昼、侯爵令嬢 夜、暗殺者

とうもろこし

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14 入学式当日 衝撃の第一印象

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 王立学園入学式当日。

 アグレシア王国王都の北側に存在する王立学園の敷地はかなり広い。学生達が学びの場として使う校舎だけじゃなく、屋内外運動場やカフェ、地方領地からやって来た学生用の寮など、様々な施設が揃っている。

 施設が充実しているのは多数の貴族が出資しており、貴族の子達が不便なく学べるようにと配慮した結果だろう。

 講師陣も名立たる者が揃っており、王国最高の学び舎として機能しつつ、貴族として横の繋がりを築く場としても活用される。

 ただ、何度も語っているが昨今の貴族令嬢界隈では王立学園本来の機能たる「学び」を得ようと来る者は少ない。勿論、中には学者を目指すべく本気で勉学や研究に取り組もうと志す者もいるが、ほとんどは「結婚相手」を探しに来たという理由がほとんど。

 学園側としては些か不本意な理由であるが、貴族令嬢を送り出す家は学園に対しての寄付金を弾むという暗黙のルールが存在しているせいか、黙認しているのが現状だ。

 新入学生が続々と敷地内へやって来る本日も、入学生として迎えられた貴族令嬢達は友人達と共に集まりながら黄色い声を上げていた。

 彼女達の視線の先には「特別」と噂される三人の男子。

 その筆頭である第二王子であるクリストファー・アグレシアが王城からやって来た馬車より降りて来たからだ。

「やぁ、ごきげんよう。子猫ちゃん達」

 白の礼服を着た正真正銘のイケメン。綺麗でサラサラな金の髪。貴族令嬢だけではなく、王国女子全てを虜にする甘いマスク。春の風にも負けない年中無休の爽やかな笑み。それでいて、身分問わず誰に対しても人当りが良い。

 特に女性には積極的に笑顔を振りまくタイプ。イケメンスマイルを浮かべながら「やぁ、子猫ちゃん」などと恥ずかし気もなく言ってのける男子である。

 背が高くイケメン。それに誰にでも優しいとなれば、貴族令嬢達の目にハートマークが浮かぶのも無理はない。

「クリス、あまり誤解を生むような行動は慎め」

 対し、イケメンでブイブイ言わせるクリストファーを諫めるのは王都騎士団長の息子であるリグル・バーデン。

 黒を基調とした騎士礼服を身に着け、茶の髪をかき上げながらため息を零す彼は、クリストファーと違って愛想はよくない。常に相手の真意を問うような鋭い目付きを浮かべていて、相対する者は威圧感を感じてしまうだろう。

 しかし、第二王子にも負けぬ顔立ちと既に一人前の騎士として認められている鍛え上げられた細マッチョな体は、貴族令嬢界隈の中でもクリストファーに負けぬ人気を誇っている。

「あはは……。相変わらずですね、クリス様は」

 二人の後に位置するのは若き魔法使いと名を轟かせるアダム・ディール。

 父親譲りの青い髪に母親譲りの中性的な顔立ち。二人に比べて、やや童顔であるがそれがまた「ヨシ!」と一部――特に年上女性――からは絶大な人気を誇る。

 宮廷魔法使いにだけ支給される白コートの胸ポケットにはメガネが差さっていて、必要に応じて掛けるのだろう。こちらの姿もまた「童顔メガネ美男子ヨシ!」と評判である。

 ただ、歴史の浅い伯爵家の子であり、王族からの覚えがよろしい状況から一部の貴族からは影でのやっかみが激しい。それ故に、二人と比べて周囲からは一歩引いたような態度が目立つ。しかしながら、この世代において優秀なのは変わりない。

 馬車から降りて来た三人は学園の敷地内に入ると、一斉に貴族令嬢達に囲まれてしまった。

「殿下! ご機嫌麗しゅうございますわ!」

「リグル様も相変わらずカッコ良い……」

「アダムきゅん、ちゅき♡」

 きゃあきゃあと沸き立つ貴族令嬢達に囲まれながら、三人はそれぞれに合った表情を浮かべつつ、対応を続けていた。

 さて、ここまでが今回の入学において目玉とされた「男子の部」である。

 男子の部と称したように、是非ともお目に掛かりたいと噂される「女子の部」も存在していた。

 ただし、こちらは男女問わず噂される、ある一人の女性。その名はガーベラ・ビルワース。

 八年前のビルワース家夫婦殺害事件は未だ貴族達の記憶に刻まれており、同時にたった一人残された長女の存在も刻まれていた。

 他家の子であれば七歳辺りから社交界デビューを果たすのが通例。しかしながら、ビルワース家は両親が死亡という事もあって、ガーベラが社交界デビューする事は無かった。

 つまり、これまで彼女は家の外に出ていない。正確に言うのであれば、貴族社会の中に一度たりとも顔を出した事が無かったのだ。

 噂によれば、両親が殺害されたせいで人間不信になっている。

 噂によれば、財産目当ての家から婚姻を迫られて精神的な病気を患ってしまった……などなど。囁かれる噂を総合すれば、ガーベラの前評判は「根暗で付き合い難そう」だろうか。

