
このままそんな目で見詰め続けられたら、心がへし折られそうなので華那からそっと目を逸らす。
華那は今日浴衣を着て来なかった。正直言うと、浴衣姿を期待していた。だが、白色のTシャツ(上の方にComfortableと筆記体で書かれている)に紺色の膝下スカートという私服も控えめな華那らしくてよく似合っていると思う。
「嘘でしょ?」
華那の低く冷たい声が聞こえて雪弥はハッとした。思わず、「嘘じゃない似合ってる」と言おうとしたが、華那のこれは多分、雪弥の告白に対しての返事だろう。
「私の事が好きなんて嘘でしょ?」
「嘘じゃねぇ、本当だ」
「嘘だ! 嫌いなくせに」
「嫌いな訳ないだろ……」
語尾が尻すぼみになる。
やっぱりそうか、と雪弥は肩を落として落ち込んだ。
陽翔の言う通り、華那は俺に嫌われてるって誤解してる……。
今日朝起きたら、電話履歴に不在着信が一件あった。就寝中で取れなかったものだ。また、留守電も一件入っていた。留守電時刻は三時だ。
さすがに起きてねぇよ、と突っ込んだのは言うまでもない。
不在着信と留守電──両方とも陽翔からだった。
『おはよう雪弥。……もう寝てるかなって思ったけどやっぱり寝てたかぁ、残念。フフッ。俺、眠いのに眠れなくてさ……。ごめんどうでもいいね。取り敢えず、どうしても伝えたい事があるから留守電残しとくね。
……明日の夏祭り、雪弥も来るって言ってたよね。告白を強制する気はさらさらないよ。……だけど、雪弥は去年の十一月十八日から徐々に瀬川さんと距離を置いていった訳だし……。瀬川さんに簡単でもいいから理由を説明するべきだと思う。瀬川さんに何も説明してないって昨日初めて聞いて、本当にびっくりしたよ…………。
俺が瀬川さんなら、何も言わず急に距離を置かれたらほぼ間違いなく嫌われたと確信して、めちゃくちゃ落ち込む。…………ちゃんと説明するんだよ。……以上……おやすみ』
雪弥は陽翔からのこの留守電を聞いて、華那にちゃんと説明しようと決意した。
本当に華那が自分に嫌われたと誤解しているなら、告白しなければいけない。「嫌いじゃない」と伝えるより、「好きだ」と告白した方が分かりやすい。このように考えたからだ。
直前になってチキったが、振られてもいいと覚悟を決めてとうとう告白を実行した。
「本当に嫌いじゃないの?」
華那が疑いの眼差しを向けつつ問う。
まさか、振られるどころか自分の気持ちすら信じてもらえないとは思っていなかった。
「嫌いじゃない」
断言した雪弥は、次に距離を置いた理由を説明する事にした。
「俺とお前ってさ……。去年の十一月十八日から今年の五月十四日に俺の方から久しぶりに話しかけるまでの間、ほとんど喋ってなかったよな?」
「……えっ……うん……」
華那は雪弥からの突然の質問に戸惑った様子で頷く。
「ごめん、距離を置いてた」
「……やっぱり、距離置かれてたんだね……私……」
華那は信じたくない事実を噛み締めるような言い方で呟く。雪弥はやや遅れて「ああ」と目を伏せて頷いた。
「距離を置いた理由を今から説明する」
雪弥がそのように前置きすると華那は大きく目を見開いた。
「説明、してくれるんだね。実はずっと、何でかなって気になってたから……。うん。ちゃんと説明して欲しい」
「分かった。……俺が華那と距離を置いたのは……俺が疫病神だからだ。疫病神の俺が華那の傍にいたら、華那に災難が降りかかってしまう。だから傍にいない方がいいと思って距離を置く事にしたんだ」
今朝、陽翔からの留守電を聞いた後にすぐに考えた言葉をそのまま言う。簡潔に纏めた方が分かりやすいと思って無駄な説明は省いた。
省いたのは、柊木絢太との間に起きた出来事だ。
今年の十一月十七日に、絢太から『瀬川華那を巻き込みたくなければ、距離を置け!』と命令された。
だが、絢太から命令された事は華那には教える必要はないと判断した。
雪弥は絢太から命令されたから華那と距離を置いたのではない。自分の意思で距離を置いたのだ。
雪弥が『従ったところでお前が華那に手を出さない保証はねぇだろ』と命令を拒否した直後に絢太から返された──『でも、お前は疫病神なんだから瀬川の傍に居ない方がいいに決まってるだろ。瀬川を悲しませたくないんだったら、瀬川と距離を置けよ』という言葉に、思いがけず納得して。
「あのさ……、」
去りゆく猫背に向かって告白した途端、華那はこちらを振り返った。しかし、告白の返事はしてくれなかった。
雪弥の顔を穴の開くほどじっと見詰めていたが、急に雪弥の口元を見詰め始めた。
もしかして……ちゃんと伝わってないのか??
