不治の病にかかった婚約者の為に、危険を犯して不死鳥の葉を取ってきたら、婚約者が浮気してました。彼の病が再発したそうですが知りません・完結

まほりろ

文字の大きさ
9 / 21
第二章・リシェルとエカードの出会い

第2章・4話「ダンスの授業を始めよう」

しおりを挟む


場所を移して、今度はダンスのレッスンをすることになった。

リシェル嬢の手を握り、彼女の腰に手を回す機会がこんなに早く訪れようとは!

かなり接近できるから、唇と唇が触れ合ってしまうなんて事故も……!

ステップを間違えてよろけたリシェル嬢を支えきれずに、押し倒してしまうなんてことも……!

『事故とはいえ、殿方に組み敷かれたのでは私はもうお嫁にいけません。ポッ』
『大丈夫だよリシェル嬢、俺が責任を持って君をお嫁にもらうから……!キリッ』

なんてことになったりして……! ぐふふっ!

「エカード様、人前で口を半開きにして鼻の下を伸ばして『ぐふふ』と下品に笑うのは止めたほうがいいですよ。
 アホに見えます」

「……すまない」

リシェル嬢にツッコまれ俺は現実に戻った。

リシェル嬢とふたりきりになると、つい良からぬ妄想にふけってしまう。気をつけないと!

「えーと、じゃあまずはダンスのステップから……」

リシェル嬢と体を密着できるチャンス!

これはダンスのレッスン!

リシェル嬢の手も握り、腰に手も添えるのも授業の一貫! スケベな気持ちからではない!

うまく行けば華麗なステップを披露して、リシェル嬢をときめかせることも……!

俺はドキドキしながらリシェル嬢の前に立った。

「リ、リシェル嬢、手を出して……」

リシェル嬢の前に立ち彼女の手を握ろうとしたら、リシェル嬢に胸ぐらを掴まれふっとばされていた。

背中に痛みを感じて初めて、背中から壁に激突したんだと理解した。

「リシェル嬢、なにを……」

邪な気持ちがあることに気づかれた?

「ごめんなさい。
 目の前に男性が立って、いやらしそうな目で見てきたら投げ飛ばしていいって、お父様に言われていたの。
 だからつい」

いやらしそうな目……?!

俺のそんな不純な目でリシェル嬢を見ていたのか? 

「だから私、自分より背丈の大きな者が目の前に立つと、投げ飛ばしてしまう癖がついてますの」

リシェル嬢は俺がこの領地に来る前は、辺境伯と一緒に魔の森のモンスターの間引きに行っていたようだ。

そういう身を護る癖がなかったら、モンスターがひしめく魔の森で生き抜くことはできなかったのだろう。

今まで、リシェル嬢に誰もダンスを教えなかった理由がわかった。

リシェル嬢の投げ技をくらったら、普通のダンス講師は裸足で逃げ出す。

「だから皇子様も諦めて、私にダンスなんて無理よ」

「俺は諦めないよ!」

「えっ?」

「今はダンスもテーブルマナーも窮屈に思えるかもしれない。
 でも覚えておいて損はないと思うんだ。
 ダンスだってテーブルマナーだって貴族社会を生き抜く、立派な武器だよ。
 ダンスやテーブルマナーを身につければ、お茶会やパーティにも参加できる。
 すこし退屈に感じることもあるけど、お茶会には色んな出会いがある。
 俺はねリシェル嬢、君には広い世界を見てほしいんだ。
 ゼーマン辺境伯領だけが世界の全てだと思って、終わってほしくないんだ」

「皇子様……」

リシェル嬢が真っ直ぐに俺を見ている。俺の言葉は少しは彼女の胸に響いただろうか?

「そんな格好でおっしゃったのでなければ、今のお言葉心にしみましたのに」

「うっ……」

壁に激突した俺は壁からずり落ちて、でんぐり返しに失敗した子供みたいなポーズでお尻を上にして床に転がっている。

皇太子である俺が、女の子の前でこんな恥ずかしい姿を晒すことになるとは……!

「私に投げ飛ばされて、ダンスのレッスンを途中で投げ出さなかった先生はあなたが初めてだわ。
 皇子様は見かけによらず根性があるのね。
 私、根性がある人は嫌いじゃないわ」 

「えっ……?」

今のは「好き」って言われたと思っていいのかな?

いや「嫌いじゃない=好き」にはならないか。

荷馬車も、ブロッコリーも、アンティークの家具も、嫌いじゃないが好きかと言われたら微妙だし。

初対面のときリシェル嬢に「弱虫」と思われていた俺が、「根性がある」と認めてもらったんだ。

これは確実に進歩してるよね!

「いつか絶対パーティでリシェル嬢をエスコートしてみせるよ!」

「ふふっ、楽しみにしてるわ」






俺のこの夢は、二度砕かれることになる。

一度目は皇族と勇者の末裔は結婚できないと知ったとき。

二度目はリシェル嬢がニクラス王国のアルド王太子と婚約したと知ったとき。




しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

いつまでも甘くないから

朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。 結婚を前提として紹介であることは明白だった。 しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。 この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。 目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・ 二人は正反対の反応をした。

結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました

山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」 確かに私達の結婚は政略結婚。 2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。 ならば私も好きにさせて貰おう!!

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。

藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。 バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。 五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。 バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。 だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 感想の返信が出来ず、申し訳ありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...