 そういった噂が飛び交っていた彼女が今年学園に入学してくるとなったらどうだろう? 

 ビルワース家長女が姿を見せる。それだけで、同世代の者達からすればゴシップめいたお祭りのようなものだ。

 さて、ガーベラ・ビルワースとはどんな女性なのか。想像力を働かせた男女が集う場に、ビルワース家の紋章が描かれた馬車が停止した。

 目敏い者はすぐにそれを見つけて顔を向ける。それに釣られて、また一人、また一人と馬車に注目が集まっていき――遂に馬車のドアが老執事の手によって開けられたのだ。

「―――」

 コツ、コツ、とヒールの音を鳴らしながら降りてきた女性の姿に注目していた誰もが息を飲んだ。

 肩まで伸びた綺麗な赤い髪、美男美女と有名であった父親と母親の顔面偏差値を混ぜてグレードアップさせた美しく凛々しい顔立ち。

 注目されるのは彼女の顔立ちだけじゃない。幼い頃からブートキャンプで鍛えた細く健康的な体もだ。 

 他の貴族令嬢達は多少ふくよかな体型を生地多めのフリフリドレスで隠していた。ウェストを細く見せようとコルセットで締め付ける努力を行い、少しでも悪いところから目を逸らさせようと装飾品を身に着けて着飾っていた。

 だが、ガーベラはどうだ。そのようなずる賢い考えは一切ない。

 生地多めのフリフリドレスなど不要。爽やかな春に相応しい、軽々とした白のワンピースタイプドレスを身に着けていた。

 他の貴族令嬢のようにコルセットなど無用。何故ならきゅっと締まった自慢のウェストがあるからだ。ボディラインを強調する造りのドレスを着ても何ら違和感がない。

 足首付近まで隠す長いスカートなど無用。健康的でありながら、女性にとって理想的な足があるからだ。膝の上ほどまでしか丈がないスカートが、より彼女の美しい脚を引き立てる。

 なんという事でしょう。体のラインが出てしまうという欠点が存在する難易度激高なドレスを自慢のボディで見事着こなしていたのです。

 ……といっても、このドレスをチョイスした理由が「動きやすくてGood!」という彼女らしい実用的な考えからなのだが。

 彼女自身の意図はともかく、馬車から降り立ったガーベラは実に理想的な貴族令嬢と言えただろう。お菓子と紅茶で培養された凡令嬢ビッチなど相手にもならない。

 美しく、上品で、清楚。

 乙女に必要な三大要素を兼ね備えた彼女は、男女問わず彼女を見る全ての者達を魅了した。敷地の入り口に立つ門番兵ですら彼女に釘付けである。

「行ってらっしゃいませ、お嬢様」

「ええ」

 セバスチャンから茶色の鞄を受け取った彼女は堂々とした態度で学園の敷地を歩き出す。背はピンと伸び、気品に溢れた理想的な歩み。まるでファッションショーのランウェイを歩くトップモデルのよう。

 モナに習った成果が遺憾なく発揮される瞬間である。

「あ、あの……。ガーベラ・ビルワース様でしょうか?」

 周囲の視線を独り占めしながら歩く彼女は、たまたま近くにいた令嬢に声を掛けられた。

「はい。そうですわ。ごきげんよう。本日はファッキ――とても良いお天気で、入学にはぴったりですわね」

 膝までしか丈のないスカートの裾をちょこんと摘まみ、満面の笑みで対応するガーベラ。その所作は完璧だった。モナに注意されていた「出してはいけない単語」が出そうになったが、周囲の者が気にする様子は見られなかった。

 そして、彼女が「ガーベラ・ビルワース」であると肯定した瞬間、周囲の者達からようやくざわめきが起きる。

「あれがビルワース家の」

「……噂とは全く違うじゃない」

「とても美しい方ですわね」

 囁かれる言葉はどれも好意的なものばかり。噂が負に満ちた内容だっただけに、堂々としたガーベラの登場と挨拶はネガティブな噂話を丸めて便所にダンクシュートを決めたと言っても良い。

