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9話「悪人のままでいてくれてありがとう」
しおりを挟む王太子妃の部屋から隠し通路に戻り、いくつかのトラップを回避し、迷宮のような隠し通路を抜け辿り着いたのは応接室。
ここが玉座の間に一番近い応接室だ。目的地は玉座の間だが一度廊下に出て、別のルートの隠し通路からでないと玉座の間にたどり着けない。
応接室には、父と継母と妹のラウラがいた。
玉座にいる国王と王妃に復讐したら、追手がかからないうちに国を出るつもりだった。
公爵家にいる父と継母と妹に仕返しができないのが心残りだったが運の良いことに応接室に揃っていた。三人は楽しげに談笑しながらお茶のみお菓子をつまんでいる。
継母の持っている扇は見たことがない金ピカで趣味の悪いデザインだがひと目で高価なものだと分かった。妹のラウラは宝石がいくつも付いた靴を履いている。父が嵌めている大きなルビーのついた指輪も初めて見るものだ。
アーレント公爵家の領地経営は上手く行ってなかったはずだ、私がなんとかやりくりしていたから回っていた。
私を王家に売ったお金で買ったものではないかと邪推してしまう。
「お父様、今日はなんで王宮に呼ばれたの?」
「エルフリーナが仕事をサボっているらしい。仕事をするように葉っぱをかけるように言われた。頭脳しか取り柄がない地味な顔の女なんだから、おとなしく王太子の命令に従って仕事だけしてればいいものを!」
父が眉間にシワを寄せ苦々しげに話す。私が逃げたことはまだ知らないようだ。知っていたらこんなところで落ち着いてお茶を飲んではいられないだろう。
「本当ですわ、あんな色気も愛想も可愛げもない子、王太子どころか平民にすら愛されませんわ。公爵令嬢という身分と頭の良さしか取り柄がないのに、何を勘違いしているのかしらね? 塔に閉じ込められ王太子のお渡りがないくらいで拗ねて仕事をしないなんて、何様のつもりよ!」
継母が閉じた扇でソファーをバシバシと叩く。継母は王太子が私のところに会いに来ないから拗ねた考えているの?
「そんな不出来な娘でも育ててやった甲斐がありましたわね。エルフリーナを王族に売りとばしたおかげで贅沢ができますもの」
継母が扇を広げ口元を隠しホホホと笑う。
やはり私を王太子に売ったことでいくらか謝礼を貰えたらしい。
「王太子の口添えで可愛いラウラにも良い縁談の話が舞い込んできましたしね」
継母がラウラの髪を撫で嬉しそうに話す。残念だがラウラとフォークト公爵家との縁談なら私が逃げたことで破断になる。
「シグルド様は背が高く見目麗しく社交界の華、幼馴染のブスに付きまとわれていたのを私が助けて上げたのよ!」
そういえばシグルド・フォークト公爵令息にはオリビア様という気立てのよい美人の婚約者がいましたね、確か相思相愛だったはず。
王太子は愛し合うシグルド様とオリビア様を別れさせ、シグルド様をラウラよ婚約者にしたの?
だとしたら王太子は相当のどクズだ。髪の毛を一本残らずむしり取ってやればよかったわ!
「お姉様がいなくなったから、お姉様のドレスも宝石も部屋も全部私のもになったわ!」
よく見ればラウラの身につけいるイヤリングもネックレスも指輪も私のものだった。
「お姉様より私の方が似合うから宝石も喜んでいるわよ」
妹の身につけているサファイアのネックレスはお母様の数少ない形見だ。
プッツン……と音を立て私の中で何かが切れた。
三人が変わらずに悪人のままでいてくれて良かったわ…………遠慮なく復讐できるもの。
隠し扉の陰で三人をどう処理しようか思案する。
父のペニスを消し、継母と妹の豊満な胸をぺったんこにし、三人の髪の毛をなくし、体中イボだらけにするのは確定として、それだげではつまらない。
父は緑、継母は紫、妹はピンクが好きだったわね、肌をその色に染めて上げましょう。
それから風が拭くだけでも全身に激痛が走り、歩くたびに割れたガラスの上を歩くような痛みを感じ、飲み物を飲んだだけで内臓が燃えるような苦痛を味わう体に変えて上げましょう。
見た目をイボ蛙のようにするなら言葉もそれにふさわしい方がいいわね。語尾に「ゲコゲコ」つけなければ話せないようにしよう。
「麻痺」
麻痺の魔法をかけて三人に近づく。
急に体が動かなくなり、三人は目を白黒させていた。
「ごきげんよう、お父様、お義母様、ラウラ」
三人の目が驚がくに見開かれる。
「お父様に無理やり愛のない結婚をさせられたので、私今まで塔に閉じ込められておりましたの」
父の手を掴み、ペニスを消し、髪の毛を消し、全身を緑色に変え、イボだらけにしていく。
蛙の化け物の出来上がりだ。
今は麻痺の魔法が聞いているので痛みはないが、麻痺が解けたら痛みで悶絶し床を転がり回るだろう。
父の体の変化を見てお義母さんと妹がガタガタと震わせている。体が麻痺していても震えは抑えられないらしい。新発見だ。
「お義母様たちが虐めるから私不良娘になってしまいましたわ」
母の手に触れ胸をぺったんこにし、髪の毛を抜き、体の色を紫に変え、全身にイボを作っていく。
紫蛙の出来上がり。
「ラウラ脅えないで、次はあなたの番よ。心配しないであなたの好きなピンク色に染めて上げるから」
絶望にうちひしがれ妹の手に触れる。胸をぺったんこにし、髪の毛を一本残らずなくし、全身をピンクに染め、体中にイボを作っていく。
桃色蛙の完成。
「三人は仲良しだから同じ姿になれて嬉しいでしょう?」
にっこりと笑いかけると、三人は死んだ目をしていた。
「あらおラウラのイヤリングとネックレスと指輪は、私のものね。返して貰うわ」
ラウラからアクセサリーを取り上げ、ポケットにしまう。
お母様の形見のネックレス以外はお金に変え、逃走資金にしよう。思わぬところで臨時収入を得られた。
「さようなら、お父様、お義母さん、ラウラ。心配しなくても麻痺はあと三十分ほどで溶けますわ」
私の言葉を聞き三人の表情が僅かに緩む。
「もっとも麻痺が解けたあとは地獄のような痛みが襲うでしょうけど」
「「「…………っっ!!」」」
三人の声にならない悲鳴が聞こえた気がした。
ふふふと笑い、私は部屋をあとにした。
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