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7話「山賊メイドの出来上がり」
しおりを挟む塔を出た私は、王太子の婚約者時代に教わった抜け道を使い王宮に入った。
目指すは食堂! 力を使ったからお腹が空いてしまった。
復讐したい相手はまだ残っている、城から逃げるのには体力も必要だ。今のうちに食料を補給しておこう。
隠し通路を使い食堂に忍び込み、料理人を魔法で眠らせる。
食堂のテーブルの上にはパンや果物やお肉が並び、かまどにかけられたお鍋からは出来立のスープのよい香りが漂ってきた。
この二カ月食事といえば硬いパンと具のないスープだけだった。
「ほっぺがとろけるほど美味し~~い!」
ふかふかのパンも新鮮なりんごも出来立ての具だくさんのスープを口にするのは久しぶりなので食事のマナーも忘れがっついてしまった。
「炎」
分厚く切ったお肉を魔法で炙り口の中に放り込む。
「ミディアムレアね、焼き加減が絶妙! 私天才! ソースと付け合せの野菜が欲しいわ」
ガツガツと頬張っているうちに出来立てのスープは殻になっていた。りんごひとかご、パン三十個、お肉は二十切れは食べた。
「ふー、満足、満足」
これだけ食べれば当分は魔力切れの心配はない。
「でも念の為」
食堂にあった麻の袋にりんごとパンと干し肉とぶどう酒を詰め込む。備えあれば憂いなし、お腹が空いたときにいただこう。
りんごジュースで喉を潤していると、外からメイドの声が聞こえた。
耳をすませ会話を盗みぎく。
「あらそのクッキーとレモンパイ、王太子の側室に出すものじゃなかった?」
「美味しそうだから頂いちゃった、あなたの持ってるぶどう酒だって王太子の側室に届けるものじゃなくて?」
「国王にも王妃にも王太子にも疎まれている側妃になんかに届けなくてもいいわよ、どうせ誰も確認なんかしないのだから」
「それもそうね」
「今までだって、柔らかなパンを硬いパンに変えて、具だくさんのスープを具のないスープに変えて、肉やサラダやデザートをつまみ食いして私のお腹の中に入れても誰も何も言わなかったじゃない」
「見捨てられた側妃には硬いパンと具のないスープでも与えておけばいいのよ!」
「それすら贅沢だわ!」
「アハハハハハハ!」と楽しげに笑うメイドに腹が立ち、握っていたグラスに力を込めてしまう。グラスはパリンと音を立て床に落ちた。
食事が硬いパンと具のないスープだげだったのはこいつらのせいだったのね!
食べ物の恨みは恐ろしいってことを思い知らせてやるわ!
幸い食べ物を補給してエネルギーは満タンだ。
「眠り」
扉越しに魔法をかけ彼女たちを眠らせる。
戸をあけるとメイドが三人床に倒れていた。彼女たちの手に触れ、豊かな胸をまな板のようにぺったんこに変えてやる。
顔には立派なあごひげを生やしてやる。メイドというより荒くれ者の山賊か船乗りに見える。
頭のてっぺんの髪を円形状に抜き、東の国にいる河童という妖怪にそっくりの頭にしてやった。
全身に赤いイボを作るのも忘れない。痒みはないが人に触れると感染るものだ。
体に原因不明の赤いイボができ、それが感染るものだったら人々はパニックに陥るだろう。さらにそのイボは感染者から感染者に二次感染、三次感染する。
このイボは二週間ほどで消えるようにした。だがそれを知らない人たちは突然体に奇妙なイボが出来たらパニックに陥るだろう。
彼女たちが目覚めたらぜひ色んな人に触りまくってもらいたい。城中パニックになり私の捜索どころではなくなるだろう。
顔や手足に真っ赤なイボが出来た彼女たちを見てくすりと笑う。
「皆さん、美人になりましてよ」
これに懲りたら二度とつまみ食いはしないことね。
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