 令嬢に挨拶を終えたガーベラは再び前を向く。そこで、視線の先にいた集団――令嬢達に囲まれた第二王子クリストファー達を見つけた。

 視線も顔もクリストファー達に向けられていて、彼女の歩みはそちらに向かう。その姿を見た瞬間、一部の者達――特に令嬢の中には「ああ、やっぱり彼女も王子目当てか」と内心鼻で笑った事だろう。

 一部から冷ややかな目線を向けられながらも、ガーベラはクリストファーに近付いていく。周囲にいた令嬢達が道を譲ると、彼女はクリストファーの前で礼をした。

「クリストファー殿下。ご挨拶させて頂きます。私、ビルワース侯爵家長女のガーベラと申します」

「ああ。話は父から聞いているよ」

 挨拶されたクリストファーはニコリと爽やかな笑みを浮かべて、いつもの「女性向けトーク」を続けようとするが……。それよりも早く、ガーベラは頭を下げたまま、クリストファーが言葉を発する前に告げる。

「父と母の件では、陛下より格別のご判断を頂きまして感謝しております。いつか直接お会いできる機会がございましたら、陛下にもお礼を申し上げたく思っております」

 そこまで言って、ガーベラは頭を上げるとニコリと微笑んだ。

「殿下も、この学園で良き日をお過ごし下さいませ。同学年として入学できて光栄でございます。では、ごきげんよう」

 最後にお世辞と別れの挨拶を混ぜつつ、彼女はもう一度頭を下げると彼の言葉を待たずに校舎に向かって歩き出した。

 彼女が歩いていく背後では、予想外の挨拶に驚くクリストファー。

「あ、ああ……」

 と、少ない言葉を漏らしたまま、彼女の背中に点となった目を向ける事しかできず。

 周囲で見ていた者達はガーベラが媚び媚びの挨拶でもするのかと思ったろう。だが、実際は形式めいたお礼と挨拶だけであった。

 クリストファーを射止めようとする令嬢達からすれば驚きしかない。幸運にも王家の男子と同学年になったというのに。彼女は第二王子が惜しくないのか、と欲の無さに驚愕してしまう程だ。

 他の男子達も同様だった。ガーベラ嬢は最上級の男に興味が無いのか? と首を傾げるしかない。

 周囲がこの様な有様なのだから、当人はもっと驚いたろう。

 これまで「落とせぬ女はいない」とばかりに女性に対して軽い態度を振り撒いてきたクリストファー。実際、彼が微笑めば周囲の女性は皆揃って目にハートマークを浮かべてきたのだ。

 だというのに、ガーベラ・ビルワースだけは違った。家臣の挨拶をしただけで、寄り付こうともしない。いや、まるで興味が無いと言わんばかりの態度。

 この体験は、クリストファーにとって非常に珍しい――いや、人生での体験だったと言っても良いだろう。

「フッ」

 そんな彼の横から揶揄うような笑い声。クリストファーが顔を向ければ、手で口を隠しながら必死に笑いを堪える友がいた。

「……リグル」

「まぁ、今日のような日もあるだろう」 

 くくく、と声を漏らすリグルの脇腹を苦々しい表情でトンと叩くクリストファー。その後ろでアダムが「ほわぁ」と口を開けて驚いていた。

「あの方がビルワース家のガーベラ様ですか」

 爵位的に下なアダムが口にすると、ようやく笑い声を収めたリグルが口を開く。

「社交の場に姿を見せぬ、幻の令嬢……。心を病んでしまわれたと噂されていたが」

 リグルがそう呟くと、次に頷いたのはクリストファーだ。

「あのような悲惨な事件があったのだ。噂の内容も当然だと思っていたが……。思っていたのとは違ったな」

 先ほどの友から揶揄われる態度を一変し、スッと目を細めたクリストファーの目は去っていくガーベラの背中に向けられていた。

 噂では人間不信になり、心を病んで屋敷から出ようとしなかった……などと聞いていたが、実際に会ってみれば堂々と道を行く自信に溢れた女性ではないか。

 噂など所詮は人の口から出たモノ。そう分かっていながらも、彼女から受けた第一印象は強烈の一言に尽きる。

 この日より、特別優秀と評されていた三人の男子は「ガーベラ・ビルワースは同世代の他者とは一味違う」という印象を抱いた。

 そして、周囲にいた他の者達も「同世代を置き去りにして、一人だけ先を行くような雰囲気を纏っている」と囁く噂の内容をガラリと変化させるのであった。
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