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13話「色々あって」
しおりを挟むあれから色々とあった。
ガラティア元侯爵令息をお城の衛兵に引き渡したりとか、
白装束の人達が私を家まで送ってくれたりとか、
怪我をして帰ってきた私を見て母が失神、
私は怪我の治療を受けたあと、
父に長時間お説教され、
兄にチクチクと嫌味を言われた。
「世間知らずの令嬢が、調子に乗って一人で外出するからこんなことになるんだ」
特に兄にドヤ顔で説教されたのが堪えた。
兄が私の事を心配しているのがわかるし、本当のことなので反論できないのが辛い。
幸い私の捻挫は大したことがなくて、一から二週間もすれば治るらしい。
◇◇◇◇
私が治療を受けてる間に、失神していた母が目を覚ました。
それで、白装束の人達が両親と兄と私に話したいことがあるというので、応接室に集まってる。
もちろんハルも一緒だ。
ハルは怪我の治療の時も、私から離れなかった。
白装束の人達が、「殿下、こちらにおいでください」と言っても聞かないので、ハルは私の膝の上にいる。
全員揃ったところで、白装束の人達が事情を話し始めた。
「ハルが獣耳族の犬族の王子様で、本名が、ハルヴァート・レインウッド様!?」
なんとなく予想はしていたけど、急に現実を突きつけられた気分だ。
私の膝の上で欠伸をしているハルが、王子様なんて……。
白装束の人達はレインウッド王国の近衛兵で、ハルの護衛をしていたそうだ。
彼らは全員犬族で、犬耳は本物らしい。
彼らの犬耳は物音がする度にピクピク動いて、なんとも可愛らしい。
こんなこと口が裂けても言えないけどね。
行方不明になったハルの匂いを手がかりに、公園を散策していたところ、ハルの唸り声を聞いて駆けつけたらしい。
白装束の人達は匂いでハルのこと探してたんだ。
もしかして地面に鼻をつけて匂いを嗅いでいたのかな?
そのシーンを想像したら、おかしかった。
◇◇◇
「殿下、いい加減お屋敷に帰りましょう?
陛下や王妃殿下が心配されてますよ!」
白装束のリーダーらしき人が、ハルの前に跪いた。
ハルは私の膝の上にいるから、白装束の人が私に跪いているみたいな格好になって、なんだか落ち着かない。
ハルは白装束の人から、ふいっと顔をそむけた。
こうしているとハルは普通の犬にしか見えない。
「聞いてもいいですか?
ハルはなぜ家出したんでしょうか?」
私は疑問に思っていた事を口にした。
権力争いがもとで何者かに命を狙われたとか、そういうことだったらお屋敷には返せない。
「殿下は、この国に花嫁探しに来たのです。
侯爵家以上の家格の未婚の令嬢を屋敷に招き、パーティーを開き、殿下と気の合いそうな女性を選別し、後日個別にお見合いしていただく予定でした。
ですが殿下はこの国に来てすぐに、
『僕は政略結婚なんかしない! 番を探す!』
とおっしゃられて、滞在先のお屋敷を飛び出したのです」
花嫁探し……?
ハルが結婚相手を探してる……?
そんなのは新聞を読んで知っていたことだ。
だけどあの新聞記事と、目の前の仔犬の姿のハルが結びつかなくて……ずっと現実から目を逸らしていた。
どうしてだろう? ハルの結婚相手の事を考えたら……胸がチクチクする。
ハルは他国の王子様。
伯爵令嬢に過ぎない私は、彼の婚約者候補にすらなれない。
ハルが遠くへ行っちゃう……そんなのやだ!
私は気がついたらハルをぎゅっと抱きしめていた。
「ハルと離れるのは嫌だよ……!」
「フィオナ様は、殿下の事を……」
白装束の人が何かを察したらしい。
「あー、妹のことはほっといてください。
それより聞きたいのですが、『番』とはなんですか?」
兄は私とハルの事より、自分の知的好奇心を満たすことを優先した。
兄はそんな人だ。
「犬族にとっての番とは、人生でたった一人出会える運命の人のことです。
番を見つけた犬族は、何があってもその相手の事を手に入れ、死ぬまで離しません。
いえ、死後も相手のことを一途に思い続けます」
番って、そんな仕組みなのね。
ハルもこの国に番になる女の子を探しに来たんだよね。
ハルの恋路の邪魔をしちゃ駄目。
ハルをお家に返さないといけない。
そんなことはわかってる……!
でも、それでもハルの事を離したくないよ!
「時を重ねるに連れ、国が発展し、人口が増えました。
今では番を見つけられるのはほんの僅かな国民です。
恋愛結婚や、貴族や王族であれば政略結婚するのが常です」
「貴方がたもこの国に王子様の番探しではなく、政略結婚の相手を探しに来たわけですね?」
兄の質問は続いている。
「見つからない番を永遠に探し続けるよりは、どこかで諦めて、政略結婚した方が殿下の為になると思いました。
ですが、殿下が番を探す為に家出をするとは……」
「その番って、どうやってわかるんですか?
『私はあなたは俺の番です』って、顔に書いてあるわけじゃないですよね?」
「犬族なら番は匂いでわかります」
「なるほど……匂いね」
兄は疑問を次々に白装束の人にぶつけていた。
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