そう思った雪弥は、
『俺はお前が。いや、俺は華那が好きなんだ』
もう一度告白した。
途中でお前と呼ぶのは失礼なのではないかと思い直し、咄嗟に言い換えた。滑舌良くハキハキ言えたし今度こそ伝わるだろうとドキドキしながら返事を待つ。
ところが、華那は、貴方は何を仰ってるんですか、と言っているかのような冷めた眼差しを向けてきた。
このままそんな目で見詰め続けられたら、心がへし折られそうなので華那からそっと目を逸らす。
華那は今日浴衣を着て来なかった。正直言うと、浴衣姿を期待していた。だが、白色のTシャツ(上の方にComfortableと筆記体で書かれている)に紺色の膝下スカートという私服も控えめな華那らしくてよく似合っていると思う。
「嘘でしょ?」
華那の低く冷たい声が聞こえて雪弥はハッとした。思わず、「嘘じゃない似合ってる」と言おうとしたが、華那のこれは多分、雪弥の告白に対しての返事だろう。
「私の事が好きなんて嘘でしょ?」
「嘘じゃねぇ、本当だ」
「嘘だ! 嫌いなくせに」
「嫌いな訳ないだろ……」
語尾が尻すぼみになる。
やっぱりそうか、と雪弥は肩を落として落ち込んだ。
陽翔の言う通り、華那は俺に嫌われてるって誤解してる……。
今日朝起きたら、電話履歴に不在着信が一件あった。就寝中で取れなかったものだ。また、留守電も一件入っていた。留守電時刻は三時だ。
さすがに起きてねぇよ、と突っ込んだのは言うまでもない。
不在着信と留守電──両方とも陽翔からだった。
『おはよう雪弥。……もう寝てるかなって思ったけどやっぱり寝てたかぁ、残念。フフッ。俺、眠いのに眠れなくてさ……。ごめんどうでもいいね。取り敢えず、どうしても伝えたい事があるから留守電残しとくね。
……明日の夏祭り、雪弥も来るって言ってたよね。告白を強制する気はさらさらないよ。……だけど、雪弥は去年の十一月十八日から徐々に瀬川さんと距離を置いていった訳だし……。瀬川さんに簡単でもいいから理由を説明するべきだと思う。瀬川さんに何も説明してないって昨日初めて聞いて、本当にびっくりしたよ…………。
俺が瀬川さんなら、何も言わず急に距離を置かれたらほぼ間違いなく嫌われたと確信して、めちゃくちゃ落ち込む。…………ちゃんと説明するんだよ。……以上……おやすみ』
雪弥は陽翔からのこの留守電を聞いて、華那にちゃんと説明しようと決意した。
本当に華那が自分に嫌われたと誤解しているなら、告白しなければいけない。「嫌いじゃない」と伝えるより、「好きだ」と告白した方が分かりやすい。このように考えたからだ。
直前になってチキったが、振られてもいいと覚悟を決めてとうとう告白を実行した。
「本当に嫌いじゃないの?」
華那が疑いの眼差しを向けつつ問う。
まさか、振られるどころか自分の気持ちすら信じてもらえないとは思っていなかった。
「嫌いじゃない」
断言した雪弥は、次に距離を置いた理由を説明する事にした。
「俺とお前ってさ……。去年の十一月十八日から今年の五月十四日に俺の方から久しぶりに話しかけるまでの間、ほとんど喋ってなかったよな?」
「……えっ……うん……」
華那は雪弥からの突然の質問に戸惑った様子で頷く。
「ごめん、距離を置いてた」
「……やっぱり、距離置かれてたんだね……私……」
華那は信じたくない事実を噛み締めるような言い方で呟く。雪弥はやや遅れて「ああ」と目を伏せて頷いた。
「距離を置いた理由を今から説明する」
雪弥がそのように前置きすると華那は大きく目を見開いた。
「説明、してくれるんだね。実はずっと、何でかなって気になってたから……。うん。ちゃんと説明して欲しい」
「分かった。……俺が華那と距離を置いたのは……俺が疫病神だからだ。疫病神の俺が華那の傍にいたら、華那に災難が降りかかってしまう。だから傍にいない方がいいと思って距離を置く事にしたんだ」
今朝、陽翔からの留守電を聞いた後にすぐに考えた言葉をそのまま言う。簡潔に纏めた方が分かりやすいと思って無駄な説明は省いた。
省いたのは、柊木絢太との間に起きた出来事だ。
今年の十一月十七日に、絢太から『瀬川華那を巻き込みたくなければ、距離を置け!』と命令された。
だが、絢太から命令された事は華那には教える必要はないと判断した。
雪弥は絢太から命令されたから華那と距離を置いたのではない。自分の意思で距離を置いたのだ。
雪弥が『従ったところでお前が華那に手を出さない保証はねぇだろ』と命令を拒否した直後に絢太から返された──『でも、お前は疫病神なんだから瀬川の傍に居ない方がいいに決まってるだろ。瀬川を悲しませたくないんだったら、瀬川と距離を置けよ』という言葉に、思いがけず納得して。
「あのさ……、」
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